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えらい

セットで子役は怖くてスネイプ先生に声がかけられなかった しかし最終日 かけられた言葉に涙が溢れた

(注意:若干のネタバレを含むため、ハリー・ポッターシリーズをこれから楽しみたいと言う方はご遠慮ください)

ハリー・ポッターシリーズと言えば、イギリスの作家J・K・ローリングによる大人気ファンタジー小説ですね。映画版が完結して早10年経過しているにもかかわらず、依然として人気は衰えることを知らず、人々に夢や希望を与え続けています。

そんなハリー・ポッターシリーズですが、映画版を観たことがある人なら、忘れられないほど強いインパクトを残したキャラクターがいたはず。

そう、スネイプ先生です。

痩身で、鉤鼻、土気色の顔をしており、真っ黒なローブが特徴的な、きわめて暗いムードを身に纏ったスネイプ先生。

優秀な魔法使いではあるようですが、性格もかなり歪んでおり、教育の一環とは言えハリーを執拗なまでにネチネチといたぶる、典型的な感じの悪いキャラクターとして多くの人が記憶しているのではないでしょうか。

物語の終盤には、愛していた女性リリー(ハリーの母親)のためにハリーを陰から守っていたことが明らかになります。

なんて悲しい運命を背負ったキャラクターなのでしょう。威圧的な態度は、ハリーに悟らせないための予防線だったのでしょうか?

このスネイプ先生という難しいキャタクターを演じたのは、イギリスの名優アラン・リックマン。

実はハリー・ポッターシリーズは、脇を固める俳優として、イギリス屈指の実力派俳優が集結していることでも知られています。アラン・リックマンも、元々はロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに所属していた実力派の舞台俳優でした。

アラン・リックマンは2016年にがんで69歳で亡くなってしまいましたが、最近になって、シリーズに出演していた元子役がアラン・リックマンとのエピソードを披露し、大きな話題を呼んでいます。

その元子役の名はマシュー・ルイス。ハリーと同じ寮の学生で、ちょっとドジなネビル・ロングボトムを演じた俳優です。

マシューは、撮影の間中ずっと、アラン・リックマンに話しかけることを恐れていたそうです。それもそのはず。アラン・リックマンはイギリスの名優中の名優で、話しかけるなんて恐れ多いと思っていたのでしょう。その上、威圧的なスネイプ先生という役を演じていたのですからなおのこと、気軽に話しかけるなんてことはできなかったのです。

しかし完結編である「死の秘宝パート2」の撮影の最終日、もうチャンスは今しかないと思ったマシューは、アラン・リックマンが控えるトレーラーへ出向き、「全然話したことはありませんでしたけど、今まで一緒に働けて光栄でした」と声をかけたそうです。

そこで返ってきた反応は、あまりにも意外なものでした。

アラン・リックマンはマシューの感謝の言葉を真摯に受け止めると、気さくに「どうぞ、入って」とトレーラーの中へ招いたのです。そしてヤカンを用意すると、マシューにお茶を淹れてくれました。2人は世間話に花を咲かせながらも、アラン・リックマンは、子役であるマシューがこれから本格的に俳優の道を切り開く上でのキャリアアドバイスを送ってくれたそうです。

日本でも、若い役者が大御所の楽屋に挨拶に行くことはあるでしょう。しかしそんな時でも、「頑張りな」くらいの激励は受けるかもしれませんが、誠意あふれるキャリアアドバイスまで送ってくれる大御所はそう多くはないのではないでしょうか?

マシューはアラン・リックマンと一緒に仕事をした経験をこう振り返ります。

「アランはベテラン俳優ですが、決して子役に向かって声を荒げたりすることはなく、常に子役を対等なものとしてリスペクトある扱いをしてくれた」と。

そしてマシューだけでなく、ハリー・ポッター映画の現場で共演した子役のほとんどが、スネイプという役柄に相反するように、アラン・リックマンはジェントルで献身的な素晴らしい俳優だったと述懐しています。

主人公ハリーを演じたダニエル・ラドクリフもインタビューなどでたびたびこう語っています。

「アランは、セットの中でも、そして撮影が終わって何年も経った後でさえも、ずっと僕のことを励まし続けてくれました。映画界で、もっとも誠意に溢れて、人々を励ましてくれる俳優のひとりでした」

また、実はアラン・リックマンは、ハリー・ポッター映画の撮影中に、物語の最後の結末を知っていた唯一の人物だったと言います。(撮影中、まだ原作シリーズは完結していませんでした。)原作者のJ・K・ローリングが、スネイプという役を演じる俳優には結末を知った上で演じてほしいと、アラン・リックマンにだけは打ち明けていたのです。それだけ、原作者からも人柄を信頼されていたのでしょう。

2016年に多くの人に惜しまれつつもこの世を去ったアラン・リックマン。スネイプ先生は、不器用にハリーを見守る守護者でしたが、演じたアラン・リックマンは、現実世界でも子役たちを優しく見守り続けるガーディアンだったのですね。

 
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セットで子役は怖くてスネイプ先生に声がかけられなかった しかし最終日 かけられた言葉に涙が溢れた