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176年の時を超え保存され続ける殺人鬼ディオゴ・アルヴェスの頭

ディオゴ・アルヴェスは1841年に死刑となりました。しかしその当時、人々の興味を強く引きつける存在であったアルヴェスはその死後も解剖資料として保存されることになったのでした。1836年から1839年の間に単独で述べ70人以上を殺害したリスボンの連続殺人犯の身体の一部は、現在も黄色がかった液体の中に浮かんでいます。

1810年にスペインで生まれたディオゴ・アルヴェスは、ポルトガルの首都リスボンで青春時代を過ごしました。地道に働くことでは生活費を賄うことができず、26歳の頃から強盗犯罪を働くようになります。アルヴェスの犯罪のにはしばしば地元の水道橋が使われました。全長7,5キロ、最大で31メートルの高さを誇るこのイベリア半島最大規模の水道橋は主に市場に出回る農作物の栽培のための水路として使われていました。アルヴェスは夕暮れに農民らが帰宅するのを待って、自宅に押し入り金目のものを強奪し、被害者を水道橋の欄干から投げ落として自殺に見せかけ殺害していたのです。

この方法でアルヴェスはわずか3年足らずで70名以上の命を奪いました。当時、アルヴェスの犠牲となった農民たちは下層階級に属しており、自殺の多発にもかかわらず、警察はさほど気にとめることなく、その裏に隠された真相に気づいてはいませんでした。しかし、連続殺人犯アルヴェスはやがて標的を農民から比較的裕福な富裕層に変え、邸宅を窃盗団とともに襲撃するようになりました。医師の自宅に押し入り、医師とその家族全員を殺害した一件が足がかりとなり、警察はようやくアルヴェスの犯罪の数々を知ったのでした。アルヴェスは死刑を言い渡され、1841年に絞首刑に処せられました。

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19世紀前半から半ばにかけて、当時の欧米では骨相学は流行の学説で大衆的な人気を博していました。その学説によると様々な異なる精神的特徴は脳の特定領域に起因しており、脳と頭蓋骨の形状には関連性があるというものでした。つまり、頭蓋骨の形状から人物の性格や素質を知ることができるとされていたのです。骨相学の信奉者たちは単純に頭蓋骨を計測することによって、その人物の犯罪傾向を探ることができると信じていました。そのため、とりわけ連続殺人犯ディオゴ・アルヴェスのような凶悪犯罪者の頭蓋骨と脳の形状から人物気質の洞察を望む声は高かったのです。こうした背景により、アルヴェスの頭部はガラス瓶にホルマリン漬けで保存されることになったのでした。

アルヴェスの頭部は176年の時を超え、現在もリスボンの医学部の棚に保管されています。展示されているので、切断された殺人犯の頭部を見学することも可能です。実際のところ骨相学は科学的根拠に欠ける疑似科学に過ぎず、骨相学者たちはこの31歳の調査対象から何の気質も見抜くことはできませんでした。逮捕後にこれまでの犯罪に対する良心の呵責について問われたアルヴェスはこう答えています。「一度だけ赤ん坊を黙らせるために手にかけたことがある。俺に殺される前に、その赤ん坊は俺に笑いかけたんだ。殺ってから自責の念に駆られたね」

多くの犠牲者の命を奪っておきながら、悔恨の思いに囚われたのは一度きりであったことも驚きですが、非情な殺人犯ではあったものの完全に善悪の判断力に欠いていたわけではなかったとも言えます。

それにしても、一体どうしたらこのような恐ろしい悪事を働くことができるのでしょうか? アルヴェスの事件に限らず、現在も私たちを戦慄させる凶悪犯罪は世界中で後を絶ちません。犯罪者の様々なプロフィールを蓄積する実証する犯罪学・犯罪心理学など、現在も研究は続けられています。人間がなぜ陰惨な凶悪犯罪を遂げることができるのか、その答えは医学部の棚の瓶の中からは見つからないということだけは明らかなようです。