びっくり
t.A.T.u.は人気絶頂でMステをドタキャンし干された しかし15年後真相を知った時 強い同情を覚えた
みなさんはt.A.T.u.を覚えているでしょうか。
ロシア出身、リェーナ・カーチナとユーリャ・ボルコワからなる女性音楽デュオ。当時としては非常に斬新な、レズビアンカップル的な雰囲気を全面に押し出した売り出し方が話題で、2000年代初頭に日本はもちろんのこと、世界中で一大センセーショナルを巻き起こした超人気デュオでしたよね。
そんな絶大な人気を誇ったt.A.T.u.ですが、今彼女たちが何をしているのか、知る人は多くないでしょう。日本で起こったある出来事をきっかけにして、スターの座から一気に転落してしまったからです。
覚えている人もいるかもしれません。その出来事は2003年6月27日、テレビ朝日の人気音楽番組「ミュージックステーション」にt.A.T.u.が出演した時に起きました。番組は生放送であるにもかかわらず、t.A.T.u.の2人は番組の冒頭にだけ出演すると、歌唱を行わずにそのまま姿をくらませてしまったのです。
この有名なドタキャン騒動は、番組の司会者であるタモリさんが、2021年に「同一司会者による生放送音楽番組の最長放送」としてギネス世界記録に認定された際、35年間司会を続けてきた中で最も印象に残っている出来事として挙げるなど、視聴者にとってもスタッフ側にとっても衝撃的で前代未聞の出来事だったのです。
2003年の今日6月27日は「t.A.T.u.」のお二人が、Mステ冒頭挨拶だけして、ドタキャンして、温厚なタモさんが笑いながら怒る人になって、「RIP SLYME」SUが腕に「露西亜娘」と書いて、「THEE MICHELLE GUN ELEPHANT」が侠気見せた日。
— Dark Knight (@DarkKnight_jp) June 27, 2020
そんな彼女らも、もう「露西亜婆」?
寧ろ、熟の今が良いかもw pic.twitter.com/4rjlAdQzp0
もともとスキャンダラスで、お騒がせアイドルとして知られていたt.A.T.u.でしたが、テレビ出演に対する期待が大きかったこともあってか、この出来事には多くの日本人が強い失望を覚えました。結果として、日本での人気は急落。連鎖するかのように世界での人気もどんどんと降下していき、いつの間にか、t.A.T.u.は完全に過去の人となってしまったのです。
騒動から15年以上の時がたった今、t.A.T.u.のことを思い出す人はそう多くはないかもしれません。しかし先日、ある人物がTwitterに驚きの内容の投稿をし、大きな話題を呼んでいます。
ツイートしたのは、関根和弘さん(@usausa_sekine)。関根さんは記者として、2013年、t.A.T.u.の2人にインタビューしたことがあると言います。そこで語られたのは、驚くべき真実でした。
実際にその一連のツイートをご覧ください。
タモリさんが35年間、ミュージックステーションの司会を務め、ギネス認定されたという。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
一番印象に残った出来事として「t.A.T.u」と答えたようだ。
若い人たちは生で見ていないだろうし、t.A.T.u自体知らないかもしれない。当時を知る人にとっては確かに衝撃ではあった。
僕もその一人だった。ソ連崩壊後に誕生した新生ロシアから突如話題の女性デュオが世界中で大人気になり、日本にもやってきて出演したのがミュージックステーションだった。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
ところが番組の生放送中に突然姿を消すという前代未聞の「ドタキャン騒動」。
当時はその奔放な振る舞いもあったためか、彼女たち2人の非常識、わがままで起きたこと、というイメージが固定化された。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
僕はそれがどうにも腑に落ちなくて、というのも少なくとも本人たちの弁がなかったので、それから10年後の2013年、彼女たちに実際に取材して真相を聞き出すことができた。
「タトゥー 後悔の10年」という記事になり、紙面とデジタル版に掲載された。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
もしかしたらまだ、誤解している人がいるかもしれないので私が2人から聞いた真相についてここに書いておきたい。2人の名誉回復の意味もある。
まず、ドタキャン自体は完全に仕組まれたもので、「絵」を描いたのは2人のプロデューサーだった。そしてドタキャンすることは、t.A.T.u.も知らなかった。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
番組中、2人が控室で待っていると、プロデューサーから電話が入り、「今すぐそこを立ち去れた」と支持を受けたという。
出演まであと10分。
2人は「何で、何で?」と尋ねたが、「理由は後で話す」と言われ、結局仕方がなく番組スタッフの制止を振り切ってテレビ局を飛び出したという。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
2人はプロデューサーからあとで「話題作りのためだった」と理由を打ち明けられた。ただ、この一件以来、日本での人気は急速にしぼんでいった。
ドタキャン騒動から1年後、2人はプロデューサーとの契約を打ち切って再出発した。「ゴメンナサイ」という名の謝罪ソングもつくったが、人気は戻らなかったという。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
2人は僕のインタビューの中で何度も日本への謝罪の言葉を口にしていた。リェーナ・カーチナさんは「100%私たちが悪かった。謝罪の気持ちでいっぱいです。彼は時間に厳しい日本の文化を見誤っていた。私たちも若くて、言いなりだった。ばかだった」
