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【阪神淡路大震災】で自分を助けてくれた自衛官の背中を追いかけて自衛隊に入った青年 恩人と対面した時 口にした言葉に涙が止まらない

自衛隊。

日々私たちの安全を守ってくれる頼もしい存在ですが、自衛官の多くは駐屯地・基地にある「営内」と呼ばれる寮や、艦艇の中で暮らしているため、決して身近な存在とは言えないかもしれません。

一体、自衛隊に入る人は、どのようなきっかけで足を踏み入れるのでしょうか。今回紹介するのは、あるベテランの自衛官と、自衛隊に入ることを決意したある少年の感動の物語です。

1995年1月17日、西日本を未曾有の災害が襲いました。阪神・淡路大震災です。

壊滅的なダメージを受けた神戸の町を、傷を負った人々は助けを求めさまよっていました。当時、兵庫県内の駐屯地に所属していた若き自衛官・篠原光繁さんは、人々の命を救うため、すぐさま救助活動に乗り出したのです。

しかし、そのあまりの被害の大きさに、篠原さんは愕然とします。見つけ出せた人々の多くが、すでに息絶えた状態だったのです。

苦しみに喘ぎながらも、篠原さんは人々を探し続けました。3階建てのアパートの1階。2階部分は完全に潰れ、その上の3階部分も壁が崩れ、天井はゆがみ、いつ倒壊してもおかしくない、そんな状態のアパートの中から…

篠原さんは身の危険も顧みず、微かに聞こえた声だけを頼りに、まだ息をしている、9歳の男の子を救出したのです!

しかし、その日救出できた生存者は、男の子を含むたった2名だけでした。あまりの大きな災害の前に、自分の無力さを痛感し、しばらくは心に重いなにかがいつもつきまといました。

時は流れていきました。そして震災から13年後の月日が経った2008年のある日。

曹長となり、愛知県内に勤務していた篠原さんが、古巣である兵庫県の自衛隊を訪ねると、そこで、思いがけない出会いが待っていたのです。

「13年前…ありがとうございました」

なんということでしょう。

そこに立っていたのは、13年前に神戸で命を救った少年…安藤良平さんだったのです!

©️Twitter/Dongurihou

たくましい青年に成長していた良平さん。

あの日のことを忘れた瞬間はありません。瓦礫の中に閉じ込められ、「もう、自分の命は終わるのだ」…そう思いながら意識を失いましたが、次に目覚めた時には、避難所で父親に抱き抱えられていました。

小学校5年生の時に父親から、「あの時あなたを助けてくれたのは、自衛隊の人なんだよ」と聞かされた良平さん。その自衛官は、気を失っている良平さんを警官に引き渡すと、休憩も取らずに急いで次の現場へ向かっていった…そんなことも同時に聞きました。

その時に、良平さんの心には2つの想いが浮かんでいました。

自分の命を助けてくれた恩人に、いつか会いたい。そして自分も、人の命を助けられるような仕事がしたい…

会ったことのない命の恩人の背中を追いかけて、良平さんは必死に努力を重ね、13年の時を超え、ついに自衛官となったのです。自衛隊の訓練は、想像していたよりもずっと厳しかったそうです。しかし、憧れの恩人に近づきたい…そんな気持ちが、厳しい訓練すらも耐える力をくれたのです。

そして2008年1月16日午後。自衛官になった良平さんは、ついに探し続けていた恩人と再会することができたのです。敬礼を交わした2人。

「13年前は本当にありがとうございました。おかげで今は迷彩服を着て、救助する側になることができました」

良平さんが何度も伝えたかった言葉を口に出すと、篠原さんはこう言いました。

「立派な青年になってくれてうれしい。これからも頑張ってください」

長年憧れ続けた人からの激励を受け、良平さんはとても嬉しかったことでしょう。良平さん、会う前は「怖い人だったらどうしよう」と内心怯えていたそうですが、実際に会った篠原さんは、思い描いていた通りの優しい人で、それにもまた喜びを感じたそうです。

©️Twitter/Dongurihou

篠原さんもまた、13年前に自分が助けた2人のうちの1人と、まさかこんな形で再会するなど思ってもみませんでした。けれども、自分のことをずっと探してくれていたという事実を知り、とても嬉しかったと言います。

篠原さんはこうも言います。良平さんを助けたのは、奉仕という意味ではなく、あくまでも職務上のことで、自分は当然のことをしたまでなのだ、と。しかしその言葉からは、「どんなことがあっても人を助ける」という強い決意と職業倫理のようなものが感じられます。

いかがでしたか?

自分の命を救ってくれた恩人の背中を追いかけて、自衛官になった青年。彼もきっといつか、誰かの尊い命を救って、感謝されるような存在になるのかもしれません。命を救う連鎖はきっと、続いていくのです。

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プレビュー画像:  / © Twitter/ Dongurihou