ちえとくをフォローする

ジーンとくる話

ハワイの砂浜に生き埋めにされた犬「レイアロハ」

ハワイといえば、燦々と太陽の光を受けて輝く白い砂浜とエメラルドグリーンの海。ハワイの夏のビーチはまさに楽園です。

しかし、2019年夏にハワイ、オワフ島のビーチで動物保護団体「ポウズ・オブ・ハワイ(PAWS of Hawaii)」のスタッフが目にした光景は楽園とはほど遠い、残酷なものでした。

そこにいたのは砂の中から顔だけを出したメス犬。生きたまま埋められていた犬には、全身に殴られた跡があり、足には新しい切り傷がありました。さらに、日焼けした皮膚は赤く炎症をおこして、全身の毛がほぼ抜け落ち、完全な脱水状態だったと言います。

その日、ビーチの近隣住民が、飼い主と思われる男がマチェーテ(なたのような刃物)を持ち、犬を砂浜に埋めているのを目撃し、PAWSに通報しました。

スタッフは「飼い主がなぜこんなことをしたのか、まったく理解できない」と語っています。「飼い主の男性は、病気の犬に必要な治療を行うのではなく、命を奪うことで病気の苦しみから解放しようとしたのでしょうか」とも。

救助された犬はスタッフの手により動物病院に緊急搬送。皮膚のあちこちに傷があり、傷口が感染症を起こし悪臭を放っていましたが、幸い、一命はとりとめました。打撲や傷の様子から、その犬が日頃から虐待を受けていたことがわかりました。

PAWSではこの犬に「レイアロハ(ハワイの言葉で愛しい我が子)」と名前をつけ、保護施設に連れてかえりました。そこからレイアロハの治療と回復への長い道のりが始まりました。

PAWSはレイアロハの治療を行うため、Facebookを通じて寄付を呼びかけ、レイアロハが回復するまで世話をしてくれる人を募りました。この呼びかけは多くの人の注目を集め、多額の寄付が寄せられ、レイアロハの里親も見つかりました。

里親に名乗り出たのはアマンダという女性。娘たちと美容院に行っていたときに、偶然、レイアロハのニュースをFacebookで知ったといいます。「私の心は打ち砕かれ、レイアロハが私たちを必要としているとすぐに考えました」とアマンダ。

アマンダに引き取られたレイアロハは驚異的な回復力をみせ、虐待による傷や炎症はほとんど分からないほどに治癒しました。でも肉体的な回復と精神的な回復は別です。

幸い、レイアロハの大きな心の傷も、献身的なアマンダと家族の愛情とケアによってゆっくりではあるものの癒えてきているようです。アマンダによると、レイアロハは新しい環境に次第に慣れ、徐々に人への信頼を取り戻しつつあるとのこと。

「ある晩、友人が家に来たとき、レイアロハは何を食べているの?とそばに来て、テーブルの下に横になったんです。まだまだ完全な回復までは長い道のりですが、最悪の事態からは脱却できたと思います」とアマンダ。

アマンダはレイアロハの回復状況を記録するために、定期的にSNSに写真を投稿しています。今ではレイアロハはこんな素敵な笑顔を見せるようになっています。

レイアロハは幸い、助け出され、新しい家族を見つけることができましたが、他にも多くの犬たちが今も悲惨な環境で過ごしています。PAWSでは現在、レイアロハをモチーフにしたTシャツを販売しています。その収益は、今後、救出された犬たちの治療費にあてられるそうです。寄付のページではPAWSへの支援もできます。

かつてのレイアロハのような不幸な犬たちが一匹でも多く救われることを願うばかりです。

 

プレビュー画像: ©Facebook/PAWS of Hawaii