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トリビア

牛乳パックに印刷された失踪者の写真が自分だと気づいた7歳の少女

米国では子どもの失踪問題が深刻な社会問題です。2020年のFBIの調査によると年間で36万5348件、毎日約2000人もの子どもたちが行方不明になっています。知らない人に誘拐されることもありますが、ほとんどの場合、身近な人が失踪の原因だと言われています。

GPSやSNSが普及する以前は、子どもの誘拐事件や失踪事件を解決するのは今よりもさらに困難でした。当局や失踪者の家族は、事件を人々に知ってもらおうと様々な方法を考えました。そのなかでも画期的だったのが、1980年代初頭に始まったミルクカートン広告。牛乳パックに行方不明の子供たちの写真を印刷するというシンプルかつ独創的なアイデアでした。

牛乳はほとんどの家庭で毎日手にする必需品。朝食のテーブルで、行方不明者の写真をじっくりと見ることができるのです。毎朝、目の前に提示される子どもたちの写真と説明は、とても印象的です。

米国では、1990年代末までに50億枚もの牛乳パック広告が印刷されました。大きな成果をあげたとは言えませんが、なかには誘拐された子ども自身が牛乳パックに自分の姿を見つけた珍しい成功例もあります。ボニー・ローマンという少女の事例です。

自分が誘拐されたことを知らなかったボニー

ボニー・ローマンはまだ3歳のときに、母親と継父によって父親のもとから連れ去られます。単独親権者であったボニーの父親は誘拐事件として警察に通報し、彼女の写真が牛乳パックの上に印刷されました。

母親と継父の元でボニーはサイパンやハワイなどを転々としましたが、両親が警察から逃げていることを彼女は知りませんでした。

ボニーは他の子どもたちのように外で遊ぶことを許されませんでした。幼稚園にも行かせてもらえませんでした。しかし、徐々に近所の子どもたちと一緒に遊ぶことは許されるようになりました。

どうして私の写真が牛乳にのっているの?

7歳のある日、ボニーは継父に連れられてコロラド州のスーパーマーケットに行きました。牛乳の入った棚の前で、彼女は突然、自分の写真を見つけます。

ボニーは字を習ったことがありませんでした。そのため、自分の写真の下に大きな文字で書かれた「MISSING(行方不明)」を読むことができませんでした。しかし、彼女は自分の写真に魅了され、継父にそのミルクを買ってほしいと頼みました。

継父は「誰にも見せないで」と言いながらも、牛乳パックを買い、パックの切り抜きをボニーにくれました。ボニーはその写真をおもちゃの袋に大切に入れていました。

ある日、彼女はおもちゃの入った袋を近所の友達の家に忘れてきてしまいます。そして、その親が写真を発見。写真に写っているのが行方不明者であることに気づき、警察に通報したのです。

こうしてボニー・ローマンは実の父親のもとに戻されました。しかし、長い年月を経ていたため、最初、父のことを忘れていました。ボニーは幼少期に何が起こったのかを理解するのにしばらくかかったそうです。

「私は知らない人に誘拐されたのではありません。私を愛してくれた人たちに誘拐されたのです」と後にボニーは語っています。

ボニーのケースは、牛乳パックに印刷された行方不明の子どもが生きて発見された非常にまれな例として知られています。他にも、このミルクカートン広告にヒントを得て、行方不明者を探すミュージックビデオを作ったミュージシャンもいます。

この牛乳パック広告での行方不明者捜索は1990年代末に廃止され、ラジオやインターネットを使ったAMBERアラートシステムに取って代わられました。

出典:unbelievablefacts
プレビュー画像:© Twitter/juli