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300人以上が犠牲に?!銃弾も効果なし…世界最強の人食い巨大ワニ「ギュスターブ」

人間が動物に襲われて重大な被害を受ける「獣害事件」。日本史上最悪の獣害事件といえば、真っ先に思い浮かぶのが「三毛別羆事件」。7名が死亡、3名が重傷を負った痛ましい事件です。

一方、海外では28名の労働者が犠牲になった「ツァボの人食いライオン」、436人以上を殺害したと言われる「チャンパーワットの人食いトラ」のように、犠牲者数も桁違いに多く、三毛別羆事件同様に、事件から100年以上の歳月が経過してもなお語り継がれる害獣事件がいくつもあります。

しかし、おびただしい犠牲者を出している世界の獣害事件の中には、まだ解決済みではない、現在も進行形の事件もあります…

これまでに300人以上が犠牲になったと言われる、最強の人食いワニ「ギュスターブ」。そのあまりの殺傷被害数の多さから、伝説の殺戮ワニとして地元住民に恐れられている巨大な一頭のナイルワニの脅威の生態に迫ります。

生きる伝説!最強の人食いワニ「ギュスターブ

アフリカ、ブルンジ共和国のタンガニーカ湖およびルジジ川に生息する、巨大なナイルワニの雄・ギュスターブ。1990年代から現地に住みワニの研究を続けるフランス人野生生物生物学者パトリス・フェイにより「Gustave(ギュスターブ)」と命名されました。

ナイルワニは体格も大きく獰猛で、シマウマやヌーなどの大型哺乳類を襲うことでも有名です。

ナイルワニの体長は通常4メートルから大きくても5.5メートルほど。平均体重は550kg。ワニの中でもかなり大きな種類です。しかし、ギュスターブは全くもって別次元。

捕獲されていないため正確なサイズを測ることはできませんが、2002年に行われた専門家の調査によると、なんと推定6メートル超え、体重は1トンを超えると考えられています。

ワニなどの爬虫類は気温条件や栄養状態が十分であれば一生成長し続けることが可能なため、現在はさらに大きく成長している可能性があります。一部の専門家の中からは「体長は7.5メートルを超えている」という意見も出ています。

とにかく規格外の大きさを誇るギュスターブですが、体長から100歳超えかと思いきや、意外に?若く、2005年の調査当時で推定年齢60歳前後ということが判明。

通常、ワニは100歳に達する頃には歯が抜けたりするなどの損傷が目立つのですが、ギュスターブの歯は鋭くびっしり生え揃い、現役バリバリ。高齢ワニのお口事情とは程遠い状態だったのです。

2010年には歯の状態から推定68歳と発表されました。

あまりの巨体ぶりは他のワニが小さく見えるほど。

上空から撮影したこちらの写真から、他のワニ仲間と比較してギュスターブがいかに桁外れの大きさかがお分かりいただけるでしょう。(赤丸で印がついているのがギュスターブです)

続いて下の画像をご覧ください。

「遠近法が狂ってるんじゃないの?!」と突っ込みたくなる画像ですが、ご安心ください、狂ってなんていません。画像後方にいるのはギュスターブ。とにかくデカイんです。

「好物は人間?!」好んで人を襲う説

その巨体と獰猛な殺傷能力にものを言わせ、これまで300人以上を殺害してきたギュスターブ。初めて人間を襲ったのは1987年と言われています。

通常、ワニが人を積極的に襲うことは稀で「獲物を探している現場に偶然居合わせたから」「子供やテリトリーを守るため」などの理由がない限り、人を襲うことはまずありません。基本、ワニにとって人間は狩の対象外と考えられています。

しかし、これまでにギュスターブによって食い殺された住民は300人以上。300人という人数の中には他のワニによって捕食された犠牲者が含まれている可能性も考えられますが、それでも1頭のワニによる被害としては驚異的な数字です。

どう考えても人間を獲物と認定して積極的に襲っているとしか考えられません。

ギュスターブを長年追跡し研究している名付け親のパトリス・フェイによると、ギュスターブは川に沿って街を移動しながら漁師や洗濯・水浴びしている人を襲うとのこと。ある年の襲撃経路を調査したところ、移動した地域の間で17人が食べられていたことが判明しました。

また、住民を襲って殺害しても食べないケースも多々あることから、「ギュスターブは快楽のために人を殺している」という噂が地元では囁かれており、住民は恐れ慄いています。

(↓まるで怪獣のような形相で日光浴するギュスターブ。確かにこんなのに襲われたら、ひとたまりもありません)

