17ヵ月で500キロを移動 世界中が注目したアジアゾウの群れの放浪の旅

2020年3月、16頭のアジアゾウが、中国南部のシーサンパンナ(西双版納)自然保護区を離れ、中国南西部を500キロ以上かけて歩く謎の放浪の旅に出ました。

このゾウの群れはその後1年5ヶ月もの期間、人間の生活圏を旅することになります。しかし一体どうしてこんな旅をすることになったのでしょう?

ゾウの群れは賑やかな都市や孤立した村を横切り、そのたびに事件を引き起こしてきました。お腹を減らしたゾウたちは、農家の畑を荒らし、推定1億円以上の農作物の被害が出ています。人的被害は出ていませんが、都会を歩くゾウの群れのために道路が封鎖され、多くの住民が避難しました。

被害を受けた農家や住民の怒りが増す一方で、ゾウのニュースが出るたびに、ネット上にはゾウの群れを応援するファンが増えていきました。

「中国の放浪ゾウ」として世界中から大きな注目を集めたこの群れ。何千人もの人々がネットでゾウの一挙手一投足を追いかけ、長い旅の途中で赤ちゃんゾウが生まれたときには歓喜の声をあげました。

世界中からの注目を受け、中国政府は手厚いゾウ保護対策を実施します。ゾウと人が衝突しないように何千人もの兵士や作業員を送り込み、食料を用意し、柵を張り巡らせ、村や町を通過する安全なルートにゾウを誘導しました。また、これ以上畑を荒らさないように、17ヶ月間で180トンの飼料を与えました。さらに、8人のチームが24時間体制でゾウの群れを監視し、ゾウの安全を確保してきました。

なぜゾウたちが突然、保護区を離れ、人間界への困難な旅に出たのかは謎のままです。しかし、野生動物の専門家は、生息地が縮小していることと関係があると確信しています。

アジアゾウは絶滅の危機に瀕しています。中国ではわずか300頭ほどが生息するだけです。ゾウの森は次々に切り開かれ、お茶やゴムなどゾウが食べないような作物の耕作地に姿を変えているのです。シーサンパンナは中国のゾウの唯一の保護区ですが、ゾウが食糧を求めて自由に歩き回るには狭すぎます。

生息地の消失を受け、ゾウは安心して暮らすことのできる生息地を求めて旅に出たと専門家は言います。

500キロもの長旅を終えたゾウの群れは、北上をやめました。中国全土がゾウが今後どこへ向かうのか固唾を飲んで見守っていましたが、なんとゾウは自ら帰路につき、現在、シーサンパンナ自然保護区に戻ってきています。しかし、専門家はゾウの群れが今後も人間の生活圏に入ってくる可能性は高いと考えています。

今後も人とゾウが共存するためには、国立公園を新設するなどして、新たな生息地を確保するのが最善の策だと専門家は考えています。人とゾウの共存のため、長期的な対策が行われることが期待されています。

プレビュー画像: ©Facebook/Soumya Darbaru ©Facebook/Philippine Star

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