災害救助犬として活躍する殺処分予定だった犬

日本に暮らす以上、水害や地震、津波などの自然災害と無縁でいられる人はいません。被災した人たちにとっては、現地に駆けつけ救助に当たる人々の姿ほど勇気付けられるものはないでしょう。 そんな災害大国日本で日夜救助活動の訓練を行い、いち早く救助活動に当たるのは実は人間だけではありません。「災害救助犬」と呼ばれるレスキュー訓練を積んだ犬たちも頼れる救急隊員の一員です。

こちらの写真の、2016年4月14日に発生した熊本地震の被災地に向かう「夢之丞(ゆめのすけ)」はそんな災害救助犬の一匹。災害救助犬の仕事は、瓦礫や土砂の中から一人でも 多くの命を見つけ出すこと。熊本地震の時は、発生から数時間後の14日深夜に広島を出発し、翌朝8時には現場で捜索活動を開始しました。

実はこの災害現場などで勇敢に人命救助に携わる夢之丞は、子犬のとき、人間に殺されかけたところを保護された犬です。

Youtube/空飛ぶ捜索医療団ARROWS

紛争や災害の人道支援をしているNGO「ピースウィンズ・ジャパン」のスタッフが夢之丞に出会ったのは2010年11月、広島県にある動物愛護センターでした。殺処分用ケージの中で、生後3〜4ヶ月の子犬が小さくうずくまって震えていたのです。この子犬はガス室が満杯になったため、殺処分を翌日に延期されたところでした。

子犬は恐怖から表情が無く、抱え上げると殺処分の順番と思ったのか体を震わせて失禁しました。

YouTube/空飛ぶ捜索医療団ARROWS

ピースウィンズ・ジャパンはこの子犬を含めた数匹を譲り受けます。目的は災害救助犬の育成でした。

通称「ドリームボックス(殺処分設備)」から生還したこの犬は、夢と希望を託すという願いから、「夢之丞(ゆめのすけ)」と名付けられました。最初は人を怖がって心を閉ざし、ケージから出てこれないほどでした。人間に対する不信感を和らげるのに、まる1年かかったそうです。

Youtube/空飛ぶ捜索医療団ARROWS

救助犬向きではない臆病な性格と思われていたものの、およそ4年の訓育を乗り越えて夢之丞は有能な救助犬へと成長していきした。

そして2014年、ついに初めての出動を迎えます。

出動先は、同年8月に発生した広島土砂災害の現場でした。多数の死者と行方不明者が出た安佐南区八木地区で泥にまみれての懸命な捜索活動が続けられます。そして20日、夢之丞が1人の男性の遺体を発見しました。木に押し潰された民家に駆け寄って立ち止まったまま操作者をじっと見つめる様子は、訓練通りの動きだったそうです。

2015年4月、夢之丞はこの現場での活躍が評価され、人命の救助等に貢献した動物に贈られる「第7回日本動物大賞 功労動物賞」を受賞しています。

夢之丞は活躍の場を広げ、2014年末に台風で甚大な被害を被ったフィリピン、2015年4月にはネパール地震の被災地にも出動しています。災害救助犬は、怪我をしても体が汚れても、決してひるむことなく、限界まで犠牲者を探し続けるように訓練されています。夢之丞はずっと、人の命を救うために働いてくれているのです。

2016年の熊本大地震発生から11時間後に被災地に到着した夢之丞は、捜索隊が入り込めない壊れた家屋の中まで入り、捜索活動に参加しました。

一度は人間に捨てられ、殺処分直前だった犬による人命救助。人間の為に一生懸命尽くす、健気で献身的な夢之丞の姿は多くの人々の心を動かしてきました。

そもそもピースウィンズ・ジャパンが捨て犬を社会の役に立たせることを考えたのは、殺処分をなくすためだそうです。夢之丞が訓練を開始した当時、日本では年間12万8000頭もの犬や猫が殺処分されていましたが、2016年の犬猫殺処分数は約5万5千匹に、2017年には約4万3千匹まで減少しています。同団体と夢之丞のような犬たちの活動が実を結んだのかもしれません。

2020年8月に10歳になった夢之丞は、今は元気にドッグランを走り回り、時々訓練にも参加して後進の指導にあたっているそうです。

身勝手な人間の都合で捨てられたのにも関わらず、人の命を救うために働く救助犬たちの存在に、動物達の命の重さを改めて考えさせられます。ピースウィンズ・ジャパンでは 、災害救助犬の活躍をFacebookページで紹介するとともに、殺処分をゼロを目的とした救助犬育成のため寄付を随時募っています。

夢之丞くん、そして後に続く災害救助犬のみんな、いつもありがとう。ご褒美を一杯もらってくださいね。

こちらの動画からも夢之丞の物語をご覧いただけます。

プレビュー画像:©Youtube/空飛ぶ捜索医療団ARROWS

出典

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