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ブダペストの柔道大会 日本人選手は負傷した選手へ歩み寄りそしてしたことに世界中が涙に包まれた
柔道と言えば、日本の国技であると同時に、今や世界中で普及している大人気スポーツ。たとえば、フランスなどではもはやその競技人口は日本のそれを上回っていると言われていますよね。
そんな柔道の2021年に行われた大会で、驚くべき光景が目撃され、インターネット上の注目を集めています。
その出来事が起きたのは、ハンガリー・ブダペストで行われていた世界選手権でした。
女子78キロ超級の決勝戦で火花を散らしていたのは、日本の朝比奈沙羅(あさひな さら)選手。現役の医大生でありながらも、柔道の次世代の担い手としても注目されている選手です。
朝比奈選手は、決勝戦で同じ日本人選手である冨田若春選手に勝利を収め、2大会ぶり2度目の頂点に立ちました。
しかし注目されたのは必ずしもその強さだけではありませんでした。
試合会場を去る際、朝比奈選手は驚くべき行為に出たのです。
実際にその画像をご覧ください!
世界柔道選手権2021
医大生でありながら金メダルを取った朝比奈沙羅選手🥇おめでとうと共にケガをした選手に対しての気配りがホントに武道の精神で天晴れ👏是非、医者になれるように頑張って欲しいですね‼️ちなみに解説してたのは中学の時の後輩で日本女子コーチの秋本啓之🇯🇵 pic.twitter.com/FVebOlfbKK— サブマリン (@sabumarin_gool) June 13, 2021
試合中に、膝を負傷してしまっていた相手の冨田選手。朝比奈選手は試合が終わると速やかに冨田選手の元へ近寄り、おぶって会場を去ったのです。
去り際に、畳に一礼することも忘れませんでした。
自分の勝利を喜ぶ前に、相手選手のことを心配し、敬意ある対応をしたこと…この感動的な光景は世界中の話題を呼び、朝比奈選手は一躍、世界の注目の的となったのです。
しかしこの行為は同時に、一部から批判にも晒されてしまいました。「メディカルチームや、コーチに任せるべきだったのではないか?」という声が挙がったのです。
しかしその批判は必ずしも的を射ているとは言えません。なぜなら、このように日本人同士が戦う場合は、公平性を担保するために、セコンド(コーチボックス)には 監督・コーチは入らないことになっており、すぐに助けに駆けつけることができないという状況だったためです。
また、コロナ禍も相まって、メディカルスタッフも非常に限られた人数しかスタンバイしていなかったようです。
冨田選手には恥ずかしい思いをさせるかもしれないが、一刻も早くチームドクターに送り届けてあげたい…そんな気持ちが上回ったに違いありません。
この「おんぶ」は完全に朝比奈選手の自己判断によるものでしたが、冨田選手は試合後、全日本柔道連盟を通じて「朝比奈選手にはとても感謝しています」とコメントを発表しています。そもそも朝比奈選手は医大生でもあります。医学に携わる者としても、怪我人を放っておくことはできなかったのでしょう。
“闘う医学生”朝比奈沙羅「結果で黙らせてやる」3年ぶり世界選手権制覇へhttps://t.co/N96RIkvBqR
医学生と柔道家の二足のわらじを履く。五輪代表補欠に選出されも、全日本柔道連盟の強化委員会では稽古不足の懸念などの厳しい声も出た。「これまでも逆境で成長してきた。『結果で黙らせてやる』#柔道 pic.twitter.com/1ItxkuhSKl— 柔道ジャーナル (@JudoJournal) June 12, 2021
国際的になるにつれ、その本来の精神性が薄らいでしまっているのではないかとも懸念されている柔道。しかし朝比奈選手の行為を見ると、柔道の本当の精神性というのは、こういった部分に宿るものなのかもしれないと感じます。
真の武の道とは、強さばかりを追い求めるものではなく、人格を磨き、道徳心を高め、礼節を尊重する心を鍛える道でもあるのですから。