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えらい

甲子園で優勝した智弁和歌山 しかし歓喜の輪を組まなかった理由に日本中が胸を熱くした

2021年8月29日。甲子園会場が湧いていました。

全国高校野球選手権の決勝戦。

智弁和歌山が、接戦を制し、優勝を掴んだのです。

智弁和歌山が優勝を飾るのは、春夏通算4度目のこと。

奇しくも、今回の決勝の相手は、兄弟校である智弁学園(奈良)。

同じ「智弁」対決であったことや、そしてコロナ後、2年ぶりに再開された甲子園であったこと、それに加え、引退したイチロー選手が昨年、智弁和歌山ナインを直接指導していたことなどもあり、話題に事欠かない大会でした。

(智弁和歌山ナインを指導するイチロー選手)

それだけに、大会が始まる前から、決勝の行方に注目していたなんて人も多いのではないでしょうか。

イチローも絶賛するナインだったことから、実力は十分。智弁和歌山が優勝を飾ったのは何の不思議でもないでしょう。

しかし、この智弁和歌山が世間を驚かせたのは、その実力だけではなかったのです。

試合終了後、普段は必ずそこにあるはずの光景が見られなかったことに、野球ファンであれば気づいたはずです。

そう…

恒例であるはずの、マウンドでの歓喜の輪が作られなかったのです。

(歓喜の輪)

優勝を決めた瞬間、エースの中西選手は、ガッツポーズを見せこそしましたが、そこに駆け寄ってきた捕手の渡部選手にホームベースの方を指差し、すぐに整列するように促したのです。

全国優勝を決めたエース、その喜びを爆発させたくて仕方なかったはずなのに、一体どうして…?

もちろん、コロナ禍であるため、「密」を避けるという意味合いもあったのかもしれません。しかしそれ以上に、試合前に監督としていた約束が、中西選手の胸の中にあったことが理由でした。

智弁和歌山の中谷監督は大会前、選手たちにこう言い聞かせていたのです。

「マウンドに集まるの、やめないか…?」

なぜなら、高校野球というのは本来、礼に始まり礼に終わるものだからです。たとえ勝利を収めたとしても、同じように努力してきた相手に相手に敬意を表して、その相手を待たせてマウンドで感情を爆発させるのをやめようと言ったのです。

喜びを噛み締めるのは、お礼を終えて、スタンドの応援にもお礼を述べた後で良いだろう…

その監督の考えは、選手たちにしっかりと伝わっていたのです。

野球の名門・智弁和歌山だけに、甲子園のマウンドで作られる歓喜の輪に憧れて、この学校の門を叩いた野球部員も多いはず。それでも、相手を敬い、自分の感情をコントロールした選手たちを見て、監督は「涙が出そうになった」と語っています。

いかがでしたか?

日本一の舞台に立っているとは言え、まだまだ心も体も完成されていない高校生たち。

コロナ禍で野球をやる中で、つらい、悔しい思いもたくさんしてきたであろうにもかかわらず、いや、だからこそ、相手に敬意を払うことができたのかもしれません。

智弁和歌山の選手たちは、こんなコロナ禍でも、野球を通して相手を思いやる心の大切さや美しさを日本中に示してくれました。未来を担う高校生たちの姿、とても頼もしく見えますね。

プレビュー画像:  / © Twitter/Hiro5Shi7_YouFu