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ジーンとくる話

キタシロサイ最後のオス・「スーダン」息を引き取る

注意: この記事にはショッキングな画像が含まれます

これまでに私たち人間はこの地球上に数多くの軌跡を残してきました。そのなかには、身勝手で貪欲な目先の利益を追い求めた結果、地球環境や生態系に大きな爪痕を残してしまったものもあります。欲望に駆られた人間の自然界への介入によって、世界各地で日々新たに悲劇的局面が生じています。キタシロサイ(Northern White Rhinoceros)もそんな悲劇的な終焉を迎えた生態系の一つです。キタシロサイの最後の雄「スーダン」は先月高齢のため亡くなりました。密猟者の手の届かない、ケニアの保護地区で世話係のジョセフとジェームスに見守られながら45年の生涯を閉じたのです。

ナショナル・ジオグラフィックの専属フォトグラファーであるアミ・ビターレは、スーダンが息を引き取る寸前の最期の瞬間をカメラに収めました。悲しい画像ですが、同時に私たち人間に対して、種の絶滅の危機感を目覚めさせる画像でもあります。

 

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ビターレは自身のInstagramへの投稿にこう添えています:

「もしスーダンの死が世界を少しでも変えることができたのなら、まだ望みは失われていないかも知れません。スーダンの死は人類への警鐘なのです。総人口が70億人を超えた今、私たちはこの地球の一部だという事を再認識しなければなりません。人類の運命は、動物たちの運命と密接に関わっています。ジョセフ・ワチラさんは、この地球で最後のオスのキタシロサイが2018319日に息を引きとるまで、ずっとその側で見守っていてくれました。」

 

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キタシロサイは人間の欲の犠牲となってしまいました。そしていまも別種のサイが日々密猟の犠牲となっています。WWF(世界自然保護基金)によると2017年だけでも南アフリカで1028頭ものサイがその貴重な角を求める密猟者によって殺されています。闇取引では現在、サイの角は一本およそ6万ドル(日本円で約650万円)で取引されており、アジアの一部地域ではサイの角は「伝統薬」の原料とされ、男性の生殖能力を促進したり、ガンに対する「治療薬」としての効果があると信じられています。こうした全く科学的根拠のない迷信が、サイにとって仇となったのです。

imgur/high…

スーダンの飼育員だったジェームス・ウェンダが、今は亡き親友のサイに宛てたメッセージが、彼のFacebookに公開されています:

「さよなら、スーダン。僕が君をどれだけ大切に思っていたか、今更言葉にする必要はないだろう。それは僕たちが交わした会話や、共に過ごした時間の中でしっかりと君に伝わっているはずだから。君と過ごした最後の数年が僕を変えた。君のおかげで僕は君の住む環境と自然について、より多くの人に認識してもらおうと日々努力するようになった。君の声になると約束したから。与えられた役目をしっかり果たせたかどうか自信は無いけれど、やれることは精一杯したつもりさ。

君のお世話をするようになってからの数年を思い返すと、君を失った悲しさよりも、君に僕ができる限りの全てを与えられた事に満足感を覚える。スーダン、だから僕に後悔はないよ。心の底から僕は、君にできることは全てやり遂げた、そうハッキリ言えるから。

ただ、ひとつだけ残念な事がある。それは人類が君(サイ)という種の存在に気づいてしまった事。できるだけ多くの人に僕らが一緒に過ごした日々の生活について、知らせる努力をした。どれだけの人が心から聞いてくれたか分からないけど、それでも君は、多くの人の考えを変える力のある存在だった。

もしこの世界を変えられるとしたら、「スーダン追悼の日」を設けたい。その日に世界中の親は子供に自然を守ることがいかに大切なのか教えるのさ。そしてスーダンの写真が世界中の学校の教室に掲げられ、子供達がスーダンの絵を描く事で(多くの種の)絶滅についてもう一度よく考える機会を与えられる。そんな世界なれたらいいのに。」

imgur/IAmAnInsecureBagel

現在この地球上には、残り2頭のメスのキタシロサイが残るのみです。2頭はスーダンの孫と娘にあたります。この種の絶滅はもう避けられないでしょう。

しかしスーダンの死が人類にとって絶滅に瀕している別種のサイのこれからについて再考する良い機会になればと、心から願わずにはいられません。