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えらい

コート上で「コロナウイルス」と呼ばれたアジア系バスケット選手 しかし彼がTwitterに投稿した言葉に世界中が感動に包まれた

新型コロナウイルスの影響下で暮らす「ウィズコロナ」状況が長期化し、ニューノーマルな生活に適応してきたこの一年。でもウイルスは意外なところにも影を落としています。

ウイルスが引き起こすのは、じつは肺炎だけではないのです。


何気ない普段の日々に待っている感動の瞬間。世界中の心揺さぶられる感動の瞬間を集めました。(記事の続きはスクロール!)

 


あるプロバスケットボール選手がFacebookに投稿した文章が、バスケット界を揺るがしています。

「NBAで9年間プレーした経験ですら、コートの上で『コロナウイルス』と呼ばれることから僕を守ってはくれなかった」

その投稿をしたのは、ジェレミー・リン選手。

台湾にルーツを持つ、アジア系アメリカ人のバスケットボール選手です。アメリカ・プロバスケットボール(NBA)で一大センセーションを巻き起こしたアジア系選手の草分け的存在ですが、現在は下部リーグのGリーグでプレーしています。

リン選手はこの投稿で、コート上で他の選手から「コロナウイルス」と呼ばれ、人種差別的な扱いを受けたことを明かしたのです。

アメリカでは、トランプ前大統領が、新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼び煽り立てたことも影響してか、アジア系への差別感情が高まっていると言われており、米国バスケットボール界では珍しいアジア系であるリン選手も、その煽りを直に受けてしまったのでしょう。

リン選手は「もう黙って俯いているのはやめにしないか」という言葉と共に、人種差別には断固として立ち向かう姿勢をあらわにしました。

この投稿を受け、リン選手がデビューを飾ったNBAチームであるゴールデンステート・ウォリアーズのスティーブ・カー監督は、「力強い。アジア系アメリカ人コミュニティが直面する人種差別に対する感情を、よく代弁している」とリン選手をサポートする姿勢を見せました。そこから、複数の調査団がこの事件の真相を解明するため、調査を開始したのです。

しかし、調査が開始されてから間もなく、リン選手が自身のTwitterに投稿した言葉は、驚くべきものだったのです。

実際にその投稿をご覧ください。

「がっかりする人もいるかもしれないけど、(コロナウイルスと呼んできたプレーヤーの)名前を出すつもりはないし、誰かを辱めることもないよ。この状況で誰かを傷つけても何も良いことはないし、僕らの(アジア系アメリカ人の)コミュニティーが安全になるわけでも、根深い人種差別の問題が解決するわけでもないからね」

そう、リン選手は、犯人の名前を公にすることを拒んだのです。

このツイートは、ひょっとすると、調査団から聞き込みを受けた後だったのかもしれません。

リン選手の対応に、「犯人を見つけ出して、再犯を防いだ方が良かったのでは?」と一部の人は反発しました。

しかし、あくまでも今回の一件は、バスケットボール界にはまだまだ根強い人種差別が存在しているという問題提起であり、犯人を吊し上げて、制裁を加えるようなことはリン選手の望んだことではなかったのでしょう。

反発する人以上に、リン選手の思慮深さに共感する人は多く、「このような(アジア系が受ける差別の)体験を共有してくれてありがとう」「あなたの決断を尊重します」「あなたは私の息子たちのロールモデルだよ」といったコメントがTwitterに寄せられています。

いかがでしたか?

リン選手は、ハーバード大学卒のインテリとしても知られており、以前もアフリカ系選手から「アジア人にドレッドヘアは相応しくない」と半ば人種差別的な言葉を投げかけられたときも、実にスマートなやり方で反論しています。

アメリカバスケットボール界では数少ないアジアの選手であるだけに、アジアに対する差別や偏見と長年闘ってきたリン選手。

彼は人種差別について語ることを恐れたことは一度もありません。しかし同時に、このように誰も傷つけずに知的に問題解決を図る方法は、長いバスケットボール人生の中で培われた、リン選手なりの、闘い方だったのではないでしょうか?

プレビュー画像:  / © Twitter/AhmadNorMaulana