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トリビア

中欧諸国のクリスマスにやってくるこわーい怪物クランプス

日本ではクリスマスといえばサンタクロース。でも、ヨーロッパではサンタクロース以外にもさまざまな個性豊かなキャラクターが登場します。たとえば、ドイツで有名なのは聖ニコラウス。サンタクロースの起源とも言われる白髭の司教で、12月6日の聖ニコラウスの日に「良い子」にプレゼントを配ります。

その聖ニコラウスには、「悪い子」を杖で叩き、連れ去ろうとするこわ〜い相棒がいます。ヤギのような風貌で毛皮をまとい、するどい鉤爪をもつ不気味な怪物「クランプス」です。

この名前はドイツ語の「Krampen」に由来しており、「爪」と「死んだもの、枯れたもの」を同時に意味しています。ニコニコとお菓子を配る聖ニコラウスと共に、「悪い子」にお仕置きをする怪物が人々を脅かしながら街を練り歩く姿は恐ろしくもあり、シュールでもあります。

クランプスの起源はキリスト教よりもかなり古いと言われています。寒くて暗いヨーロッパの冬は、多くの人が飢えたり、凍えたりする厳しい季節でした。この時期には、特に悪魔や悪霊の力が強くなると信じられていることも、クランプスの伝説と無関係ではないでしょう。

16世紀後半の文献にニコラウスの補佐役としてクランプスが登場しており、修道院や学校でクランプスに扮した人物がニコラウスの訪問に同行するという伝統がこの頃から徐々に定着していったと考えられます。

ドイツのバイエルン州、オーストリアやスイス、チェコなど、クランプスの伝統が強く残る地域では、今も聖ニコラウスの日とその前夜(12月5日と6日)にクランプスラウフ(Krampuslauf=クランプスのパレード)が行われます。

パレードでは、未婚の男性たちが、悪魔のようなクランプスの姿に扮して街を練り歩きます。彼らは鐘のついた重い杖を持ち、大きな音を立てて通行人を怖がらせます。クランプスにいたずらをして棒で殴られる前に素早く逃げるという「肝試し」をする子もいれば、その姿に泣き出してしまう子もいます。

秋田の「なまはげ」とよく似ていますね。

このクランプスパレードは、今では地元のクリスマスの伝統行事から、人気の観光アトラクションになっており、毎年この時期にパレードを行う村に多くの観光客が訪れます。

たいていのクランプス(に扮した若者)は酔っ払っており、人々を追いかけ回すので、街は騒然。おかげで冬の寒さも、悪魔や悪霊たちもすべて退散してしまうのかもしれません。

クリスマスファンだけでなく、お祭り好きやホラーファンにも人気の高いイベントです。

 

プレビュー画像: ©Facebook/Falkirk Explored