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えらい

車椅子に乗った物乞いの男性に市の職員は冷たく対応した。しかし、男性がサングラスを外した瞬間、職員は凍りついた。

”20年ぶりに帰郷したオデュッセウス王が変わり果てた王国の現状を探るため乞食に身をやつした”という、ギリシア神話さながらの出来事が起こりました。

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メキシコ、チワワ州クワウテモック市の市長があるユニークな方法で直接、市の職員の対応を調査したのです。なんと、市長自ら体の不自由なホームレスに扮し、社会弱者に対する職員の対応を自ら体を張って実地調査するというものでした。

これまでに障害者や社会的弱者、ホームレスから社会福祉課職員の応対について数多くの苦情を受けていたクワウテモック市。市行政トップのカルロス・テナ市長としては、クレームを信じるべきか市職員の言い分を信じるべきか、判断が難しいところでした。そこで、現状を探るべく、テナ市長は実際に自分が社会的弱者となって抜き打ちチェックをすることにしたのです。

YouTube/El Heraldo de Mexico

部下である市職員に市長であることがバレないよう、完璧に変装するため準備に2ヶ月を要したテナ市長。顔の下半分が隠れるような厚手のタートルネックニットにグレーのニット帽、サングラスを装着し、さらに念のため左頬を怪我を装い包帯で隠すという徹底した変装で調査に挑みました。

YouTube/El Heraldo de Mexico

車椅子に乗ったテナ市長は体が不自由な社会弱者として市役所の社会福祉課を訪れ、食事を恵んでほしいと頼みます。しかし、無視された上に、あろうことか差別的な対応を受けます。

次に市長執務室を訪れ、市長と話がしたいと告げるものの、不在なので廊下で待つようにと市議会秘書から無礼な態度で指示されます。その後1時間半待たされ続けものの、職員らから放置されたままなんの対応もありませんでした。

市役所職員の対応を目の当たりにしたテナ市長。車椅子から立ち上がり、変装を解いて正体を現すと、職員らは驚きのあまり固まったそうです。

確かに変装有りと無しではガラリと雰囲気が違うので、全く気がつかなかったのも無理はありません。本当に2ヶ月も準備に費やす必要があったのかは甚だ疑問ですが、その甲斐あってか、部下の目をも欺く見事な変装ぶりです!(左: 変装有り 右: 変装無し)

YouTube/El Heraldo de Mexico

「今回の試みにより市民が窓口で市職員から受ける対応について知ることができ、公務員らの社会的弱者に対する怠慢と無関心ぶりを実感することができた」とテナ市長。

メキシコの地元紙El Voceroによると、これまで社会弱者に対する待遇の改善に力を入れてきたテナ市長ですが、今後より一層対策に努めるとのことです。実際に社会的弱者の立場となって、実際に窓口として対応する市職員からどのような待遇を日々受けているのか実態を覆面調査したものの、結果は市長にとって衝撃的なものだったようです。

本来ならば支援の手をさしのべるべき社会的弱者に対し無視し、差別的な待遇をした複数の市職員に対し、市長は大いに失望したと地元メディアに語っています。もちろん、職員の中には変装した市長に対して親切に対応した職員もいたものの、多くの職員のあるまじき「職務態度」を改善するため、今後抜本的な改革が必要だと述べているそうです。

市民のニーズに耳を傾け、現状を知るべく体当たりで調査に挑んだテナ市長。今回の試みが身を結び、行政職員の対応の改善に繋がるといいですね。

地元メディアで報じられたテナ市長の試みはこちらから市長できます。スペイン語音声のみ: