アーサー王物語のエピソードが現代にも響く

「アーサー王物語」をご存知ですか?

今から約700年前に書かれた、イギリスの騎士道物語。

イングランド王の子であるという出生を知らずに育ったアーサーが、王の死後、大聖堂に現れた石からエクスカリバーと呼ばれる剣を引き抜き、王位に就き活躍する話です。

読んだことはなくとも、何となくその中に出てくる「エクスカリバー」だったり「円卓の騎士」なんて単語は聞いたことがあるかもしれませんね。

日本人の私たちにとっては、遠い国、遠い昔のおとぎ話のように感じるアーサー王物語。

しかし最近になって、アーサー王物語のとあるエピソードが、驚くほど現在の日本にも通じるものがあると大きな話題を呼んでいます。

そのエピソードは、「ガウェインの結婚」。

ガウェインという名前も有名ですので、聞いたことがあるかもしれませんね。ガウェインはアーサー王の甥で、円卓の騎士(アーサー王の近臣)の中でもっとも忠義心が強いと言われた男です。

実際に「ガウェインの結婚」がどんな話なのかを見ていきましょう。

 

ある日ひとりの乙女が、アーサー王にこんな訴えをしてきました。

「自分の領地が邪悪な騎士に襲われた。助けてほしい」

正義感の強いアーサー王は、相棒のエクスカリバーを引っさげてただ一人、その邪悪な騎士の城へ乗り込んでいきました。

しかし城へ着くやいなや、アーサー王の心からは勇気がなくなって、へなへなとその場に倒れ込んでしまいました。それもそのはず。お城には魔法がかけられており、侵入者の勇気をくじくようになっていたのです。

そこに邪悪な騎士が登場。弱りきったアーサー王を、一瞬で捕虜にしてしまうのです。

捕まったアーサー王は「た、た、助けてください」とけっこう弱気。邪悪な騎士はこう答えます。

「命を助けてほしければ、1年以内にこの問いの答えを見つけるがいい。それができなければ、お前の王国は丸ごと私がいただこう」

そう言って邪悪な騎士が出した問いはこんなものでした。

「すべての女性がもっとも望むことは何か」

 

1年の猶予が与えられて解放されたアーサー王。しかし困り果てていました。「すべての女性のもっとも望むこと」…その答えがさっぱり見出せなかったのです。

答えを求めて、放浪の旅に出たアーサー王。旅をしながら、少女から老婆まで、ありとあらゆる女性に望むものは何なのかを聞いて回ります。しかし返ってくる答えときたら、「お金」「健康」「美貌」「恋人」などバラバラ…アーサー王は途方に暮れてしまいました。

答えが見出せないまま早くも1年が経ち、次の日には邪悪な騎士のもとに出向かなけれなばならない、その夜に、打ちひしがれたアーサー王は暗い森の中に入っていきました。するとそこに、目を背けたくなるような醜い老婆がたたずんでいたのです。

老婆は言います。

「お前の探している答えを、私は与えることができる」と。しかしそれは条件付きでした。老婆は答えを教える代わりに、若くて健康な騎士を自分の夫として欲しい、と言ったのです。

後がないアーサー王は、もう何でもいいから答えを教えてくれと言いました。

 

