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家族

「私を見てください」亡くなった高齢女性が遺した手紙に介護士は涙が止まらなかった

65歳以上の人口の割合が全人口の21%を占める超高齢社会に突入した現在、日本では約96万人(2021年調べ)の高齢者が老人ホームや養護施設で暮らしています。その多くは、家族からの訪問や連絡を心待ちにしています。しかし、残念ながら、多くの人が施設で暮らす家族と連絡を取ることができなくなったり、あるいは、取りたくなくなっているのが現状。

そのため、高齢者の多くは孤独な晩年を過ごし、悲しみや失望のなか亡くなっています。海外の介護施設で暮らすこの女性もそうだったようです。

介護士たちは、この女性はすっかり老衰して、ただ死を待っているのだと考えていました。時々、毒づくよう言葉をつぶやくだけで、もう認知機能は衰えていると考えていたのです。

Last station nursing home

しかし、彼女の死後、介護士たちが彼女の引き出しから見つけた一通の手紙が、すべてを変えました。介護士たちは、その手紙に書かれた故人の心の叫びを読み、涙を堪えることができませんでした。

「親愛なる介護士の皆さんへ

私を見るとき何が見えますか?
暗く、聡明でもない癖のある年寄りでしょうか。

うつろな瞳で何もないところをぼんやり見つめる。
食べ物を吐き出し、「せめて努力はしてください」と言われても答えもしない。
周囲への関心はもうない。
靴や手袋を何度もなくす。
頑固だけど、最後には風呂も食事も任せてくれる。

そうやって一日をただ無為に過ごすだけの小さな老婆。
そんなふうに思っているでしょう?

でも、もっとよく私を見て!
あなたが見ているものは「私」ではないのです。

私が誰なのか、教えてあげます。

Last station nursing home

私は両親と暮らす10歳の少女。
大好きな兄弟姉妹もいる。

私は翼を持つ16歳の少女。
真実の愛を見つけることを夢見ている。

私は20歳の花嫁。心はくるくる宙返りをしている。
これから一生続く約束をするのだから。

私は30歳。私を必要としてくれる大切な子どもたちがいる。
安心できる幸せな家庭がある。

私は40歳。子どもはどんどん成長するけれど、家族の絆は永遠に続くの。

私は50歳。子どもたちはもう家で暮らしていない。
夫と二人、それも幸せ。

私は60歳。赤ちゃんが膝の上に戻ってくる。
子どもたちや愛する人たちと再び一緒にここに座っている。

暗雲が立ち込める、夫が死んでしまった。
先のことを考えても目の前にあるのは恐怖だけ。
子どもたちは去ってしまった。自分の家庭があるものね。

私は過去を振り返り、どれだけ私が愛してきたかを考える。

私は今、老婆。自然とはなんと無慈悲なのだろう。
老いは毒のある冗談のように、私の中の人間を孤立させていく。
身体は衰え、強さと美しさは失われていく。
かつて心があった場所に今は冷たい石がある

でも、それにもかかわらず、少女はまだ生きている。
この廃墟の中でも、私は幸せな日々を覚えている。
この疲れた心にも、強い感情が何度も押し寄せる。
楽しかったこと、悲しかったこと。
頭の中で昔を思い、過去の愛情をめぐる旅をする。

人生はあまりにも短く、あまりにもあっけない。
永遠に続くものなどないのよね・・・そう私は受け入れる。

さあ、目を開けて、よく見てください。
あなたの前にいるのは、か弱く暗い年寄りではなく「私」!

20190331_mumflowers

すべての人には、その人だけの物語があります。年齢を重ねてきた人は、どんな人であっても山も谷もある波乱万丈な人生を送ってきたのです。

お年寄りは人生の先輩。長い道のりを乗り越えてきた、それだけで尊敬と賞賛に値します。そして、いつか誰もがこのような立場になる日が来ることを忘れずにいたいものです。

出典: Newsner
プレビュー画像:©Flickr/Ulrich Joho