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考えさせられる

ジンバブエで忽然と姿を消したプロハンターの悲劇

注)この記事にはショッキングな画像が含まれます。ご注意ください。

娯楽のために大型野生動物を狩る「トロフィー・ハンティング」、日本ではそれほど馴染みがありませんが、欧米を中心に、愛好する人が多く存在しています。もちろん、娯楽で命を狩るという行為は、倫理的に多くの人から批判されていますが、「合法」だということもあり、愛好家は増えているのが現状。しかし、南アフリカで起きた事件は、それがハンター自身にとっても命がけで危険な行為であることを示しています。

スコット・ヴァン・ジルはプロのハンターで、外国人富裕層向けにジンバブエでのハンティングツアーを企画する会社の経営者でもあります。顧客は、シマウマやゾウ、その他の野生動物の「トロフィー(戦利品)」が約束されている各種プログラムからツアーを選び、スコットのサポートのもとで、自らの手で動物たちを仕留めます。

この「ハンティングツアー」と呼ばれるアフリカでの「狩猟体験」は、プログラムによって7〜10日で1回で少なくとも9,000米ドル(約100万円相当)と高額。トロフィー・ハンティングはお金持ちであることを誇示できる遊びだということが分かります。スコットの会社のホームページには、仕留めたアンテロープやジャガー、ライオン、ワニなどを誇らしげに掲げたスコットの記念写真が数多く掲載されています。

しかしスコットのハンティングツアーはもう行われることはありません。彼は猟犬数頭とトラッカー(獲物追跡人)を連れてジンバブエで個人的なハンティングに出かけ、その後、跡形もなく姿を消したのです。

その日、スコットとトラッカーは現地にキャンプを張ります。そこからトラックに乗り込み、それぞれ別々の方向から草むらに入っていきました。その後、スコットに同行した犬だけがキャンプに戻ってきました。トラックには彼の持ち物がすべて残されたままです。

彼の失踪後、地域全体で捜索が行われました。ヘリコプターまで出動し、とうとうリンポポ川の近くで彼の痕跡が見つかります。スコットのバックパックが、ワニの生息する川岸で発見されたのです。

その後、予感は確信へと変わりました。警察がリンポポ川の川岸の2匹のナイルワニを射殺したところ、その体内から人骨が発見されたのです。DNA鑑定の結果、スコットの遺体であることが確認されました。

この悲劇的な事件が物語るように、狩猟は罪のない野生動物を傷つける残虐な行為であるだけでなく、人間にとっても危険な趣味です。ハイパワーライフルなど最新装備を使う現代のプロハンターでさえ狩られる側になる可能性があるのですから。それでも、狩猟愛好家が支払う高額な狩猟料は地元の経済に欠かせないものになっているという背景もあり、トロフィー・ハンティングをめぐる議論は平行線を辿っています。

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プレビュー画像: ©Twitter/@SABreakingNews