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アンビリーバボー

不妊治療クリニックでの取り違えで互いの赤ちゃんを産み、育てていた2家族

出産は何が起こるかわからない、と昔から言われていますが、米国のカルディナーレ夫妻が経験したことは、一昔前では起こり得ない悪夢でした。

不幸は不妊治療クリニックで始まりました。カルディナーレ夫妻が選んだのは体外受精。試験管の中で受精させた胚を母胎に着床させる方法です。人工授精は成功し、2019年9月、ついに出産。母親のダフナ・カルディナーレは元気な女の子を出産しました。しかし、出産直後、夫妻は何かがおかしいと感じました。その子は肌や髪の色が夫妻よりも濃く、両親のどちらにも似ていません。

「彼女は私たちとはまったく違う顔をしていました」とダフナは振り返ります。「でも、この子をお腹に宿し、この世に送り出したので、とても親しみを感じていました」

誕生を喜びながら、両親は疑念を抑え込んで子育てを続けていました。しかし、疑惑は消えず、2ヵ月後に思い切ってDNA鑑定を行いました。その結果、カルディナーレ夫妻はハンマーで殴られたような衝撃を受けました。

怒りと悲嘆に苦しむ両親

DNA検査の結果は、両親を深い悲しみとトラウマに陥れました。ダフナが9カ月間お腹で育て、愛情を注ぎ2カ月間世話をした「愛しい我が子」は、夫妻のどちらとも遺伝的なつながりがありませんでした。

クリニックが何らかの理由で受精卵を取り違え、間違った胚をダフナに移植したのです。つまり、カルディナーレ夫妻が育てていた子どもは見知らぬ他人の子ども。そして、おそらく別の女性がカルディナーレ夫妻の子どもを産んでいることになります。

©Youtube/CBC News: The National

「言葉では言い表せないほどの苦しみを味わいました」とダフナ。「自分の子どもを妊娠して、お腹の中で育て、絆を深め、赤ちゃんの動きを感じる機会を奪われたのです」

別の人の子どもを産んだことのショックだけではありません。夫妻はある疑問にさいなまれます。自分たちの子どもはどこにいるのか?

ダフナと夫アレクサンダーは、弁護士の助けを借りて、自分たちの子どもを妊娠した女性の居場所を突き止めました。その赤ちゃんはやはり女の子で、2019年9月に1週間違いで誕生していました。その女性も、カルディナーレ夫妻と同じように、事実を知り、心を痛めました。そして、生まれてから4カ月後、子どもたちはようやく実の両親のもとに帰ってきました。

©Youtube/CBC News: The National

家族の苦しみ

2020年1月、子どもたちは交換され、生後4ヶ月のゾエちゃんは、実の両親であるカルディナーレ夫妻のもとに戻りました。しかし、苦しみはそれだけでは終わりませんでした。「赤ちゃんが戻ってきましたが、同時に赤ちゃんを失ったのです」ダフナはは、4ヶ月間大切に育てた赤ちゃんとの別れをこう表現します。

この別れに最も傷ついたのはカルディナーレ夫妻の5歳になる長女でした。「5歳のオリビアに、大好きな妹がうちの子どもではないということを説明するのは私の人生で最も辛いことでした」とアレクサンダー。「それ以来、娘は私たちから少し離れています。もうハグもキスもさせてくれません」

©Youtube/CBC News: The National

家族は再会しましたが、取り違えによる心の傷は、今も家族を苦しめています。

現在、ダフナとアレクサンダーは正義のために戦っています。2021年11月8日、彼らは不妊治療クリニック、カリフォルニア生殖医療センター(CCRH)と治療担当医師を契約違反、医療過誤、過失、詐欺で訴えました。もうひと組のカップルも匿名で訴訟を起こす予定です。

この動画では、両親がどのように取り違えを経験したかを語っています(英語)。

ダフナとアレクサンダーは取り違えの結果に今もなお苦しんでいますが、一方で、彼らはもう一組のカップルと友情を育み、「より大きな家族」を築く努力をしているそうです。「私たちが彼らの娘を心から愛したように、彼らも私たちの実の娘を心から愛していたのです」とダフナは語っています。

体外受精などの不妊治療による妊娠、出産が増える中、こうした新しい問題が現れはじめています。日本でも法整備や規則の確立が急がれます。

出典:ladbible , dailymail
プレビュー画像:© Youtube/CBC News: The National