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少年は頭に何かが当たったような衝撃を感じた。10日後、自分の体を見て涙を流した。

ロシアの北西部の都市アルハンゲリスに暮らすセルゲイ・クトヴォイにとって、2013年の4月は、人生がガラリと変わった月として心に刻まれています。 

当時17歳だったセルゲイは、少々太りぎみのティーンエイジャーでした。明るく楽観的な性格でしたが、思春期の少年らしい悩みもありました。その内のひとつが140キロにも増えてしまった体重でした。このままの体型では大好きなアイスホッケーの選手になる夢は叶わないだとうとわかっていました。そんなセルゲイの大きな目標は、痩せて鍛え抜かれた体を手に入れることでした。そうすれば、女の子たちも振り向いてくれるようになるのではと夢見ていたそうです。「未来は絶対に明るい」そう信じていました。

そんなことを考えながら学校から家に帰る途中、セルゲイを悲劇が襲います。

道路を渡ろうとした際、セルゲイは車にはねられてしまったのです。頭の後ろに突然鈍い痛みを感じたことを覚えていると言います。15メートル飛ばされ、道路脇の信号機に叩きつけられていたのです。そして直後、恐ろしい光景を目にします。

「上を見上げたら、そこに僕の脚があった。潰されて体からもげてしまっていたんだ。でもそのときは、痛みも恐怖も感じなかった」

その記憶を最後にセルゲイは意識を失います。

Авария

セルゲイの昏睡状態はその後一週間続きました。事故で切断されてしまった左脚は損傷が激しく、医師たちは接合は断念、17歳の少年は左脚を失います。目覚めたとき、セルゲイは自分の体を見てしばらく泣きました。しかし、事故のことでセルゲイが涙を流したのはそれが最後になりました。

その後、容態が安定するまで数ヶ月かかり、退院が許されるまでセルゲイは9か月の入院を余儀なくされました。

「入院中はとにかく良く食べたよ。太ってもまったく気にならなかった。それよりも、助かりたかった。ずっとベッドに寝たきりで、まったく体を動かせなかった」 

セルゲイがやっと退院してきたとき、家族は片足を失ってしまった彼が落ち込んでしまうのではと心配していました。しかし、予想を裏切るセルゲイのはつらつとした笑顔が家族や友人たちを驚かせます。セルゲイは自分がまだ若いことを自覚しており、足を失ったくらいでこの先の人生が暗くなるわけもないだろうと今まで以上に前向きに毎日を楽しんでいるようでした。

しかし、医療施設があまり整っていないアルハンゲリスでは障がい者に対するサポートも充実していません。これから自力で生きていくには、体に筋力が必要であることに気付いたセルゲイでしたが、車いすで入れるフィットネス・ジムがこの街には一つもなかったのです。そこで、両親に頼んで自己流のトレーニングに励み始めます。

交通事故を起こした運転手の男性は、ブレーキが故障していたことを証明したものの懲役1年6月の有罪判決を受け、日本円にして約260万円の損害賠償金の支払いが命じられました。ところが、判決からひと月後、男性は癌のため亡くなってしまったため、結局セルゲイのもとには一銭も支払われることがありませんでした。

「なにも貰えなかったけど、彼の家族や親戚に肩代わりして欲しいとは思わなかった。彼らには関係ないことだからね」

この状況に対するセルゲイの落ちつきぶりを見て、家族は心配を通り越し、感心していたそうです。しかし、セルゲイの家族は決して裕福ではなく、彼が必要とする医療費はかさむばかりでした。肉体改造に励みながらセルゲイはお金を工面する方法を考えつつ、将来義足を作るための貯金も始めます。

そして事故から2年後、セルゲイの家族は息子が成し遂げた快挙に驚いていました。ビフォー&アフターをご覧ください。

見事な変身を遂げたセルゲイは現在、インスタグラムに115,000人以上のフォロワーを抱えるちょっとした有名人になりました。夢見ていた肉体を手に入れたことがきっかけで、モデルの仕事を貰えるようになったのです。事故前に想像していた未来の自分に限りなく近づけることができただけでなく、モデル活動を開始したことで心配してた収入も確保することができました。

そんなセルゲイの大きな目標は、パラリンピックへの出場!

「脚は失ったけど、自分は失ったわけじゃないからね」

ネット上には、彼に対して心無いコメントを残していく人もいますが、セルゲイはこんなことは気にしていないといいます。例えば、彼のアカウントに匿名で投稿された「障害を持つ人はかわいそうだけど、お前をみてるとイライラしてくる。やめろ」というコメントに対し、セルゲイは次のように返事をしています。

「じゃ、今日はおやすみ!」

事故後は友達も増えたというセルゲイ、趣味はスポーツ、散歩、そしてダンスです。体が動かせることに喜びを感じるという彼は、子供の頃からの夢だったアイスホッケーにも挑戦することができました。スキルはまだまだだそうですが、練習あるのみだといいます。抱える障害のせいで不便なことは多々ありますが、セルゲイは常に明るく前向きで、現状を変えることのできない愚痴や文句は一切言いません。

事故に片足を奪われてしまったかもしれませんが、セルゲイは事故のおかげで今まで見えなかった自分の力に気付くことができたといいます。今は最高に楽しい人生を歩んでいると、自信を持って言えるそうです。セルゲイの勇敢で前向きな姿勢は、世界中の人々に感銘を与え続けています。

これからのセルゲイを、心から応援しています!