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ジーンとくる話

目が見えず、耳も聴こえないオーストラリアン・シェパードの子犬が人と生きる術を学ぶ

オーストラリアン・シェパードという犬種をご存知でしょうか。聡明で人懐っこい性格に加え、その美しい毛並みで人気の高い犬種です。

しかし、人気の高さゆえに、この美しい牧羊犬からさらに魅力的な子犬を作ろうと「無秩序な交配」を行う悪質ブリーダーがいるのです。

「無秩序な交配」とは、解剖学や遺伝学などの知識に基づくことなく、高く売るためだけに人気種の純血を作り出そうとする無責任な繁殖です。世界的に問題になっていますが、特に日本では流行りの犬種の需要が高いため、こうした無秩序な交配が後を断たず、それがペットの遺伝子疾患の蔓延を引き起こしています。

オーストラリアン・シェパードで特に人気があるのは、「マールカラー」と呼ばれるマーブル模様のような濃淡のある美しい毛色の犬。この毛色を生み出すのが「マール遺伝子」。マール遺伝子があると、メラニン細胞が少なくなり、毛色や目の色が薄い部分が発生するのです。このマール遺伝子を持つ犬同士を掛け合わせると、先天的な眼や耳の発育異常を体するリスクが非常に高くなります。

メラニン細胞は目や耳の発達に重要な役割を果たすため、マール同士から生まれた子犬はメラニン欠乏症となりやすく、生まれつき目が見えなかったり、耳が聞こえなかったり、あるいは両方が同時に起こることもあるのです

米国テネシー州で生まれたオーストラリアン・シェパードの子犬「ウィブルス・マグー」はこうした無秩序な交配の結果生まれた子犬です。毛並みはほとんど真っ白、目は見えず、耳も聞こえません。

米国テネシー州ナッシュビル近郊の動物保護団体「Snooty Giggles」は、この子犬を里親経験の豊富なメアリージョー・ディロナルドに引き渡すことができました。メアリーは、この子犬が人間の家族と暮らすことができるように訓練しながら、愛情いっぱいに育てています。

ウィブルスは、目は見えず、耳も聞こえませんが、自分の本能に従って走り回る多動気味の子犬。ですが、この犬種の特徴である聡明さも併せ持っています。

ウィブルスはメアリージョーの家の中のことはもうすっかり把握しました。自分の水飲みボウル、バスケット、おもちゃ、ドアの位置などは正確に知っています。もちろん、ときには壁や家具にぶつかったり、頭を打ったりすることもあります。しかし、賢い彼は同じ失敗を繰り返すことはほとんどありません。

メアリージョーは触ることで指示を出し、ウィブルスを訓練しています。覚えのいいウィブルスは、どうすればご褒美のおやつをもらったり、たくさん撫でてもらえるのかをすぐに理解するそうです。今、彼はハーネスにリードをつけて歩くことを学んでいます。

ウィブルスは幸運にも、経験豊富で忍耐強い人のもとで訓練を受けることができました。将来、彼は間違いなく、愛情を注いでくれる家庭と幸せに暮らすことができるでしょう。

一方で、流行りの犬種を生み出すために、こうした遺伝子疾患が増えている現状は放置してはならない問題です。この問題は、私たち消費者にも責任の一端があります。これから犬を飼おうと考えている方は人気の犬種を選ぶことの危険性を理解し、きちんとしたブリーダーから犬を買うようにすべきです。また、行政の保健所や動物愛護団体で保護されている犬たちにもぜひ目を向けてみてください。私たちの選択が将来の犬たちの幸せにつながっているのです。

 

プレビュー画像: ©Facebook/Snooty Giggles Dog Rescue