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修造はコートで遊ぶ少年を叱ろうと思った しかし少年がラケットを握った瞬間ハッとした
修造チャレンジをご存知ですか?
元プロテニスプレイヤーの松岡修造さんが主催している、未来を担う日本のジュニア・若手選手を育成するプログラムのことです。年に3回行われ、20年以上も続くこのプログラムでは、テニスキッズたちは修造さんと一緒に強化合宿に参加したり、試合を行ったりと、直接あの熱血指導を受けることができるのです。(アツい!🔥)
修造チャレンジ
めっちゃ疲れたけど4日間良い練習をさせてもらいました!
手首痛めちゃったので少し休憩したいと思います😭
早くなおさなきゃ💦 pic.twitter.com/tsVPLV04yH— Ryota Ishii (@ryota323tennis) September 29, 2017
2001年の修造チャレンジには、一人の少年が参加していました。
修造さんがジュニアテニス選手権での試合を見て「可能性があるかもしれない」と見出し、招待状を送っていたのです。小学6年生だったその少年は、修造チャレンジの日程は修学旅行と重なっていたにもかかわらず、喜んで修造さんのもとへ来たと言います。
しかし実際に接してみて、修造さんは少し拍子抜けしたような気持ちになったかもしれません。
その少年、とりわけ闘志あふれるタイプでもなければ、体ががっしりしているというわけでもなく、シャイで自己表現が苦手なタイプな子だったのです。未来のスポーツ選手と呼ぶには、少し頼りなげに見えたことでしょう。
しかもその少年、不屈の闘争心を持って試合に望んでいると言うよりは、コートの上ではとても楽しそうで、まるで遊んでいるように見えたそうです。
修造さんと言えばそんなジュニア選手たちに対して、「負けて悔しくないのか!」「そんな中途半端ならやめた方がいいぞ!」などと言った言葉で、厳しいスパルタ指導をしているようなイメージがありますよね。
しかし修造さんがこの少年に対して行った指導法は、とても意外なものだったのです。
偶然にもうまく返せたように見える一球。しかし、僕にとっては何千球と練習したうちの一球だ。
松岡修造 pic.twitter.com/LXPINJhX2U— テニス上達法 (@tennis_master_5) August 4, 2020
修造さん、参加したジュニア選手たちの中で唯一、その少年だけは決して叱らなかったのです。
どうしてでしょう?闘争心に欠けているように見えた少年、むしろ一番に修造さんからのアツい喝を必要としていたように感じますが…
当時を振り返って、修造さんはこう語っています。
「(闘争心溢れる自分とは違い)彼はテニスを遊びとして捉えることからくる豊かな発想力があった。自分にはないものだし、それは彼のすごい才能だと思った。絶対に潰しちゃいけないと思った」
そう、修造さん、怒られることで萎縮し、少年の従来の持ち味である遊び心が活かせなくなってしまうことを危惧し、この少年に対してだけはゲキを飛ばさないということを心がけて指導していたのです。
そのように修造さんから注意深く指導を受けた少年。とは言え、もちろん合宿は厳しく、自分の不甲斐なさに涙を流してしまうシーンも多々ありました。しかしそれは、自ら自分の課題を発見したときの悔しさからくる涙。意味のない怯えで流されたものではなかったのです。
こうして修造チャレンジでひとまわりたくましくなった少年、どこへ行き着いたかと言うと…
世界の舞台です!
絶妙に意表を突くテクニック、縦横無尽にコートを駆け回り多彩な攻撃バリュエーションでクリエイティブに試合を作り上げる彼は、メキメキと頭角を現し始めます。
日本人男子史上最高ランクを更新し、知る人ぞ知る日本のトッププレイヤーへと成長したのです。
その名も、錦織圭。
今もなお、(190センチ前後が多い世界のテニス界では)あまりがっしりとした体つきではありませんし、闘志を剥き出しにするファイターではありません。しかし持ち前の想像力と遊び心から生み出される試合運びは、日本だけでなく世界のテニスファンもバッチリ魅了しています。
「ウィンブルドンで優勝」
錦織圭選手の子供の頃の夢ボーッと観てたらいきなり出てきてびっくりしたわ笑
来シーズンこそ‼️💪💪 pic.twitter.com/lukaG6Wgh1— _Kim_ (@_kk_kw) December 21, 2018
錦織選手は、「修造チャレンジに参加していなければ今の僕はいない」と述懐しています。
錦織選手の才能に関しては今さら語る間でもありませんが、錦織選手の才能を真っ先に見抜き、そしてそれに一番見合った指導法を率先して行った修造さんの先見の明は驚嘆に値します。テレビでは根性を前面に押し出すアツいキャラで知られている修造さんですが、本人曰く「根拠や理論に裏打ちされていない根性論が一番嫌い」だそうで、それぞれの子供に合った指導法を常に考えているのだそうです。選手生命を潰してしまう部活などが蔓延る日本のスポーツ界において、指導者のあるべき姿とは何なのかを深く考えさせられますね。
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