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パーム油について考えさせられる5つの事実。知らなかったじゃすまされない?

昨年、イギリスで放送禁止になったあるテレビコマーシャルが話題になりました。パーム油の問題を指摘したコマーシャルは「内容が政治的すぎる」として放送禁止になったのです。しかし、ソーシャルメディアなどでコマーシャルの内容が拡散され、イギリス国内だけでなく世界中で大きな反応を呼びました。

コマーシャルを発注したのは、イギリスの大手食品会社アイスランド。同社は2018年末までに、自社品でのパーム油の使用を中止しています。なぜそこまで?これからご紹介する5つのパーム油に関する情報は、問題の複雑さの一端を伝えてくれるはずです。

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1. パーム油は森を破壊し、多くの動物から住処を奪っている

アブラヤシの果肉から生産されるパーム油は、現在世界でもっとも多く消費されている植物油脂です。食品から化粧品、洗剤、ペットフードなど幅広い用途に使うことができるため、近年急速に需要が拡大しています。特に、インドネシアとマレーシアではパーム油の生産が盛んで、アブラヤシのプランテーションを広げるために広大な熱帯雨林が次々に伐採され、燃やされているのです。

オランウータン、アジアゾウ、スマトラトラを始め、多くの野生動物が絶滅寸前に追いやられているだけでなく、膨大な量の温室効果ガスを大気中に放出し続けているのです。

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2. パーム油は体に悪い

パーム油は日本の家庭で料理に使われることはほとんどありませんが、実は日本人も平均で年間4kgものパーム油を摂取しています。かつて石鹸の材料として使われていたパーム油は、精製法が向上して食用油として世界中で消費されるようになり、ファストフードや惣菜の揚げ油、アイスクリームや菓子パン、フライドポテト、洋菓子、カップ麺などの多くの食品に使われています。

しかし、パーム油は血糖値を下げるインスリンの働きを阻害する作用があり、糖尿病の発症に深く結びついているほか、発がん作用も指摘されています。

3. パーム油の需要の拡大

用途の広いパーム油の需要は過去20年で急速に拡大し続けてきました。「トランス脂肪酸」が心臓病のリスクを高めるという研究結果が出ると、トランス脂肪酸を含まないヤシ油の消費が急増し、2000年以来、米国におけるパーム油の消費量は6倍に増加したほどです。また、化石資源に頼らないバイオマス発電の燃料としてもパーム油は注目されており、ますます需要が拡大しているのです。

パーム油は一年を通して生産でき、安価で安定供給が可能ですが、広大な熱帯雨林を燃やして膨大な二酸化炭素を排出し続けています。そのため、ヨーロッパやアメリカではパーム油はCO2削減効果の基準を満たさないとして使用に規制がかかっているのです。

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4. パーム油不買運動の弊害

熱帯雨林の急速な減少、森を燃やした際の煙による地域住民への健康被害、そして野生動物の絶滅を招くパーム油ですが、熱帯雨林の研究者たちはパーム油の不買運動に反対しています。生活のあらゆる場面で使用されているパーム油の代わりになる製品が今のところ存在しないためです。単位面積当たり最も効率よく油を産出するアブラヤシの代わりに、ココナッツや菜種を栽培するとしたら、パーム油よりもさらに多くの土地が必要となってしまうからです。

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5. 「良いパーム油」と「悪いパーム油」?

一方、熱帯雨林原生林の伐採禁止などのルールを定め、このルールに従ってパーム油を生産する農園を認証するという制度が始まっています。この認証パーム油(RSPO認証)、つまり「良いパーム油」の認知度は世界的にまだ低いものの、EU諸国では認証油以外は使用しないという国や企業も増えています。日本でも、84社が認証パーム油を導入していますが、まだまだ大手企業の参加には至っていません。

もちろん認証制度は完璧ではありません。しかしこれからもパーム油を使い続けるためには、環境や社会への負荷の少ない方法で作られたパーム油を選ばなければならないでしょう。

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日常のあらゆる場面で使用されているのに、ほとんど知られていないパーム油の事実。まずは、私たちがパーム油のことを知ることが大切です。

話題になったコマーシャルはこちらからご覧いただけます: