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悲嘆にくれる婚約者、亡くなった新郎と挙式

ケンダル・マーフィーは、婚約者のジェシカと結婚準備を進めていました。地元の消防署でボランティア活動をしていたケンダル。ある晩、自宅近くで発生した交通事故のため招集を受けます。しかし、普段と同じように始まった業務は悲劇的結末を迎えることになります。

事故現場に到着したケンダルは、反対車線側に停車し、道路を横断して、事故を起こした運転手のもとに向かおうとしました。しかし次の瞬間、スピードを出した車が…気付いたケンダルに避ける時間はありませんでした。即死でした。

ケンダルを轢いた車の運転手コルビー・ブレイク(26歳)も消防士であり、事故現場に急いで駆けつけた結果、起こった事故であったことが悲劇を一層浮き彫りにしました。しかし、本来ならばコルビーは車を運転すべきではありませんでした。というのも、後に地元警察の調査の結果、飲酒運転であったことが明らかになったのです。

深夜の電話に起こされたケンダルの婚約者ジェシカと両親は、訃報に愕然としました。

「電話のベルが聞こえて、父が『彼が亡くなった!』と言ったのを覚えています。母は悲鳴をあげ、私は訳が分からずに、姉と義理の兄が事故に遭ったんだと思っていました。当時、姉は臨月でいつ産気づいてもおかしくない状態でした。幸いにも、姉からはそうした悲報は受けませんでしたが、その後、信じたくもないような報せを聞くことになりました。両親が私の部屋に来て、最愛の人が亡くなったと告げました。私はその場に崩れ落ち、全身が麻痺したかのように動けなくなりました。急いでケンダルの両親の家に車を走らせ、そこで彼が本当に亡くなったという事実を知りました」とジェシカ。

ケンダルの死から最初の数ヶ月、ジェシカはまるで抜け殻のようでした。辛すぎる現実を受け入れ、思い描いてたケンダルとの未来に別れを告げることは簡単なことではありませんでした。それでも、前を向いて生きるためにジェシカはある決断をしました。それは、予定通り2018年9月29日に結婚式を行う、といものでした。

「私たちの結婚記念日になるはずだった2018年9月29日に何か特別なことをしたかったのです。悲しみにしっかり向かい合うことが救いとなることもあるのです。前もって準備していたウエディングドレスを着て写真を撮りました。私にとってとても感傷的な1日でしたが、家族と友人のサポートのおかげでユニークで心が慰められる式となりました」

結婚式をサポートしてくれたのはジェシカの家族や友人だけではありませんでした。ケンダルの家族もまた、結婚式のために特別なアイディアを考えてくれました。

「ケンダルが生きていれば、どんなに素晴らしい日になったことか」様々な感情が押し寄せ、ジェシカは涙が止まりませんでした。

結婚式の1日も終わりに近づき、一行は墓地に向かいました。最後にケンダルに花嫁姿を見せるためです。本来ならば二人の明るい門出となるはずの1日でした。ケンダルの墓石に突っ伏して泣き崩れてしまいます。

式に参列してくれた両家の家族と友人のおかげで、ジェシカは一つの区切りをつけることができました。最愛のパートナーを失ったジェシカ同様に、大切な息子を、家族を、友人を失った参列者たちにとっても、悲しみに向き合い心の整理をつける忘れられない1日となりました。

亡くなった相手との結婚式に違和感を抱く人もいるでしょう。しかしジェシカのケースでは、彼女だけでなく周囲の人々にとっても大きな慰めとなったことは事実です。参列者もケンダルの死に向かい合い、思い思いに別れを告げることで、気持ちを整理することができたのです。

喪失感が癒えるまでまだ時間はかかるかもしれませんが、ジェシカにとって9月28日は最愛の人の死を受け入れて生きていくための区切りとなる1日になりました。