ギュスターブが好んで人間を襲うようになった原因として、過去に起きた部族間の内戦と虐殺が挙げられます。

ツチ族とフツ族の間で武力衝突が起きた際、多くの戦死者の遺体をギュスターブが生息するルシジ川周辺の河川に遺棄したため、遺体を食べたギュスターブは人間の味を覚えてしまい、その結果、生きた人間を餌認定して好んで襲うようになった…と考えられています。

つまり、ギュスターブが人食いワニになったきっかけは内戦。他の野生動物に比べ捕食しやすく、栄養価の高いとされる人間を食べるようになったことから巨大化が進み、恐ろしい人食いワニと成り果てた…人間の都合によってギュスターブは怪物のように変貌してしまったという説もあります。

川辺の王者カバをも食い殺す凶暴性

通常、川辺の最強の動物はカバであり、カバのテリトリーに入ったワニがカバに襲われ殺されることはあってもワニがカバ(赤ちゃんカバも含む)を襲うことはまずありません。

凶暴で高い攻撃力を誇るカバの前ではワニは無力同然。我が物顔でコンビニ前にたむろするヤンキー先輩を恐れる下級生のように、ワニはカバに遠慮しながら川辺ライフを送っているのです。

しかし、最強の人食いワニ・ギュスターブの前では、この川辺のヒエラルキーなど無意味。

生息域を警備するレンジャーはギュスターブが成獣のカバを襲い食い殺す衝撃の現場を目撃しており、川辺の主・カバですら常にギュスターブを恐れ警戒しています。

ワニ仲間と寛ぐギュスターブの姿に緊張を走らせるカバたちの緊迫した様子をご覧ください。

銃弾が効かない?頑強なウロコと皮膚はまるで「防弾チョッキ」

犠牲者数があまりにも多いことから、これまでに幾度もギュスターブの捕獲や駆除(射殺)が試みられてきました。しかし、どれも失敗。

ギュスターブの体にはライフル銃や機関銃による弾痕がいくつもあるものの、いずれも致命傷を与えるには至らず、その頑強なウロコと硬い皮膚は銃弾が効かない「防弾チョッキ」と揶揄されるほど…銃器を持った人間ですら歯が立たない怪物ぶりを見せつけているのです。

ギュスターブの体に残る複数の弾痕。銃弾を何度も受けても生き延びる、生命力の強さと鎧のように硬い皮膚の強靭さを物語っています。

ついに映画のモデルに

モンスター級の逸話に事欠かないギュスターブ。2007年にはこの怪物ワニを題材にしたホラーパニック・アクション映画「カニングキラー・殺戮の沼」がアメリカで公開され、ギュスターブに大きな注目が集まりました。(ストーリー設定はフィクション、実話との共通点は「巨大ワニが人を襲う」と言う点だけ)

忽然と姿を消したギュスターブの現在は?

映画公開を機に世界の注目がより高まったギュスターブでしたが、公開翌年の2008年を最後にギュスターヴの目撃証言は忽然と途絶えます。そのため、ギュスターブは死んだと考えられていました。

しかし2015年6月、地元住人が水牛を川辺で引きずり捕食するギュスターブの姿を目撃。生存が確認されるものの、それ以降の目撃証言はありません。

ギュスターブに感する動画はこちらからご覧いただけます(英語音声のみ):

現在もギュスターブが生きているとすれば、推定80歳。ナイルワニの平均寿命は野生で45歳、飼育下では50〜60歳(条件が良ければ100年生きることも)であることからも、人食いワニとして多くの目撃談が寄せられていた90年代・2000年代の時点で既に野生の平均寿命を軽く超えていたことになります。もし今も生きていればかなりの御長寿ワニとなるでしょう。

現在、世界で最高齢とされるナイルワニは南アフリカのクロクワールド保護センターで暮らす「ヘンリー」121歳。かつては獰猛な人喰いワニとして恐れられていたヘンリーですが、1903年に捕らえられて以来、100年以上も人食いとは無縁の穏やかな余生を送っているようです。

(↓御年121歳のヘンリー。超高齢ワニとは思えないほど歯の状態も良好です)

飼育下とはいえ、ヘンリーの長寿を考慮すると、ギュスターブが現在も生存し、今後も長生きする可能性は十分に考えられます。

ナイルワニによる年間の犠牲者数は推定200名。もしかしたら、今もギュスターブは生息域のよどんだ川辺に潜み、目撃談はないものの、ギュスターブによる犠牲者は出ているのかもしれません…

プレビュー画像: ©︎pinterest/beekaydubya.blogspot.com