翌朝、邪悪な騎士の城へと戻ったアーサー王。

邪悪な騎士は言います。「答えを見つけたのか。言ってみよ」と。

アーサー王は、「お金」「健康」「美貌」「恋人」など、今まで自分が聞いてきた答えをひとしきり言ってみました。しかしそのどれにも、邪悪な騎士は首を横に降りました。

「フフフ。結局答えは分からなかったようだな。それでは、お前の王国をいただ…」

邪悪な騎士がそこまで言いかけた時、アーサー王はついに昨日、老婆に聞いた答えを口に出しました。

「自分の意志を持つこと」

…それこそが正解でした。

邪悪な騎士はアーサー王を解放し、久々に帰還したアーサー王。アーサー王を取り巻く円卓の騎士たちも大喜びでした。

しかしアーサー王だけは憂鬱です。そう、答えを教えてくれた老婆に、若くて健康な騎士を夫として差し出さなければならなかったからです。

アーサー王の暗いムードを察知したのが、忠義心の強いガウェインでした。

「王、あなたの悩みを私と分かち合ってください」ガウェインがそう言うと、すべての真実を打ち上げたアーサー王。するとガウェインはこう言うのです。

「心配なさらないで。ならば私がその老婆の夫となりましょう」

アーサー王はもちろん止めましたが、言い出したら聞かないのがガウェインという男。結局、ガウェインが老婆と結婚することになりました。

宮廷で結婚式をすませると、部屋には新郎新婦…つまりガウェインと老婆の2人きりになりました。

勢いで結婚すると言ってしまったものの、ガウェインはやっぱりちっとも幸せではありませんでした。すると老婆は尋ねます。

「我が夫よ。なぜあなたはそんなに不幸せそうなのか」

ガウェインは正直にこう答えます。

「一つ目に、あなたが老人であること。二つ目に、あなたが醜いこと。そして三つ目に、あなたの身分が低いことです」

それに対して老婆はこう答えます。

「年老いているということは、人より知恵に富んでいるということ。醜いということは、夫にとっては幸せです。他の男が言い寄ることを心配しなくてすむから。そして、人の価値は、身分の高い低いで決まるものではありません」

確かにそうかもしれないと思い、老婆の方を振り返ったガウェイン。しかし、なんということでしょう。そこにいたのは、醜い老婆などではなく、輝くばかりの美しい乙女だったのです。

「お前は何者だ!」ガウェインが言うと、花嫁はこう答えます。

「私は悪い魔法使いに魔法をかけられて、老婆の姿に変えられていたのです。二つの願い事が叶わなければ、元の姿に戻ることはできません。しかし今、一つ目の願い事…立派な騎士を夫にすると言う願いが叶えられたので、半日だけ元の姿でいることができるのです」

そして花嫁はこう言います。

「元の姿でいるのは、昼が良いですか、夜が良いですか。我が夫よ。お選びください」

ガウェインはこう答えました。

「では、その美しい姿は、夜の時間…私と一緒の時にだけ見せてほしい。その美貌を、他の男たちに見られたくないのだ」

すると花嫁はこう答えました。

「女というものは、他の殿方やレディとお付き合いするとき…昼の時間に美しい姿でいられたら、それはそれは幸せなのですよ」

それを聞いたガウェインは、しばらく考えて、こう答えます。

「そうか。それなら、そなたの好きにするが良い」

 

すると、花嫁は満面の笑みを浮かべました。

「今、私にかけられたすべての呪いは解けました」

 

どういうこと?という顔で花嫁を見つめるガウェイン。

「私はもう、昼も夜も、老婆の姿の戻ることはありません。二つ目の願いが今、叶ったのですから。その願い、もう分かったでしょう?」

花嫁はこう言いました。

「それは、自分の意志を持つこと」

そうして、花嫁とガウェインは結ばれたのでした。

めでたしめでたし。

中世の物語らしく、基本的には剣と魔法のファンタジーな世界観の物語。しかし、そのメッセージは、現代を生きる私たちに驚くほど深く響いてはこないでしょうか?

このエピソードに、多くのTwitterユーザーも強い反応を示しています。

Twitterの反応

いかがでしたか?

700年前の物語が、現代に生きる私たちにも響くものであるということに驚きを禁じえません。

このエピソードの他にも、アーサー王物語のエピソードの中には、驚くほど啓示的だったり示唆的なものが含まれています。ガウェインの結婚のエピソードは、中世騎士物語 (岩波文庫) に収録されていますので、興味のある方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

また、アーサー王物語のもっとも基本的なエピソードはアーサー王の死 (ちくま文庫―中世文学集)に収録されていますので、こちらもおすすめです。

 

プレビュー画像:  / © Pinterest/ Anna Deydra

出典

世界史講義録

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