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【ブサイクの昼寝姿は見るに耐えない】「平安随一の才女」清少納言の腹黒&毒舌コメントに絶句、でも思わずうなずく

「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際…」のフレーズがあまりにも有名な枕草子。国語や古典の授業で習った記憶のある人も多いのではないでしょうか。

瑞々しい感性で移ろいゆく季節の美しさや日常の出来事を綴った枕草子は、日本最古のエッセイ集として知られています。1000年以上の歳月を経ても尚、作者清少納言のエスプリの効いた「をかし」の世界は、私たちを魅了して止みません。

1000年前の宮廷生活の息吹が伝わるかのような、清少納言の日常がリアルに生き生きと描かれた平安版「つぶやき」エッセー。心の琴線に触れる美しい才知あふれる表現で綴られた本作ですが、実は身も蓋もない毒舌コメントや人の悪口が赤裸々に暴露された作品でもあるのです。

同時代に活躍しライバルでもあった「源氏物語」の作者・紫式部が日記で「自分は他人よりも特別優れていると思い込んで、得意顔で偉そうに振る舞っている痛い人」と清少納言をこき下ろしているように、多少、才気走るゆえに性格に難があったのでは?とついつい思ってしまう、枕草子・毒舌エピソードを紹介します。あなたの清少納言を見る目が変わりかねない、ちょっとドン引きしてしまう罵詈雑言・悪口のオンパレードです。

【ブサイクの昼寝姿は見るに耐えない】

原文:「見苦しきもの。(中略)夏、昼寝して起きたるは、よき人こそ、いますこしをかしかなれ。えせ容貌は、つやめき、寝腫れて、ようせずば、頬ゆがみもしぬべし。かたみにうち見かはしたらむほどの、生けるかひなさや」

訳:「見苦しいもの。夏に昼寝から目覚めた姿は、高貴な人ならそれなりに風情があるけれど、ブサイクだと顔は脂ぎってテカテカだし、寝起きでむくんでいて、まるで顔そのものが歪んでいるかのようだ。ブサイク同士、一緒に昼寝をして顔を見合わせてしまった時なんか、生きている意味もないんじゃないの」

外見に対する手厳しい描写。身も蓋もありません。「寝起きのブサイクな顔を晒すなんて、生きる価値なし!」な厳しすぎる清少納言の美意識の高さが伺えます。

実は清少納言自身、自分の容姿にコンプレックスがあり、その裏返しから美醜に厳しく、外見が劣る人に対して厳しく批評していたようです。どうやら中宮定子に仕えた彼女にとって、美の基準には身分の上下も関係があったようです。そのあたり、ちょっと調子が良すぎる気がしますが…

それにしても1000年以上前に書かれたとは思えないほど、昼寝から起きた寝起きの描写が実にリアルに伝わってくる文章ですね、現代に通じるものがあります。

【何のとりえもないもの: 外見がブサイクな上に、性格も悪い人】

原文:「取りどころなきもの。容貌憎さげに、心悪しき人」

訳:「何のとりえのないもの 。見た目がブサイクで、その上性格まで悪い人」

なになに、ブサイクな上に性格まで悪い…?まさか、彼女自身に特大ブーメラン!?とツッコミそうになりますが、どうやら本人はそんなつもりではないようです。

ブサイクで性格の悪い人を容赦無く切り捨てた毒舌コメントですが、本人もさすがに直球すぎたと思ったのか、「人に見せるつもりはなかったから、ありのままに書いちゃった、テヘっ」と作中で言い訳していますが…当時すでに宮仕しており、中宮定子から高価な料紙を下賜されたことが枕草子執筆の動機と言われています。定子に作品タイトルを聞かれ即興で「枕草子」と名付けているエピソードからも、人に見せること前提で書かれていることは明白です。

【爆走する毒舌…赤ちゃんの容姿にまで容赦なし!】

原文:「かたはらいたきもの。憎げなる乳子を、おのが心ちの愛しきままに、うつくしみ、かなしがり、これが声のままに、いひたる言など語りたる」

訳:「見ていられないもの。ブサイクな赤ちゃんを親バカフィルターで盲目的に可愛がって、その赤ちゃんの声真似をしてあやしたことを人に話している母親」

まるで世の多くの母親を敵に回すかのような毒舌。さすがは清少納言、赤ちゃんといえど手加減しません。赤ちゃんを可愛がる母親、どちらかといえば微笑ましい光景ですが、赤ちゃんの外見次第では清少納言にはイラッとする光景のようです。なんという外見至上主義でしょうか。いやはや、呆れます。

