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スタジアムで映し出されたサッカードイツ代表の敗退に涙する女の子に 誹謗中傷が投げつけられた しかしその後の展開は誰もが予想しなかった
昨年より続くコロナウイルスの影響で1年延期して開催されている今年のサッカーヨーロッパ選手権(ユーロ2020)。サッカー好きの方であれば、ニュースでのハイライトを見るだけでも、多くのスタジアムで1年半ぶりに認めらえた有観客試合のもと、自国の代表選手を応援する多くの熱狂的サポーターの姿を目にしたのではないでしょうか。
🇩🇰デンマークvsベルギー🇧🇪
エリクセンが倒れた時間に試合を止めスタジアム全体で拍手のエールを送る👏
サッカーて素晴らしい😢
デンマークの気迫がすごい
スタジアムの観客の数もすごい🤗#ユーロ2020 pic.twitter.com/fpQdxbGAIw— 🔴⚫ゆきにログ x CONSADOLE NAVI【CSNV】🦉⚽🌍 (@YNFC27) June 17, 2021
そんな中、先月6月末に開催された準々決勝イングランド対ドイツ戦である出来事が起こったのです。
ドイツ代表の敗退に涙する少女がスタジアムスクリーンに映し出される
地元ロンドンで開催されたこの試合では、対ドイツに2-0とイングランドがリード。後半終了間際は、勝利を確信したイングランドファンで湧き上がっていました。
そんな時、スタジアムのライブカメラからスクリーンに映し出されたのは、ドイツ代表の敗退に打ちひしがれ涙する一人のドイツサポーターの少女の姿でした。
通常であれば、応援するチームの敗退に涙するというエモーショナルなシーンであったはずが、あろうことかこの姿に対し、イングランドサポーターと思われる人々から、SNS上で少女を嘲笑うかのような辛辣な言葉が投げつけられてしまったのです。
A few disgusting tweets on that crying German Girl by England fans-#ENGvsGER #EnglandVsGermany #Wembley #Southgate #Football pic.twitter.com/7laQNsUZQJ
— Avi bhau (@Avii02379630) June 30, 2021
「泣いているドイツの女の子に対し、イングランドファンの不愉快なツイート」
そこには「もっと泣け」や「誰も泣いても同情なんてしない」、「これが面白くない奴はつまらない奴」など、泣いて悲しむ姿を喜ぶような悪意の込められた投稿が数多く見受けられました。
多くのイングランドサポーターが反発
この一部のイングランドサポーターの悪意に対し、多くの人が反発。ネット上で「非常に不愉快で恥ずかしい」「リスペクトに欠ける」などと反発する声が上がりました。
To the English supporters at Wembley who booed the German national anthem, sang inappropriate songs, laughed at a clip of a young German girl crying.
Hopefully they aren’t the norm but I reserve judgment on that – the world now know just how ignorant you all are! https://t.co/qhCuybqGgn
— Andre Fairweather (@Fairweather_1) June 30, 2021
「ウェンブリーでドイツの国歌にブーイングし、不適切な歌を歌い、ドイツの女の子が泣いている映像を見て笑っていたイングランドのサポーターたちへ。
はっきりそうとは言えないけど、こういうサポーターが一般的でないと願いたいものだ。あなたたちがどれだけ無知なのか世界中に知らしめたよ!」
Very disgusting and disgrace for 40,000 English fans making fun of 7 years old German girl crying her eyes out on the big screen in Wembley.
Lack of class, respect and humour.
Nothing out love ❤️ for this girl. pic.twitter.com/jmRouim6WO
— James (@MathewJ94996660) June 30, 2021
「ウェンブリーのスクリーンに映し出された7歳のドイツ人少女が泣いているのを40,000人のイングランドのファンが馬鹿にしていたのは非常に不愉快で恥ずかしい。気品も敬意もユーモアもあったもんじゃない」
そして、この事態に著名な元サッカー選手たちも反発。元イングランド代表のスタン・コリモア氏はTwitterで「言うまでもない」とし、チビナチなどと少女を揶揄し、心ない言動をするファンたちを非難しました。
No words necessary. pic.twitter.com/8qF4BtJelV
— Stan Collymore (@StanCollymore) June 30, 2021
また、元サッカー選手のゲーリー・リネカー氏も、暴走するイングランドファンの行動に理解ができないとリプライでその怒りを表しています。
Absolutely disgusting. Sickening xenophobia.
— Gary Lineker 💙 (@GaryLineker) June 30, 2021
「全くもって不愉快。病的なまでに排他主義」
ネット上に溢れる悪意に対し、一人の男性が立ち上がる
そんな中、イギリス・ウェールズのニューポートに住むジョエル・ヒューズさんはソーシャルメディア上でこの事態を目の当たりにし、ある行動に出たのです。それは、ネット上での悪意・差別の矛先になってしまった少女に対し、寄付を集めて彼女を笑顔にするプレゼントをすることでした。ヒューズさんはクラウドファンディングサイト、ジャストギビングでキャンペーンを立ち上げ、人々に少女への寄付を呼びかけたのです。
イギリスにもいいところはある「善意の証」としての寄付
ジョエルさんはBBCのインタビューで、ネット上で多く見られた少女に対する辛辣な投稿を目にし、「もうたくさんだ」と感じたと言い、「最近のイギリスが不寛容で排他的な考え方を持つ人が増えてしまったと感じている」と答えています。そのため、この寄付活動は少女のためだけでなく、「ソーシャルメディア上での誹謗中傷に警鐘を鳴らすため」とし、イギリスにもいいところがあるという事を示す善意の証としての活動であると語っています。寄付を呼び掛けた際、ジェエルさんと同じようにここ数年ネット上で見られる多くの誹謗中傷に辟易しているという人が共感してくれたとのこと。
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その結果、当初500ポンド(約7万6000円)だった目標金額に対し、最終的に寄付は3万6170ポンド(約551万円)もの金額に。寄付金については、少女の家族から「多くの人々の優しさが最終的に良い結果をもたらしてくれた」と感謝の言葉と共に、全額をユニセフに寄付して欲しいと連絡があったそうです。ジョエルさんは、寄付をしてくれた人に感謝するとともに、この少女と家族の優しさ、寛大さに心より感謝しているとのこと。
インターネットやSNSに蔓延るの悪意に対し、善意で対抗したジョエルさんの行動と温かい心、すばらしいですね。優しさの連鎖がもたらす力の大きさを改めて感じます。
プレビュー画像:©︎Twitter/StanCollymore
