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ジーンとくる話

捨てられた犬の最期の瞬間 レスキューの手が差し伸べられる

コロナの自粛期間中、家で過ごす時間が増えたことで日本では再びペットブームが訪れました。その後、自粛要請が解除された頃から、犬や猫の「飼育放棄」が増えていることが問題になっています。なかには「旅行に行きたいから」という理由でペットを保護施設に連れてくる身勝手な飼い主も…。そんな悲劇が起きているのは日本だけではないようです。海外でも、多くの家族が長期旅行に出かけるクリスマスのホリデーシーズンには捨てられるペットの数が増えるという現実があります。

捨てられて

2019年12月、イギリス北部のノーサンバーランド州の森で発見された犬もそんな人間の身勝手さの被害者だと考えられています。バーウィック・アニマルレスキューセンターのジャン・ロス所長はこう述べています。「動物福祉局の職員から送られた写真を見て、私は恐怖と悲しみを感じました。そしてその犬は死んでしまうだろうと思いました。でも彼女は何とか持ちこたえて、施設まで運び込まれたんです」

救助されたメス犬は、ピーターラビッドの物語に出てくるハリネズミ「ティギーおばさん」にちなんで、「ティギー」と呼ばれることになりました。骨と皮だけにやせ細ったティギーの体重はわずか10.8 kg(同様のグレイハウンドのミックス犬の体重は20 kg前後が普通)。起き上がっても倒れてしまうほど弱っていたため、できるだけ早く獣医に連れていく必要がありました。獣医の診察で、ティギーが極度の栄養失調に加えて、ダニによる感染症にかかっていることがわかりました。被毛はほとんどなく、38°Cあるべき体温は34.8°Cでした。

救助された最初の夜、ティギーは訓練を受けた飼育員と病院で過ごし、そこで約2時間ごとに特別食をもらいました。翌日はアニマルセンターに連れて帰る予定でしたが、極度に衰弱していたため職員の自宅に連れて帰ることに。暖炉の前で暖かいパジャマにくるまれて過ごすことになったのです。

翌日、ティギーは起き上がって食べようとしましたがまだ体が弱って立つことはできませんでした。彼女は家で暮らすための訓練も受けていませんでしたが、とにかく今はティギーを健康に戻すことが最優先でした。数日後、ティギーは支えてもらえば何とか少し立っていられるようになりました。1週間で1キロの体重増加も小さいけれど重要な一歩でした。

外用薬や定期的な入浴ではダニが消えなかったため、獣医はティギーに抗生物質を処方。適切なケアと治療によって、体重は着実に増加し、彼女は目に見えて回復していきました。ある日、ジャンの7歳になる孫が訪ねてくると、ティギーはその子にとても懐いたと言います。「ティギーはとても優しく、孫に気を配っていました」とジャン。

ある日、ティギーは外に出たそうな素振りを見せて、玄関の前に立ちました。結局、出る勇気がなかったようで引き下がりましたが、これは大きな前進でした。数日後には、ティギーは散歩をしながら新鮮な空気を楽しめるまでに回復。次第に他の犬ともじゃれあうようになりました。

©Youtube/This Morning

シェルターではティギーの飼い主を探そうと、ティギーの話をフェイスブックでシェアしました。この呼び掛けの結果、元飼い主は見つかりませんでしたが、多くの動物愛好家からティギーの回復のために毛布やおもちゃ、お金の寄付が。その後も、ティギーの話は、英国の新聞、インターネット、テレビで大々的に取り上げられ、地元コミュニティやノーサンバーランド郡評議会の注目を集めました。評議会は、ティギーがなぜこのようなひどい状態で放置されていたのかについて、犯人や入手可能な手がかりや証拠を見つけるよう訴えました。

そして1カ月の集中治療の後、ティギーは劇的とも言える回復を見せました。被毛は再び生え、施設の庭で他の犬たちと遊んだり、飛び跳ねたりできるようになったのです。回復する力が残っていて本当によかった!

©Youtube/This Morning

以下のビデオ(英語)では、すっかり元気になったティギーの様子をみることができます。テニスボールにじゃれついて遊ぶティギー、すっかり元気になったのがわかります。ティギーの健康回復に努めたジャンをはじめとする職員の方たちもきっと嬉しいことでしょう!

ティギーは新しい家族を見つけ、他の救助された犬2匹とともに暮らすことになりました。あとは、ティギーの第二の生活が新しい家族とともに幸せなものになることを願うばかりです。

プレビュー画像:©Facebook/Habertürk©Twitter/NorthumberlandCC