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ジーンとくる話

母グマに捨てられ絶体絶命の子グマの前に現れたのは、大食いで知られたクマだった…子グマの運命に涙

「子グマを見たら絶対に近づいてはいけない。近くに必ず母グマがいる」こんな注意を耳にしたことはありませんか?クマは母性本能の強い動物です。子グマが可愛いからとうっかり近づこうものなら、母グマは「外敵」から我が子を守るため命がけで突進してきます。

クマ(ヒグマ)の子育ては母親だけの完全ワンオペ育児。冬ごもり中に出産&育児がスタートするため、父親グマが関わることは一切ありません。約1年半から2年半かけて子グマを養育し自然界で生きる術を教えるのです。

しかしながら厳しい自然界では全てのクマが成獣へと成長できるわけではありません。特にヒグマの場合、発情期のオスが子連れの母グマにつきまとい、子グマが殺されることもあるのです。また、稀に母グマによって子グマが育児放棄されることも。

米国、アラスカ州南部のカトマイ国立公園。関東平野に相当する広大な国立公園保護区には2000頭以上のヒグマが生息しており、それぞれのクマに個体番号や名前がつけられています。

2014年7月14日、同国立公園内のブルックス川周辺を一頭でさまよう1歳の子グマの姿がありました。子グマの母グマ(個体番号402番)は数日前から発情期のオスグマ(個体番号856番)に執拗につきまとわれていたことから、公園職員はおそらく例外的に早く発情期に入った母グマから育児放棄された可能性が高いと推測しました。

通常、子グマは母グマと一緒に夏を2回、または3回一緒に過ごしてから親離れします。この子グマはまだ独り立ちする準備もできないうちから母グマに捨てられてしまったのでした。

母グマと死別したり育児放棄された子グマが生き残る可能性はごくわずか。自然界で生き抜くための術を教えてくれる母グマの保護無しでは厳しい大自然を生き抜くことはできません。あと半年ほどで巣立ちも可能な年齢とはいえ、子グマは絶望的な状況にあったのです。

危険を察知してかしばらくは木の上で過ごしていた子グマですが、やがて空腹と喉の乾きに堪えかねて大地に降り、ブルックス川の岸辺をうろつきはじめます。

幸いにもオスグマに危害を加えられることはなかったものの、母に捨てられた子グマを取り巻く状況は依然として厳しいものであることに変りはありません。公園職員は子グマの身を案じるものの、ただ見守ることしかできませんでした。

しかし、母グマとの別れから1週間後…ブルック川から約16キロ離れた小川の河口で、公園職員は驚くべき光景を目撃します。

なんと例の子グマが別のクマの親子と行動を共にしているのです!同年の春に生まれた赤ちゃんグマを連れた母グマと親子と一緒に過ごしている姿はその後も頻繁に目撃され、どうやら子グマが新しい母グマに引き取られたことは明らかでした。

養母となった母グマは個体番号435番、ホリー。同公園のクマを対象に毎年10月に開催される「ファット・ベア・ウィーク(最もおデブなクマコンテスト)」で2019年に優勝に輝いたあの激太りクマです。(栄光を勝ち取ったホリーの記事はこちらからご覧いただけます)

本来ヒグマは孤独を好み、子育ての時期を除き単独行動する生物であるため、我が子以外の他の子グマを引き取り育てるということは極めて稀です。場合によっては不用意に近く他の子グマに対し、母グマが攻撃を加える可能性もあります。同公園でもこれまでに孤児クマを引き取ったという前例はありませんでした。

しかし、ホリーはヒグマには珍しく見ず知らずの子グマを受け入れ、餌を与え親子同然に一緒に暮らし始めたのです。

母グマの性格によっては接近する「見知らぬ子グマ」を容赦無く攻撃し、死に至る大怪我を負うリスクも高いため、ホリー親子との出会いは子グマにとって大きな幸運でした。

子グマは2014年の冬ごもりをホリー親子と共に過ごし、2015年10月まで一緒に行動する姿が目撃されています。

子グマを受け入れ養母となったホリーの寛容な行動に専門家も驚いたものの、その理由は不明です。実はホリーは2009年に生んだ子グマを発情期のオスグマに殺されるという悲劇に見舞われています。もしかしたら、その辛い体験が今回の孤児を引き取るという行動に繋がったのかもしれません。

養母ホリーに甘え鼻をすり寄せる子グマ、心温まるクマ親子の様子を撮影した動画はこちらから視聴できます:

過酷な自然界で絶体絶命のピンチにあった子グマですが、心優しいお母さんグマに新たに出会うことができて何よりでした。ホリーとその子供たちが今後もアラスカの大自然の中、のびのびと暮らすことができますように!

プレビュー画像:©︎pinterest/sciliy.com

母グマに捨てられ絶体絶命の子グマの前に現れたのは、大食いで知られたクマだった…子グマの運命に涙