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【食べらるはずが…まさかの展開に】食人族の島に漂流して捕らえられた船乗り「絶体絶命」しかし予期せぬ運命が彼を待っていた

1904年のクリスマス、29歳のスウェーデン人船乗りカール・エミル・ペッターセンは絶体絶命の危機にありました。乗っていた船が沈没、なんとか島に漂着し命拾いしたと思いきや、そこは食人族の住む島だったのです…

当時ドイツ領だったニューギニアを拠点に活動する貿易会社「ドイツ・ニューギニアカンパニー」に勤務していたペッターセン。彼の仕事は船乗りとしてニューギニア周辺の特産品などの積荷を船で輸送することでした。

しかし彼の乗った船舶ヘルツォーク・ヨハン・アルブレヒト号が、ニューアイルランド島の沖合で難破。運良く一命をとりとめたペッターセンはタバー島に漂着します。

(画像はイメージです)

しかし…漂流者にとってこの島に上陸することは死を意味していました。実はこの島には食人を行う原住民族が住んでおり、彼らにとって島に漂着した「よそ者」は「食糧」と見なされていたのです。

一難去ってまた一難。ハイビスカスの茂みの下に漂着したペッターセンはすぐに原住民によって発見されます。大勢の原住民に囲まれ、多勢に無勢で逃げる術もなく、ペッターセンは縛り上げられました。

ニューギニア海域で1898年から船乗りとしてのキャリアを積んでいた彼にとって、この島の原住民が食人行為を行う部族であることは周知の事実。彼らに捕獲されることが何を意味するのかは明白でした。

「人生、終わった…」ペッターセンは死を覚悟します。しかし、原住民はペッターセンを即座に殺害して食べようとする素振りは見せず、彼を連行します。実は原住民たちは北欧出身のペッターセンの青い瞳に大変驚き、興味を持ったため、珍しい献上品として部族の王に捧げることにしたのです。浅黒い肌に黒い髪、ダークカラーの瞳を持つメラネシア系のタバー島原住民にとって、彼の青い瞳は非常に珍しく、初めて見る「青い目の人間」でした。

縛られたまま族長の王ラミーの前に引き出され、「もうダメだ、今度こそ喰われる…!」と再び死を覚悟するペッターセン。しかし、そのとき予想外の出来事が起きたのです。なんと、王の娘シンド王女がペッターセンに一目惚れしたのです。

「ストロング・チャーリー(カールの英語読み)」の異名で知られた船乗りとして鍛えたたくましい体格、ハンサムで魅力に溢れたペッターセンのルックスはたちどころに王女を魅了。結局のところ、顔かよ!とツッコミたくなる人もいるかもしれませんが、ひとまずはそのイケメンぶりによって、ペッターセンは運良く食べられる運命を免れたのでした。

そのまま島で生活することを許されたペッターセンは島の住民となってから3年後の1907年、シンド王女と結婚。王族の一員となります。島に漂流した当時は捕らえられ食べられる運命にあったことを考えると、あの「人生ゲーム」もびっくりなものすごい成り上がり人生です。

ペッターセンは貿易会社で働いていた頃の経験を生かし、島の特産品のドライココナッツを輸出する貿易業を開始。ココナッツ農園の開発にも成功し、近隣の島々にも農園を広げるなど、なかなかのやり手ぶりを発揮します。商才のあるペッターセンはいつしか島民の尊敬を集める存在に。ラミー王が亡くなると、王女の伴侶である彼は島の王になります。

従業員から尊敬を集め成功した企業家、そして敬愛される王へ…ドラマでもそうそうないサクセスストーリーを歩むペッターセン。私生活も妻シンドとの間に8人の子を授かり幸せな結婚生活に恵まれ、順風満帆な人生を送っているかのようでした。

しかし、そんな幸せも長くは続きませんでした。

1921年、妻シンドが産褥熱で死亡。最愛の妻を失くし傷心のペッターセンは、翌年、故郷スウエーデンに一時帰国します。

スウェーデンに戻った彼はジェシー・ルイーザ・シンプソンと出会い、1923年にタバー島に彼女を連れて戻り再婚します。しかし王の不在の間に、ココナッツ農園の経営は傾き、破綻状態に。おまけに、島に戻って早々に夫婦揃ってマラリアに感染するという災難に見舞われます。

ペッターセンはなんとかココナッツ農園経営を立て直そうとしますが、市場の低迷と投資の失敗が重なり、失敗に終わりました。

それでも彼は諦めません。近隣のシンバーリ島に金鉱床があることを発見します。一方、マラリアの後遺症に苦しむ妻は療養のためスウエーデンに帰国、1935年に首都ストックホルムでがんにより亡くなりました。同年、ペッターセンはタバー島を離れオーストラリアへと渡ります。

1937年5月2日、ペッターセンはシドニーで心臓発作により命を落としました。享年62歳。運命に翻弄されるようでありながら、自らの力でたくましく人生を切り開いた彼の生き方。そのあまりにも数奇な生涯は 、多くの人々の好奇心をかきたててやみません。

ちなみに、スウェーデンの児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの代表作「長靴下のピッピ」に登場するエフライム・ロングストッキング船長はペッターセンから着想を得て書かれたと言われています。

食人族の島に流れ着き、「食糧」として捕食される立場から部族の王へ、そしてやり手の企業家として波乱万丈の人生を歩んだ一人の男性の物語。「事実は小説より奇なり」とは言いますが、彼ほどこの「ことわざ」がふさわしい人物は他にいないかもしれません。

プレビュー画像: ©️pinterest/en.m.wikipedia.org