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性的暴行と二次被害に苦しみ自ら命を絶った23歳の娘…母と娘の戦いの記録

性的暴行の被害者は、生涯にわたって、こころと身体に負ったトラウマと闘わなければなりません。さらに被害者を苦しめるのは周囲の心ない対応や誹謗中傷、いわゆるセカンドレイプです。ネット上に些細な気持ちで書き込まれた誹謗中傷が被害者を二重、三重に苦しめるのです。さらには被害者の落ち度が責められ、加害者の罪が軽くなることも珍しくありません。

アメリカで2016年のNetflixドキュメンタリー映画『オードリーとデイジー』で自らが受けた性犯罪を語った被害者キャサリン・デイジー・コールマンの場合も、強姦罪は不起訴にされました。

 
 
 
 
 
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事件が起きたのは2012年1月、当時14歳だったデイジーは、参加したホームパーティで兄チャーリーの友人からアルコールを強要された後、レイプされました。パーティにいた別の少年がその様子を携帯電話で撮影していました。犯行後、犯人は意識を失ったデイジーを家まで車で運び、凍てつく寒さの中、Tシャツ1枚の彼女を庭に置き去りにしました。デイジーの母メリンダ・コールマンは、翌朝、娘が庭で今にも凍死しかかっているのを見つけます。

病院の医師は少女が性的暴行を受けた痕跡がはっきり残っていると証言しました。しかし、加害者の少年は地元ミズーリ州メアリヴィルの高校で将来を嘱望されたアメフト選手。しかも政治家を祖父に持つ名門の家柄でした。デイジーは警察に告訴しましたが、地元検察官は証拠不十分として強姦罪の起訴を取り下げました。

追い討ちをかけるようにデイジーを待ち受けていたのは周囲からの誹謗中傷でした。学校では、「彼女は嘘をついている」という決めつけや「彼女にも責任があった」とする非難が相次ぎ、加害者を擁護する声が広がったのです。

デイジーと母親のメリンダは、正義のために戦い始めます。しかし、小さな町で一家は耐えがたいほどの攻撃を受けます。デイジーは学校とネット上での嫌がらせを受け、母親のメリンダは解雇され、デイジーの兄弟もまた、毎日のように敵意と向き合っていました。さらになんとコールマン家は留守中に放火され全焼しました。

家を失ったコールマン一家は、メアリヴィルという小さな町ではもはや安全に暮らせないことを悟り、別の街に引っ越します。引っ越して少しの間、デイジーは新しい環境をとても喜んでいるようでした。再び笑うことも増え、タトゥーの技術を習得します。しかし、メアリヴィルの住民によるレイプとそれに続く魔女狩りは、少女の心に深い傷を残していました。

 
 
 
 
 
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デイジーは、2017年に性的暴行予防を訴える団体Safe Before Anyone Else(SafeBASE)を設立しました。この団体は、性的暴行の被害者のために、被害者が悩みや体験を共有し、情報を交換するとともに、性的暴行事件の実態に注目してもらうことを目的としています。彼女はインスタグラム、ツイッター、フェイスブックで自身の体験を共有し、少女たちがいかに簡単に薬物やアルコールによる性的暴行の被害者になり得るかを示し、そのような行為が被害者に生涯にわたる傷を残すことを警告しつづけました。

性的暴行の被害者の多くは心の傷を乗り越えることができず、絶望のなかでひとつの解決策を見出します。深すぎる心の傷を癒すことができず自殺してしまうのです。デイジーもこの時点で何度か自殺未遂を起こしていました。

Netflixが製作した2016年のドキュメンタリー映画 『オードリーとデイジー』 で、デイジーは自らの性的暴行の被害を語りました。映画が公開されると、デイジーはメディアの注目を浴びることになりました。デイジーは他の少女や女性への警告としてこの映画の撮影に協力しましたが、このことがネット上のセカンドレイプを過熱させることになってしまったのです。「デイジーはレイプなどされていない」「被害を利用して有名になろうとしている」などと主張する匿名の人々によって、デイジーはインスタグラム、フェイスブックなどで攻撃の標的にされました。

他の少女たちを苦しみから救うために自身のレイプ体験を公表したデイジーにとって、まさに地獄のような日々でした。2018年、弟のトリスタンが19歳という若さで自動車事故で亡くなったことは、家族の心を打ち砕くのに十分すぎるものでした。デイジーは2020年8月4日、23歳という若さで自らの命を絶ちました。

 
 
 
 
 
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娘の死の直後、母親のメリンダ·コールマンはフェイスブックで次のように述べています。

「私の娘キャサリン・デイジー・コールマンが、今夜自殺しました。…あの人達が彼女にしたことから彼女は回復できなかった。こんなの不公平すぎる」

デイジーが亡くなった後も、メリンダは娘に対する誹謗中傷や偏見と戦い続けています。

SNSに匿名で憎しみに満ちたコメントを書き込む行為が、どれだけ被害者を傷つけ、恐怖と絶望に陥れるのかを私たちは真剣に考えなければならない時にきているのではないでしょうか。

こちらの記事も併せてご覧ください。

プレビュー画像: © Instagram/youngcattattoos