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ジーンとくる話

博士が犬の頭を切り落とし、ハンマーとともに現れた。その次に起こることが信じがたい。

注意:画像および動画は、刺激的なものが含まれます。

医学の進歩により、現在では臓器移植は難しいながらも頻繁に実施されるようになり、世界中で末期臓器不全に苦しむ多くの患者が救済されています。しかしその歴史はまだ浅く、ヒトからヒトにおける世界初の心臓移植は1967年12月、南アフリカのクリスチャン・バーナード医師によるが行ったものが最初です。移植の考えが出てきたのは20世紀初頭、フランスの外科医アレクシ・カレルが1905年に行った鶏や動物などの血管縫合および血管と臓器の移植に関する実験と研究でノーベル賞を受賞しています。その後、臓器移植が定着した医療として確立されるまでには、多くの実験と臨床的な試みが実施されてきました。その過程で多くの動物たちが犠牲になったことは言うまでもありません。

旧ソ連のウラジミール・デミコフ医師は、臓器移植の先駆者の一人で、1960年には移植学において最初の小論文となった「重要臓器の実験的移植」を発表し、現在の移植学につながる重要な業績を残した研究者です。しかし彼の名を世に知らしめたのは、医療従事者としての倫理的妥当性を問う、1930年代から50年代にかけて行った犬を使った実験の数々でした。

第二次世界大戦中、デミコフ医師は軍医として負傷兵の手術を頻繁に行う中で、臓器移植の可能性に気づき始めます。戦後、彼はソ連によって設立された極秘の医療施設で臓器移植と生命延長のための実験に従事します。実験動物に彼が選んだのは、犬でした。

デミコフ医師率いる研究チームは、犬の頭や上半身を別の犬に接合する奇怪な実験を行い、当時その奇怪さが大きな注目を浴びました。

実験の目的は、大きな犬の心臓が二匹目の頭部及び前足に十分な量の酸素が送ることができるかを見ることでした。

その後15年間にわたって約22頭の「双頭の犬」を作り上げ、どの犬も短命に終わったとされています。

さらにデミコフ医師は、「生首犬」の実験を試みます。犬の身体から取り出した肺と心臓を人工装置を経由させてバイパスし、犬を首だけで生存させるというものです。実験では、ライトを目に当てたり頭の側でハンマーを叩いたりすることで、脳が生きていることが確認されました。記録映像には、犬の首が光や音、臭いに対して反応する姿が収められています。犬の首はいずれも、胴体から切り離されてから数時間後に死亡しています。

Youtube/happysmellyfish

この映像(下)は大きな反響を呼び、その真贋を巡ってさまざまな現在でも意見があります。ソ連が米国に技術力を誇示するために作ったプロパガンダビデオであり、実際にこのような実験が行われていたかについて、その真相は未だ定かではありません。しかしミコフ医師の業績が少なからず医師たちに影響を与えたことは事実で、人体で初の心臓移植に成功したクリスチャン・バーナード医師もデミコフ医師をその師と仰ぎ、動物実験による移植実験を重ねた研究者の一人です。

【閲覧注意】こちらは人工心肺に繋がれた「生首犬」の映像です(英語音声のみ)。

こうした奇怪な動物実験が注目された半面、その後多くの命を救うことになる臓器移植のさきがけとしてのデミコフ医師はあまり知られていません。ソ連の崩壊後、彼は1998年に貧困の中でひっそりと亡くなっています。動物実験全面廃止の思想が広く訴えられている現在では、彼が行っていた実験は倫理的にも考えられない実験です。しかしこれらの犬の犠牲の恩恵を受けなければ心臓移植の技術が確立されなかったかもしれないと考えると、複雑な心境です。