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認知症の父のトイレを手伝っていたとき、父がふと言葉を発した。その言葉を聞いて、娘は涙が止まらなくなった。

「つたえたい、心の手紙」は、亡くなってしまった大切な人に生前伝えられなかった想いを綴った手紙を募集する、「くらしの友」が2008年より毎年実施している取り組みです。今回紹介するのは、入賞した一通をお笑い芸人・鉄拳さんがパラパラ漫画で再現した動画です。

『お父さんは愛の人』は認知症になり、闘病の末亡くなった父に宛てて書かれた娘からの手紙です。認知症の父がある日ふと発した言葉、それは父の昔からの「口癖」でした。

「鉄拳×つたえたい、心の手紙」 特設サイトで公開されている、動画の元となった手紙がこちらです。

お父さんは愛でできている。小さい頃から、そう思いよったよ。

私が小学校の頃、尿検査でおしっこを入れるしょうゆ入れみたいなのの赤いふたが無いって大騒ぎしたことがあったやん。私がわあわあ泣きよったら、お父さん、「淳子ちゃん、泣かんでよか」ってどっかからコルクを持ってきて、削り削り入れ物に合わせてふたを作ってくれたもんね。なんか妙な形やったけど、おしっこがこぼれんようなちゃんとしたふたやった。次の日一人だけコルクのふたで検尿を出したけど、恥ずかしいやら自慢やら。優しかったあ。お父さんは。

中学の技術の課題、防犯ブザー覚えとう? 不器用な私は作れるはずもなく、結局お父さんが徹夜で作ってくれたね。寝ぼけた私は、ブーブー音が鳴る度に、「うるさい!」って文句言いよったらしいね。朝になって防犯ブザーが出来上がっとうのを見て、ごめんなさいって気持ちでいっぱいやったとよ。でも、今思えば、お父さんもあんまり器用な方じゃなかったね。評価2やった。

私が離婚を決めたときも、何も言わず何事もなかったように、全て受け入れてくれたね。親不孝な娘やんね、私。父親のいない子を産む決心をした時もそう。穏やかに、いつもと同じ笑顔で私たちを守ってくれた。それなのに、お父さんの優しさが辛くて、ちゃんとありがとうって言えんかった。

だから、お父さんの認知症が進んで、夜中にトイレに連れて行ったりお尻を拭いてあげたりするようになった時、涙が出るほど嬉しかっとよ。お父さんは何度も「ごめん」って言いよったけど、私は喜びで胸が震えるほどやった。やっと恩返しができるっちゃもん。でも、ほんの短い期間の介護生活の後、病院のベッドで眠り続けて、そして逝ってしまったね。私になんちゃって介護の思い出を残して。私の罪悪感を少しでも軽くしようと思ったっちゃろ? お父さん。

どこまでも優しいお父さん。お父さんは大きな愛の人。私もお父さんみたいな愛の人になるけんね。だって、お父さんの愛から生まれて愛で育った娘やもん。

親の老いを受け入れることは決して簡単なことではありません。頼れる味方だった実父の老いに直面し、主人公の女性は戸惑いながらも献身的な介護を続けます。それが父親との思い出を振り返るきっかけにもなりました。とても強い絆に結ばれた親子の物語、そして素晴らしい動画に感動!