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勇気をくれる

交通事故で重傷を負い授乳できない母 空腹で泣く乳児に意外な人物が母乳を与える

昔は乳母制度があったくらいですから、他人の赤ちゃんに母乳を与えることはよくあることでした。でも、今ではなかなか考えられないことです。

イスラエルの都市エルサレムにあるハダサ・クリニックでは、あるユダヤ人女性が重傷を負ったパレスチナ人の母親の代わりに授乳をして、赤ちゃんを救ったことが話題となりました。この女性の行為が多くの人を驚かせ、感動を呼んだ背景には、イスラエルとパレスチナの現在も続く激しい紛争の歴史があります。

Grafitti en la Barrera israelí de Cisjordania - Lado palestino

発端となったのは交通事故でした。エルサレムでパレスチナ人の家族5人を乗せた車がトラックと衝突する事故が起きました。家族は全員が負傷。その中に4カ月前に出産した母親がいました。母親は重傷で、母乳を与えることができません。空腹の赤ちゃんは母乳で育ってきたため、哺乳瓶のミルクを拒否して大声で泣き続けています。家族も病院のスタッフも赤ちゃんの栄養状態を心配し、医師らは点滴で栄養を与えることも考えていました。

そのとき、ユダヤ人の看護師ヤエル・コーエンが自分が母親の代わりに授乳することを申し出ます。ヤエルは1年前に子どもを産んでおり、今も授乳中だったのです。母親は意識不明だったため、ヤエルは赤ちゃんの叔母に相談し、母乳を与える承諾を得ます。

ヤエルはこう語っています「母親として赤ちゃんが苦しんでいるのを見て胸が痛みました。お腹がすいていて、お母さんもそばにおらず、唯一落ち着けるものも手に入らないなんて」

彼女が母乳を与えると、赤ちゃんは急に静かになり、夢中でおっぱいを飲みはじめます。やがて、ヤエルは日に何度も授乳するようになり、赤ちゃんは満足して満腹のまま眠りにつくようになったそうです。

「お腹が空いて何時間も泣いていた赤ちゃんが、やっとおっぱいを飲んでくれたときには心底ホッとしました」と叔母は言います。家族は、ユダヤ人看護師の温かい申し出に心から感謝しています。「自分の子ではない赤ちゃんに母乳を与えるなんて、誰にでもにできることではありません」

家族と病院のスタッフは、母親が一日も早く回復することを願っています。それまでの間、小さな赤ちゃんが愛情深い世話を受け、十分な栄養を与えられていることはどれほど心強いことでしょう。

また、ヤエルが示した無私の優しさが、イスラエルで暮らす隣人同士の関係改善の一歩に繋がることを願ってやみません。

プレビュー画像: ©Twitter/Rey McSriffWhig

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