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道路にかかる橋から身投げしようとした女性は周囲の説得を聞かなかった しかし4時間後彼女が思い止まった先にいたのは…人々から称賛の声

人は日々の暮らしの中で、喜びや幸せを感じる一方で、時にはそれ以上に苦悩や辛いと感じる事の方が多いかもしれません。生きることが辛い、と程度に差こそあれど、そう感じたことがあるという方もいるのではないでしょうか。

今月中旬、イギリス南西部のデボン州エクスターで、一人の女性が自ら命を絶とうと幹線道路に掛かる橋の手すりを超え立っているのを通行人が目撃、すぐさま警察に通報をしました。

Beaconsfield, Bucks

通報を受けた地元の警察とデボン州&サマセット州消防隊員が駆けつけた時、女性は手すりの外側に立ち、飛び降りようとしていたと言います。警察の担当者が女性を安全な場所へ呼び戻そうと説得をするものの、女性はその場から離れず、事態はどんどん深刻な状況に。そうして4時間が経過した頃、消防隊員のうちの一人があるアイデアを思いついたのです。

「セラピー犬のディグビーをここに連れて来たらどうだろうか」

ディグビーは、2018年よりデボン州&サマセット州消防隊に所属するセラピー犬で、通常は職務でトラウマを抱えた消防隊員たちのセラピーに同席しサポートしています。

その場にいた隊員たちの賛成のもと、ちょうど現場近くにいたディグビーは担当者のマットさんとすぐに駆けつけました。

すると、これまで深刻さを増すばかりだった雰囲気が一転します。

「ディグビーが到着すると女性はすぐにディグビーを見て、そして微笑みました。これが、ディグビーが消防署でどんな仕事をしているのか、彼女に話すきっかけになったのです」

ディグビーを担当する同消防署の隊員であるマットさんは、女性がディグビーの登場で落ち着きを取り戻したことを察知し、手すりの外から安全な場所へ戻り、ディグビーを触ってみないかと提案。すると女性は、手すりの外側から戻って来たそうです。

その場にいた全員が待ち望んでいた瞬間でした。

普段は隊員たちをサポートするディグビーですが、この異例の緊急事態に自分が何をすべきかを正確に理解していたようでした。ディグビーは、女性とアイコンタクトを交わし、彼女が命を絶とうとする思いを振り切らせたのです。

こうして女性は保護され、現在はメンタルヘルス専門のケアを受けているそうです。女性の命を救ったディグビーの活躍に、多くの人から称賛の声が寄せられ、同時にディグビーを始めとするセラピー犬の訓練に当たるトレーナーや担当者であるマットさんらへも感謝の言葉が贈られたとのこと。

デボン州&サマセット州消防署には、ヒーロー犬ディグビーの活躍を称え、多くのおやつやおもちゃのプレゼントが届いているそうです。また、同署は感謝とともに、ディグビーへのプレゼントの代わりに困窮する人々への寄付をして欲しいと呼びかけています。

セラピー犬は、災害や病気、また大きなケガなどで心のケアが必要な人に、寄り添う特別な訓練を受けた犬たちで、日本でも災害被災地や心身障がい者施設で活躍しています。彼らは偏見や要求することをせず、ただただ寄り添い一緒にいることで、人の心に安らぎをもたらすと言われています。言葉を話さない分、相手の身振りや目の動きから状況や心情を察する不思議な力があるのかもしれませんね。女性の命を救ったヒーロー犬ディグビー、きっとこれからも多くの人の心を癒してくれることでしょう。

プレビュー画像:©︎flickr/Charles von Tobi