「反出生主義」両親を訴えたインドの27歳の男性

「反出生主義」という言葉を聞いたことがありますか?「生まれてこなければよかった」「人間は子孫を残すべきではない」こうした哲学・倫理学的な考え方です。「反出生主義者」は、苦しみや悲しみが満ち、子どもの将来が保証されない世界に子どもを置くべきではないと主張しています。

戦争や気候変動、環境悪化などで粉々になった世界で、人類の未来に悲観的になった人々の間でこの「反出生主義」が注目を集めています。

子どもたちに残す世界を心配することは、確かに正当なことです。子どもを産まないという決断もまた個人に委ねられているでしょう。しかし、インドの27歳のラファエル・サミュエルは、さらに一歩進んでいます。彼は「同意なしに自分を生んだ」という理由で自分の両親を訴えようとしたのです。

ラファエル・サミュエルは、自分が生まれたことで自分の権利が侵害されたと主張しています。彼は現在最も有名な反出生主義論者の一人であり、インターネット上でしばしば自分の主張についてインタビューに答えたり、コメントしたりしています。家族を大切にするインドでは、彼の主張は批判を呼ぶものなので、彼は付けひげとサングラスという出で立ちでネット上に登場します。

彼は、自分は生まれてくることを選べなかったと主張します。人生は苦しみや悲しみを伴うものであり、勝手に産んだ親には何も借りがないことを強調しています。

自分がどれだけ真剣に信念を持っているかを示すために、彼は2019年2月に両親を相手に訴訟を起こし、象徴的な1ルピーの賠償を両親に要求しようとしました。

ラファエルの両親はともに弁護士ですが、息子の提訴計画については驚くほど冷静でした。彼の母親は「私たちが弁護士だとわかっているのに、両親を訴えようという息子の向こう見ずさには感心する」としたうえで、こう述べています。「どうすれば彼から出産の同意を得られたのか、彼が合理的な説明をしてくれれば、私は自分の非を認めましょう」

たしかに、生まれる前の子どもにどう同意を取るのか…一休さんの「屏風の虎」のような問答ですね。そんな両親とラファエルの親子関係は意外にも良好なのだそう。

結局、裁判所は反出生主義に対して理解を示さず、裁判は行われませんでした。しかし、ラファエルは、この訴訟によって反出生主義への注目を集めただけでも成功であったと考えているそうです。

生まれる前の子どもの同意が必要だという訴えはたしかに矛盾に満ちたもので、ラファエルもそんなことは百も承知でしょう(多分)。しかし、実際に「苦しみに耐えながら生きている人が多すぎるし、人類が絶滅した方が地球や動物ももっと幸せになれる。苦しむ人もいなくなる」という反出生主義に共感を持つ人は増えているようです。世界的に社会状況や地球環境が悪化していることも反出生主義への共感の広がりと無関係ではないでしょう。皆さんはどう思いますか?

 

プレビュー画像: ©Facebook/Dandelion Dumas

出典

timesofindia

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