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
元々、カーチナさんは日本好きで、
幼い頃は「セーラームーン」に夢中になったという。ロシアのこの世代の女性には共通体験であり、ロシア人にとっての日本の好感度はこの作品のおかげで相当高まったと思う。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
カーチナさんはドタキャン後も日本のことが忘れられず、東日本大震災が起きたときにはチャリティーソングも作っている。
一方、ユーリャ・ボルコワさんも日本への謝罪の気持ちと日本が好きだという思いはずっと持ち続けていた。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
それにしてもなぜプロデューサーはドタキャン作戦を思いついたのか。いくら話題作りのためとはいえ、リスクはあるし、実際、日本の反発は強かったわけだ。
残念ながら当時、プロデューサーは重い病気で取材がかなわなかった。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
そこでロシアのショービジネスに詳しい別の業界の人に話を聞いたところ、背景事情から説明してくれた。
ソ連が崩壊して市場経済にがらりと変わると、一攫千金を狙ってショービジネスに挑もうとする人たちが次々現れた。
t.A.T.u.のプロデューサーもその一人で、元々は医師で音楽業界とはまったく接点がなかったという。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
ソ連崩壊直後、医師の仕事を辞めて広告会社などを転々とし、300万ドルの低予算で音楽ビデオを制作したことをきっかけにt.A.T.u.のプロデューサーになったという。
売り出しの戦略は過激路線で、
日本でのドタキャン作戦もそうだが、ロシアの大統領選に2人を立候補させようとしたこともあった。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
ソ連崩壊によって自信を失っていたロシア人にとって、世界を席巻するt.A.T.u.はロシア人の誇りのような存在だったようだ。
t.A.T.u.のドキュメンタリー番組を作ったことがあるかある監督は
「世界に一泡吹かせたt.A.T.u.はロシア人の愛国心とプライドに必要な存在だった」と明かしている。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
ただ、そういった大人の事情に若い2人が巻き込まれ、誤解からレッテルを貼られたままになっているのは理不尽だと思った僕はこの取材結果を記事にした。
この記事がきっかかとなって2人に対し、
スニッカーズの日本版CMの出演依頼が来て、久しぶりに来日が実現した。
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 13, 2021
さらにこれは日本ではないが、2014年のソチオリンピックの開会式にも出演し、日本でも報じられた。
というのが、事の顚末でした。ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます。最後に2人の取材時の写真を紹介します。 pic.twitter.com/ITjFFiHDxN
そして、当時の動画がまだYouTubeにあったのではっておきます!
— 関根和弘/Kazuhiro SEKINE (@usausa_sekine) October 14, 2021
女性デュオ「t.A.T.u.」の今 ドタキャンから10年https://t.co/os4L4xPFPX
なんということでしょう。
ドタキャン騒動は、t.A.T.u.の2人のわがままなどではなく、プロデューサーが仕組んだ話題作りのための策略だったのです!
何も知らないt.A.T.u.の2人は、プロデューサーに指示されるがままにテレビ局を去りました。ことの重大さに気がついた時には、すでに遅すぎたのです。
プロデューサーはこれにより、人々がもっとt.A.T.u.に注目するだろうと考えていました。しかしその目論見は大きく外れ、結果としてt.A.T.u.の破滅を招くこととなってしまったのです。
関根さんも指摘している通り、このドタキャン騒動の「真実」については、すでに何度かメディアで取り上げられており、プロデューサーが仕組んだものだったと知っている人も一定数います。
けれどもそれは、t.A.T.u.についた汚名を払拭するには明らかに不十分でした。今でも多くの人々がt.A.T.u.を振り返る時、「名声に溺れた、わがままな2人組の娘」というイメージを頭に思い浮かべてしまうのではないでしょうか。それは必ずしも真実ではないにもかかわらず。
そもそもレズビアンというイメージで売っていたt.A.T.u.ですが、これもまたプロデューサーの策略で、2人は実際はレズビアンではありませんし、カップルでもなかったのです。しかしプロデューサーは気づいていたのです。2人をキスさせれば、大衆は熱狂するだろう、と。
「みんなを騒がせてその反応を見るのは、楽しいゲームみたいになっていったの」…そう言うのは、リェーナです。無理もありません。世界から熱視線を浴びていた頃の2人は、まだ成人すらしていなかったのですから。
騒動から10年後の2013年、インタビューされた2人は、今でも日本のことが好きで、今もなお強い謝罪の気持ちを感じていることを明らかにしています。
世間は彼女たちをわがままなスターと言うかもしれません。しかし実際のところは、t.A.T.u.はまだ若く、プロデューサーの言いなりになっていただけでした。
まだ何も知らない少女をスターに仕立て上げ、それを大衆が消費する…2人はそんな業界の構造の犠牲者だったのかもしれません。
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