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24歳の女性は後ろからの足音を聞き、すべてが闇になった。17年後彼女の体はその経験をあらわにする。

カーチャ・ロマノフスカヤは、美しく自信に満ち溢れた41歳の女性です。会う人や彼女の写真を見る人は、彼女がさぞ完璧な人生を送っているのだろうと思うかもしれません。しかしある日彼女は、フェイスブック上で自分の辛い過去の記憶を公開しました。

2000年5月24日、南部ロシアの小さな都市マイコープに住んでいたカーチャは、帰宅途中に見知らぬ男に声をかけられます。興味がなかったので、カーチャは男性を無視して通り過ぎました。

しかしマンションの建物に入った直後、何者かが彼女の跡をついてくる気配を感じます。

後ろを振り向くと、そこにはナイフを手に持った若い男が彼女に向かって走ってきていたのです。

次の2分間は、彼女の人生最悪の2分間だったといいます。カーチャは逃げようとしましたが、男に押さえつけられてしまいます。男は彼女に襲いかかり、腹部目掛けてナイフを何度も突き刺したのです。カーチャの叫び声を聞いたマンションの住民が駆け寄ってくると、男は逃げて行きました。

カーチャはすぐさま病院に運び込まれました。合計9箇所に刺し傷があり、腹部の傷は深く重傷でした。生死の境をさまよった彼女は一命を取り留めましたが、目を覚ましたとき、体を動かせないほどの痛みを感じたといいます。

その後、カーチャは事件のトラウマにさらに長い間苦しめられることになります。

Youtube/NIMB

カーチャは体だけでなく、心にも深い傷を負ってしまいました。彼女を襲った犯人は捕まらず、再び襲われるのではないかと恐怖に襲われる日々でした。悪夢やパニック症状に悩まされ、公共の場にはほとんど出れなくなりました。体の傷はやがて癒えて行きましたが、恐怖心は一向に去ることはありませんでした。

家族も友人たちも支えてくれましたが、友人たちからの「かわいそうに。綺麗なのに傷ができちゃって」という言葉を聞くのが何よりも心苦しかったといいます。

カーチャは恐怖を乗り越えるための方法を探していました。そこで意を決して、モスクワに引っ越すことにします。住む場所を変えただけではありません。カーチャは専門家たちの協力を得て、危険が迫った女性の安全を守るための電子機器の開発を始めたのです。

何年もの開発期間を経て、2016年にようやく一つの形になりました。「NIMB」と名付けられたリング型の端末です。緊急時、リングの横についている小さなボタンを押すことによって助けを呼ぶことができる仕組みになっています。この製品を生産するためにクラウドファンディングで支援を募ったところ、予想以上の反響を呼びました。

NIMBのチームはこのビデオで端末の説明とシステムがどのように働くのかを説明しています。(英語音声のみ)

カーチャは襲われた後の人生がどのようであったかをFacebookに綴っています。

「私は犯罪からの生存者です。被害者ではありません。傷のない自分をもはや想像することもできません。私は左手で書くことを学び、恐怖におののくことなく外出できるようになりました。家族や友人が自分にとってどれだけ大切かも学びました。知らない人からも血をもらいました。薬は私のために空輸され、看護師たちは一晩中寝ずにケアをしてくれました。何百人もの人が、私のためにできることをしてくれました。たった一人の普通の女の子のために」

カーチャの話は世界中の多くの人々の共感を得ています。中には自分の傷を「商売」にしていると批評する人たちもいますが、カーチャと同じような強い思いをする女性たちの不安を少しでも取り除けるのであれば世の中の為になるいい商売ということでしょう。