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「原発事故による避難者が突然家に戻ったら…」実際の町民たちが協力した衝撃写真作品に、心が締め付けられる。

東日本大震災・福島第原発事故から7年近くがたった今も、住み慣れた家や土地を離れ避難生活を余儀なくされている人たちはまだ大勢います。福島第1原発から9キロにある浪江町は、平成29年3月31日に避難指示解除準備区域への指定が解除され、少しづつではありますが町民たちが帰還をとげています。しかし、平成23年3月11日に浪江町に住んでいた住民登録人口21,434人の内、現在も20,648人が福島県内外で避難生活を強いられているのもまた事実です。

ギヨーム・ブレッションとカルロス・アジェスタは、震災後の浪江町と、町民たちの姿を撮影し、記録・発信する活動を続けているフランス人の写真家です。2人が2014年より「Retrace Our Steps 歩んだ道を辿る」という作品を Facebook で公開しています。浪江町の人々の協力のもとに制作されたこの写真シリーズは、ゴーストタウン化した浪江町を背景に、かつて暮らしていた自宅、通っていた学校、仕事場、バーや飲食店にたたずむ波江町の人々の姿を捉えたものです。

「住人たちが帰ったときに抱くであろう凄まじいショックを強調して描きたかった」

作品の非現実の中に存在する、刺すような現実に胸が締め付けられます。かつては、日常だったはず。突然家に戻れなくなってしまった人々の戸惑い、あきらめの気持ちや見えない未来に対する不安といったものが静かに、そして力強く表現されるこれらの写真に、人にとっての「ふるさと」や「故郷」は何かということを改めて考えさせられます。

避難を余儀なくされた人々の複雑な心境を描いたこの作品は、フランスを中心に、美術館やギャラリー、雑誌やウェブ上のメディアなどで紹介されている他、2016年始めには写真集が完成しました。

時が経つにつれ、被災地以外での震災の記憶は薄れつつあります。震災の記憶や被災地への想いを風化させない為にも、今も続く復旧・復興の現状を伝え、震災の記憶をつないでいくことが重要ではないでしょうか。1日も早い被災地の復旧・復興と原発事故の収束を、心より応援しています。