ちえとくをフォローする

人気の記事

家族を持たずに生きてきた60代同性愛者の男性は悩みを新聞投書で告白した すると返ってきた作家の言葉に心のわだかまりが解けていった

LGBTという言葉は、私たちの生活に徐々に浸透してきたと言えるでしょう。

この言葉は、様々な性的マイノリティのうち、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字を取ったものです。

同性愛をテーマにした映画やドラマも増えており、また、特に海外の芸能人などでは、LGBTをオープンにしているケースも多く、なんら恥じるようなことではないという風潮が広まりつつあります。

とは言え、ひと昔前までLGBTであることをカミングアウトする人たちは少数だったと言えるでしょう。

今回紹介するのも、そんな風にして人生を60年以上生きてきた、ある男性からの新聞投書。

男性は、その60年余の人生を、同性愛者としてのアイデンティティを隠して生きてきました。十分に良い仕事に就くことができ、定年退職をした現在は年金収入とこれまでの蓄えで、悠々自適に暮らす予定だと言います。

けれども、やはり心のどこかでは寂しさも抱えていました。

男性は一回も結婚したことがありません。若い頃に、何度か縁談を持ちかけられたことはありますが、自分の性癖をわきまえ、固辞してきたそうです(ご本人の言葉)。

けれどやはりこの年になり、寄り添える人がいないで人生を終えるであろうことに、「自分の人生とは何だったんだろう」と考え込んでしまうこともある、と人生相談を持ちかけたのです。

この悩みに対して、ある作家が出した答えが、とても深いと大きな話題を呼んでいます。

実際にその画像をご覧ください。

回答したのは、作家のいしいしんじさんでした。

「60年の航海をほぼひとりで乗り越えてきた人間の、知恵、思慮深さ、覚悟を感じる」

いしいさんはまず、男性の生きてきたその道のりにリスペクトと賞賛を送りました。

そしておそらく、この男性がもっとも言ってほしかったであろう言葉を紡いだのです。

「わかっているはずだ。あなたには、それ以外の生きかたはできなかった。まわりに流されずに信念を貫いた。その結果今の満ち足りたあなたがいる。それは誇るべきことだ」

…いしいさんはそう強く言い切りました。

「名ばかりの家族より、素直に『同性愛者です』と告げるあなたの方がよほど『愛』に恵まれている」

「今度はその胸にたたえた『愛』を、同性異性問わず、まわりに分け与える暮らしを心がけてみてはどうか。あなたの知恵、配慮、才覚により、生まれ変わる思いで生に目覚める人は、きっと少なくないはずだ」

そしていしいさんは、こんな言葉で回答を締めくくったのです。

「分かち合うと、『愛』は減らない。かえって、倍々に増えてゆく。それがつまり、『愛する』喜びではないだろうか」…

この答え、男性が心の中に抱えた迷いを断ち切るには十分だったのではないでしょうか?

自分の生きてきた人生が、他の人に喜びを与え、導きを与えられるようなものになり得る…そういしいさんが断言してくれたことで、どれほど男性の心は救われたことでしょう。

Twitterの反応

この回答は大きな話題を呼び、Twitter上で拡散されてゆきました。

すると、意外なことが…

なんと言うことでしょう!

話題になっているということが、お悩み相談に答えたいしいさんご本人の耳にも届いたようで、いしいさん自身がコメントを返してきたのです。

いしいさんは、「僕は、この相談者の方がこのお手紙を書き、投稿された、その様が目に浮かんできてしょうがなく、その、目の前に立っているその方に話しかけるつもりで書きました」とコメントしています。

いかがでしたか?

男性の持つ覚悟や知性を鋭く見抜き、優しい言葉で、今までの男性の人生に意味を見出したいしいさんのアドバイスは、さすが作家!と言いたくなるような説得力に満ち溢れています。

また、一昔前は周囲のプレッシャーや親族に脇を固められて結婚の選択を選ばざるを得ない人も多かったであろう、そんな中でも、自分の道を選び取った男性の勇気は賞賛されるべきものです。

しかしこれからは世の中が、そんな選択を恥じる必要を感じないような、よりいっそう寛容なものに変化していくことを願ってやみません。

いしいしんじさんが書かれた作品が気になる方は、ツイッターユーザーの方が数冊オススメしているので、ぜひ手にとって読んでみてはいかがでしょうか?

プレビュー画像:  / © Twitter/ ot_john

家族を持たずに生きてきた60代同性愛者の男性は悩みを新聞投書で告白した すると返ってきた作家の言葉に心のわだかまりが解けていった