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もののけ姫公開時 映画を短くするようアメリカ側から恫喝された宮崎駿 しかし彼が送り返したものに言葉を失った

もののけ姫と言えば、スタジオジブリが制作し、1997年に公開されたアニメーション映画。興行収入は実に193億円を記録し、当時の日本の記録を塗り替えたことを記憶している人もいるでしょう。

日本で大ヒットとなった宮崎駿監督の代表作ですが、同時に海外での評価も高く、日本のアニメいわゆるジャパニメーションが世界で高く評価されるきっかけを作った作品でもあります。

このように海外で高い評価を受ける本作ですが、アメリカで上映される際、宮崎駿とアメリカサイドの間でひともんちゃくがあったことをご存知ですか?

アメリカでの配給を担当したのは、当時ディズニーの子会社であったミラマックスでした。ミラマックスと言えば、映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインによって設立された会社。

名前を聞いてピンと来た人もいるかもしれません。そう、ワインスタインと言えば数多くの女優などに行っていた性的暴力、セクハラなどが明るみに出て、今や完全に失墜した人物。超・極悪のプロデューサーだったのです!

超極悪だったとは言え、業界の権力者として知られていたワインスタイン。映画プロデュースの腕前も良く、当時、彼に逆える人物などそうはいませんでした。

そんな彼は、シザーハンズ(ハサミの手✂️)の通り名でも恐れられていました。一体どうしてこのような通り名がついたのでしょうか?それは、プロデューサーの権限を笠に着て、自分の望むように作品を改変し、上演時間を短くしてしまうことで知られていたからです。チョキチョキとフィルム?をカットしてしまう、そんなイメージからついた通り名なのでしょう。

確かに上映時間を短くすることで、映画館での上映における回転率が高まり、より多くの収益が見込めると言うことは否めない事実。プロデューサーである以上、そういった収益面を考慮するのは当然と言えば当然なのですが…

全体のバランスを熟考しながら作品を作り上げている映画監督からしたら、このようなお金儲け主義的な考えで作品を勝手に改変させられることは屈辱以外の何物でもないでしょう。作品の芸術性が台無しになってしまいます。

さて、もののけ姫を担当したワインスタイン、映画のプレミアの席で、ジブリの海外担当者に、「映画を133分から90分にする」と突然伝えてきたそうです。「作品には手を加えない」と約束していたにもかかわらず、です。「宮崎はきっと同意しないでしょう」と海外担当者が伝えると、ワインスタインは激昂。

「お前を2度とこの業界で働けなくしてやる」と脅しをかけてきたと言うのです!いつもこのような暴力的なやり方で、思うがままにしてきたのかもしれません。

その話を聞いた宮崎駿が取った行為が、アニメファンの間ではもはや伝説として語り継がれています。

宮崎駿は、「NO CUT(カットなし)」と書かれたメモを添えた日本刀をワインスタインに送りつけたのです!「切るということの重み、お前には分かっているんだろうな…?」そんなことを言わんばかりのこの行為にさすがのワインスタインもビビったのか、結局映画は133分のノーカットでアメリカで上映されることに。

そのように上映時間が長いままリリースされたため、残念ながら、もののけ姫はアメリカではあまり多くの収益を上げることは出来ませんでした。しかしながら、下手に第三者に手が加えられることがなかったため、芸術面は非常に高く評価され、その後のジャパニメーションがアメリカなどの海外に進出していく門戸を開くことに成功したのです。

しかし宮崎駿は、なぜそのような極端な行為に出たのでしょうか?それは「風の谷のナウシカ」の反省があったからだと言われています。ナウシカがもののけ姫よりも前にアメリカで上映された際、作品はもはや原型を留めないほど大幅に改変されていたと言います。

映画はオリジナルよりも22分も短くされ、タイトルは「風の戦士たち」と変更され、主人公であるはずのナウシカは広告ではむしろ脇に追いやられていました。「こういうのを見るのは男の子だろ。男の子たちは、女の主人公が好きじゃないから」そんな配給する側とプロモートする側の浅はかな戦略が見て取れます。

そんな光景を悲しく見ていたに違いない宮崎駿、同じ過ちを犯してはならないと強く心に誓っていたのかもしれません。

このような経緯で自分の作品を守り抜いた宮崎駿。話が若干盛られている可能性はありますが、ハリウッド的なお金儲け主義に断固抵抗する宮崎駿の頑固さが、日本の作品が海外で評価されるきっかけを作ってくれたということは間違いない事実でしょう。しかしまるでこの芸術性vs商業主義のバトルが、もののけ姫の劇中のテーマである自然vs産業主義の構図と少し似ているようで、面白いですね。もののけ姫が私たちの心を打つのは、それが宮崎駿の人生そのものだからなのかもしれませんね。

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