ジーンとくる話
この母ゾウはその夜を生き抜けられないことを知っていた。彼女が赤ちゃんゾウとしたことが保護管理人の涙を誘った。
保護管理人たちはケニアの国立公園で展開されたある悲痛な場面を目撃します。真夜中、ゾウの群れに遭遇した彼らは、ある異変に気がつきました。
地上最大の動物アフリカゾウは通常、母系の群れを作り、普段はリーダーのメスとその妹や娘、孫などからなる十数頭の群れで暮らしています。象の寿命は人間とほぼ同じ長さ。また、人間と同じくらい強い精神的なつながりを持っているといわれています。
サバとデイビッドの2人はその日、「シェリー」と呼ばれるメスの象を他の象が心配そうに囲んでいるのを目撃しました。
「様子がおかしいわ、デイビッド。今にも倒れそう」
「そうですね、明らかに調子が悪そうです」
シェリーの一家は、彼女の異変に気付いていたのです。
「倒れたわ」
力なく地面に座り込んでしまったシェリーは、病気のため最期の時を迎えようとしていたのです。傍らには、まだ幼い赤ちゃん象の「ソクラティ」がいます。
シェリーが自らの最期を悟りながらも、懸命に体を起こしていようとする様子を見てサバは言います。
「赤ちゃんゾウのためにどうにか生きようとしているんだと思う。赤ちゃんのことが心配で、死に切れないでいるんです。人間と同じです」
また、ソクラティも母の体を起こそうとするような素振りを見せていました。
「ゾウたちにも死の概念があるんです」サバが説明します。
やがてそのときがやってきました。力尽きたシェリーが静かに頭を地面に下し、やがて動かなくなります。
そのとき、小さなソクラティが鼻を伸ばして母を抱きしめました。
ソクラティが母を抱きしめようとしている姿を捉えた動画がこちらです。(英語音声のみ)
赤ちゃん象は母を抱きしめたまま、その場を離れようとはしなかったそうです。サバとデイビッドは一晩中シェリーとソクラティを見守り続けました。
動物の親子の強く絆に美しい胸が熱くなりました。この赤ちゃんゾウが群れの中で無事に成長し、幸せに生きてくれることを願うばかりです。
