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ジーンとくる話

家族に捨てられた犬は愛用のブランケットを片時も離そうとしなかった…

新しい住居へと引っ越していった家族。住んでいた家の前の通りに不要な物を放置していきました。その中には、家族の飼い犬も含まれていました。新居には犬はいらないから、そんな身勝手な理由で飼い犬を捨てたのです。無情にも路上に置き去りにされた犬。その傍には犬が日頃から愛用していたブランケットがありました…

2019年、1月1日朝。米国テキサス州ダラス在住のマリア・タㇻソヴェカは自宅近所を歩いていたところ、思わぬ光景を目にします。怯えた様子のピットブルのメス犬が路上に放置された濡れたブランケットの上で横になり震えていたのです。

犬を怖がらせないよう、注意深く接近を試みたマリアですが、近寄ると犬は怯えて逃げ出してしまいました。しかし、しばらくすると犬は再びブランケットのもとに戻ってきて、上に横たわりました。置き去りにされた場所でずっと待っていれば、きっと元飼い主が迎えにきてくれると期待しているのでしょう。

「冷たい雨が降りしきる中、メス犬は濡れたブランケットに横になったまま、その場から動こうとしませんでした。きっと家族が戻って来るはず、そう信じていたのでしょう…『ここでちょっと待っているだけだから、そっとしておいて』そう言っているかのようでした」

犬を冷たい路上から保護しようにも、触れることも誘い出すこともできないため、マリアはあるアイデアを思いつきました。彼女は犬に近づき、犬が逃げた隙に素早く、ブランケットを掴むと歩き出しました。きっと犬はブランケットに付いてくるはず…と考えた彼女はブランケットを使って犬を誘導することにしたのです

作戦は成功し、マリアは無事に犬を路上から安全な自宅の庭へと連れて行くことができました。

マリアの通報を受け、駆けつけた地元の動物愛護団体Dallas Dog 代表パティー・ドーソンは、保護当時の哀れな様子について語っています。

「施設の犬舎の隅っこでボールのように丸くなったまま、じっとしていました。触ると怯えて固まってしまい、アイコンタクトすらできず、ずっとうなだれた状態でした。もし誰かが近づこうものなら、すぐに犬舎の向こう側に逃げてしまうほどでした」

施設でメス犬はカミラと名付けられ、専用の犬舎が与えられました。

心に傷を負ったカミラ。しかし、精神面だけでなく、実際に身体にも深い傷を負っていました。首と耳の後ろに刻まれた傷は獣医によって縫合治療を受けなければいけないほどの深い傷でした。

「獣医の推測では、外でチェーンに繋がれ飼育されていたことにより、首輪が食い込んだことでできた傷であろうとのことでした。でも私は耳の後ろの切り傷は、他の犬と喧嘩をしたことによる噛み傷ではないかと考えています」とパティー。

現在、カミラは里親に引き取られ、徐々に人への信頼を取り戻しつつあります。

「カミラはよくやっています。これまで抑圧されてきた犬らしい無邪気な個性を少しづつ解き放ち、ゆっくりと人に心を開いていっています。保護されるまで、一体どのような体験をしてきたのか…私たちには測り知ることができない辛い過去があったようです。現在、自分が置かれた状況が安全で快適であることをカミラ自身が理解するのにはもう少し時間が必要なのかもしれません。とはいえ、日に日に心を開いて伸び伸びと振る舞えるよう回復を遂げていることは確かです」とパティー。

カミラの心の傷が癒え、完全に人間に心を開くにはもう少し時間がかかりそうですが、いつの日か、虐待の過去から完全に解放され、人間を心から信頼することができますように。

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プレビュー画像: © Facebook/Dallas Dog – Rescue.Rehab.Reform