実際に職場や近所付き合いなどで、ひたすら我が子の話を延々と語る同僚や友人知人に対して、ついつい辟易してしまう…なんて人ももちろんいることでしょう。しかし、現代のSNSで有名人がこんな毒舌投稿をしたら炎上必至です。

【文中だけでなく、日常でも悪口】

原文:「はしたなきもの。。聞きゐたりけるを知らで、人のうへ言ひたる。おのづから、人のうへなどうちいひそしりたるに、幼き子どもの聞き取りて、その人のあるに、いひ出でたる

訳:「気まずいこと。(張本人が)聞いていることを知らず、その人の噂をしている様子。人の噂話や悪口を言っているのを小さな子どもが聞いていて、それを本人がいる時に話してしまうこと」

噂話や悪口を無垢な子供が本人にそのまま伝達…確かに悪口であれば尚更気まずい展開です。清少納言が文章だけでなく、口頭でも日常的に人の噂や悪口を言っていることが前提の文章です。

【下衆どもは見苦しいから騒ぐな!】

原文:「はしたなきもの。旅立ちたる所にて、下衆どものざれゐたる」

訳:「見ていていたたまれないもの、宿泊滞在先で、身分の低い者たちががふざけている様子」

旅先でウキウキしてはしゃぎたくなる気持ちに水を差すお言葉。確かにうるさく騒ぐのは考えものですが、非日常の体験にテンションが上がる気持ちは分かります。しかし、身分の低い者(=清少納言基準ではブサイクに認定)が羽目を外したり調子に乗ることは、清少納言の美意識が許せないようです。

楽しい旅行先ではしゃぐのに身分は関係ありません。ウキウキくらいさせてやれよ…と突っ込みたくなります。

【紫式部とのバトル】

「紫式部日記」で散々な言われようの清少納言ですが、それには理由がありました。紫式部が一方的に清少納言を嫌ったのではなく、まず先制攻撃?を仕掛けたのは他でもない清少納言だったのです。原因は紫式部の亡き夫に対する悪口。紫式部の夫・衛門佐宣孝は彼女よりもかなり年上で親子ほど年が離れてはいたものの、教養が深く、夫婦仲は良好だったようです。しかし、清少納言は紫式部の亡き夫にまで、手加減することなく悪口攻撃。

原文:「衛門佐宣孝といひたる人は、紫のいと濃き指貫・白き襖・山吹のいみじうおどろおどろしきなど着て、隆光が主殿助なるには、青色の襖・紅の衣・摺りもどろかしたる水干といふ袴着せて、うちつづき詣でたりけるを、還る人も、いま詣づるも、めづらしうあやしきことに、『すべて昔よりこの山に、かかる姿の人見えざりつ』と、あさましがりしを(中略)これは、あはれなることにはあらねど、御嶽のついでなり」

訳:「衛門佐宣孝は紫と白と山吹色、その息子は青と紅とまだら模様のど派手な服を親子揃って着て参拝していた。誰もが珍しがって『こんな奇妙な格好で参詣する人なんて、この山では見たことがない』と驚き呆れるほどだった。この話は全然しみじみと感じられる話とは関係ないけど、ついでに書いておこう」

テーマのしみじみした話とは全然関係のない、故人の悪口をついでに書く(しかもついでにしては、記述が細かい)根性の悪さ。

当然、亡き夫に対する暴言に紫式部は激怒。よって、紫式部日記で清少納言への悪口応酬戦となったわけです。当時、すでに「源氏物語」が宮中で評判となり、名声を得ていた紫式部。清少納言にとって、目の上のタンコブ的な存在だったのかもしれませんが、紫式部本人ではなく敢えて彼女の亡き夫の悪口を言うあたり、清少納言の性格の悪さが滲み出ているかのようです。

「風流ぶってつまらない物事にも、しみじみ感動してみせたりして、やたらと周囲を嗅ぎ回っている。そんな不誠実な人間が行き着く先は、どうせろくなもんじゃない」と紫式部にも散々な言われようです。平安の才女同士の日記に残ったバトル、なかなか興味深いものがありますね…

清少納言の毒舌&腹黒エピソードにばかり焦点を当てて紹介しましたが、1000年の時を超えて強烈な印象を与える悪口を赤裸々に書き残したとは言えど、彼女が歴史に残る才能豊かな人物であったことは否定できません。

何気ない日常の風景を鋭く豊かな感性でとらえ、美しい芸術文学へと昇華させた天才であると同時に、悪口大好きなともすれば下衆な人間味溢れた側面があってこそ、彼女が残した枕草子は私たちの心にリアルに響くのかもしれません。

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