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掃き溜めのように汚染された川をパラダイスに変えるインド人

インドは10億人以上の人が住む広大な国です。多種多様な人種と文化が存在するこの国は、深刻な汚水問題を抱えています。爆発的に増加した人口に汚水処理が追いつかず、未処理のまま垂れ流しになっている地域も多くあります。

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インド北西部パンジャーブ州を流れる全長160kmの川、カリ・ベイン。パンジャーブ州に多く住むシク教徒にとって聖なる川であったカリ・ベインには、あらゆる場所から汚水が流れ込み、ゴミの不法投棄も後を絶たず、強烈な汚臭を放っていました。また多くの支流は枯れ、農業にも深刻な影響を与えていました。

その状況に立ち向かったのが、現在56歳のバルビル・シン・シーチェワルでした。敬虔なシク教徒のバルビルは、今から18年ほど前に、この川の汚染問題に取り組み始めます。

カリ・ベインを蘇らせたいと、数人のボランティアの手を借りて川のゴミや藻を取り除き始めたのです。着衣のまま胸まで汚水に浸かって、素手でゴミ掃除を始めたバルビルでしたが、初めの数年は清掃をしても全く効果が上がりませんでした。清掃と同時に、これまで川に汚水を垂れ流しにしていた工場や近隣住民を説得しなければならなかったのです。

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近隣の24の村々を歩いて、川をなぜ清掃しなければならないか説いてまわったバルビル。彼の行動に共感し寄付する人も現れたことで、鍬やゴミ袋などの清掃に必要な道具を購入、ボランティアの数も増えていきました。各村から集まったボランティア30名で一斉に川底からゴミを鍬ですくい上げ、死んだ魚や動物、川面を埋め尽くす水草を処理していきます。

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通称「エコ・ババ」として地域で知られるようになったバルビルの行動は、近隣住民からだけでなく全インドの注目を浴びるようになります。そしてついにパンジャーブ州政府も動かします。州政府は現在、この地域で浄化槽に貯めた汚水を農業用水に再利用するという下水システムを構築中です。

エコ・ババとして近隣住民から尊敬を集めるバルビルは、現在はエコ・アドバイザーとして、地域の大学のゴミ選別装置開発プロジェクトに携わっています。

聖なる川カリ・ベインは、清掃活動開始から18年が経った今、川底からの湧き水が蘇り、水量が増え、枯れていた支流にも再び水が流れ始めています。ひとりの強い意志と行動力が、多くの人の心を動かすことで、環境破壊さえ食い止められるのです。