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アンビリーバボー

62年の時を経て、DNA鑑定で9歳少女殺人事件が解決

自分の父親が残虐な犯罪者であることを大人になってから知るのはどんな気持ちでしょう。アメリカでは、そんな悲惨な体験をした女性がいました。

事の発端は1959年のある金曜日の午後。ワシントン州スポケーンに住む9歳の少女キャンディス・ロジャース(愛称キャンディ)はいつものように学校を終えて帰宅しました。キャンディは愛犬と遊び、クッキーを食べ、いつものように外に出かけます。彼女はキャンプファイヤーガールズという青少年育成組織の一員で、近所を回ってキャンプファイヤーミントと呼ばれるお菓子を販売していたのです。

暗くなる前にキャンディは家に戻るはずでした。しかし、彼女は帰ってきません。心配になった祖父と母親、友達や近所の人たちが町中を探し歩きました。

その後、通報を受けた警察も捜索に加わりました。午後9時ごろ、キャンディが売っていたミントの箱が道路に散らばっているのが発見されました。

それから16日間、海兵隊、空軍、警察、特殊部隊、ボーイスカウト、地元住民など何千人もの人々が必死になって行方不明の少女を探しました。

失踪から約2週間後、キャンディの家から10キロほど離れた森の中で、狩りをしていた2人が女の子用の靴という新たな手がかりを見つけました。翌日、捜索隊はその近くでキャンディの無残な遺体を発見しました。

キャンディは性的暴行を受け、服で首を絞められていました。この残虐な事件はスポケーンの人々を震撼させました。人々の間で、9歳の少女を殺した犯人に対する激しい怒りの声があがり、何百もの情報が寄せられましたが、犯人につながる手がかりはありませんでした。

この事件の捜査にあたったザック・ストームエント巡査部長はこう語っています。「この事件は、未解決の刑事事件のエベレストと言われつづけてきました。決して乗り越えられない事件ですが、同時に誰もが忘れることができない事件でもありました」

しかし、事件から40年以上経った2000年代初頭、DNA鑑定によって事件は大きく前進します。法医学者が保管されていたキャンディの衣服から精液サンプルを分離することができたのです。

そして、さらに時を経た2021年に、思いがけず真実が明らかになったのです。2021年末にスポケーン警察は記者会見を開き、62年前に幼いキャンディを殺した犯人(容疑者)が判明したと発表しました。

容疑者と特定されたのはジョン・レイ・ホフ(当時20歳)。しかし、彼は31歳の時に妻と娘を残して自殺していたため、有罪にはなりませんでした。

この発見は、昔ながらの地道な捜査とDNA鑑定の両方があって初めて可能になりました。重要な手がかりとなったのはジョンの犯罪歴でした。彼はスポケーンで育ち、10代の頃に軽犯罪を犯していました。キャンディが殺された2年後の1961年、ジョンが同じように女性を襲っていたことを警察は地道な捜査で割り出したのです。そのときもジョンは女性の服を脱がせ、首を絞めようとしましたが、女性は逃走。この事件でジョンは有罪判決を受け、6ヶ月間の獄中生活を送っていました。

捜査対象として浮上したものの、ジョンはもう生きていません。そこで、法医学チームはジョンの娘にDNAサンプルを提供してもらえないかと相談しました。娘はサンプル提供に同意。DNAプロファイルの解析の結果、キャンディの衣服の精液サンプルと高い一致率が示されたのです。この結果を受けて、法医学チームは墓地に土葬されていたジョンの遺体を発掘し、遺体からDNAを検出しました。遺体から採取されたDNAから、彼がキャンディを殺害したことに疑いの余地がないことが確認されました。

ストームエント巡査部長は、ジョンの家族にこの凶悪犯罪の犯人を伝えることは苦しいことだったと語っています。捜査に協力したジョン・ホフの娘キャシーは、父親の犯行を知って、信じられない気持ち、怒り、悲しみを感じたと語りました。奇しくも、父親が亡くなったとき、彼女はキャンディと同じ9歳でした。

「自分の家族の誰かがそんなことをするなんて本当に悲しいことです。私はずっと父が鬱病で自殺したのだと思っていました。でも、父は悪人だったのです。父はまっすぐな人間だと皆が信じていたけれど、そうではなかった…」

警察や法医学チームの執念とも言える長年の捜査、そして、すでに自殺していた犯人の娘の協力によって、62年もの年月を経てようやく事件は決着したのです。事件解決がキャンディちゃんとご遺族の心の安らぎになればと願うばかりです。

出典:insideedition

プレビュー画像: © Facebook / TheGatewaytoTrueCrime