ゴリラはそっと、幼い子供をドアの前に横たえた。ゴリラが立ち上がった瞬間、心打つ光景が繰り広げられた。

1996年10月16日、家族連れで賑わっていたシカゴのブルックフィールド動物園の和やかな雰囲気が一転、悪夢のような状況に来園客の間に緊迫が走りました。 それは両親が3歳の子供から一瞬目を離した隙の出来事でした。

当時、一家は柵の中のゴリラを見物していました。

幼い男の子は柵を乗り越え、約5メートル下の7頭のゴリラの飼育敷地内に落下してしまったのです。落下による怪我は軽傷で済んだものの、現場に居合わせた来園客は予期せぬ緊急事態に戦慄し、助けを求め叫びました。中には幼い子供の危機的状況を見るに耐えず、目を背ける来園客もいるほどでした。当初、男の子は落下の衝撃によって意識を失い、飼育敷地内のコンクリートの上に倒れていました。するとそこに、毛深い胸に逞しい腕の、ゴリラが姿を現したのです。

男の子に近づいたのは希少なニシローランドゴリラの雌、ビンティ・ジュアでした。ビンティは男の子のもとにまっすぐ向かうと、意識を失ったままの男の子を腕の中にそっと抱きかかえました。ビンティが男の子を優しく抱いて他のゴリラから守ろうとする様子を、来園客は信じられない面持ちで固唾を飲んで見守りました。ビンティはその後、男の子を係員用のドアの前まで注意深く運び、駆けつけた係員の足元に男の子をそっと寝かせたのです。

この予期せぬ素晴らしい光景は来園者の胸を打ちました。「ゴリラは男の子を抱き上げて、 優しく抱えると歩き出しました」動物園の広報担当、ソンドラ・カッツェンは語っています。

係員に保護された当時、男の子は意識を取り戻して泣いていました。 ショック状態にありましたが、運良く軽傷で搬送先の病院からすぐに退院することができました。

またビンティは幼い頃に母ゴリラが育児を放棄したため、係員によって育てられ、その後に他の雌ゴリラに面倒を見てもらいながら、動物園のゴリラ社会に適応する術を学びました。係員に育てられたビンティの人間に対する親しみの感情が男の子を救ったのかもしれません。

心を打つ救出劇の様子は当時大きなニュースとして取り上げられ、わずか数日のうちに世界中から取材班がビンティをカメラに収めようとしてブルックフィールド動物園に押し寄せました。心優しいビンティの行動に感激した人々から動物園に募金が寄せられ、ビンティを引き取りたいとの申し出も殺到しました。シカゴの食品店経営者からは大量のバナナが寄付されました。

ビンティの物語は21年前の出来事ですが、2016年5月にシンシナティ動物園で起きた同様の事故から思い起こす人々もいるようです。シンシナティ動物園に家族と来園した4歳の男の子が家族の見ていない隙に柵の下を這い抜けて4メートル下のゴリラの飼育敷地内の堀の中に落下した記憶に新しい事件です。残念ながら、ビンティの一件とは対照的に悲しい結末に終わりました。子供の命を危険に晒されたとして、ゴリラは射殺されてしまったのです。事件についての記事はこちらからご覧いただけます。

檻の中にいたのがビンティでなければ、21年前のこの事件も違う結末を迎えていたかもしれません。

ビンティの心を打つ救出劇はこちらから視聴できます。

人間と動物の歴史の中ではほんの一瞬の出来事ではありますが、21年の年月を経た現在も、未だに世界中の人々の心に残る物語です。ありがとう、ビンティ!

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