スポーツ
【165cmで40kg過激な減量…生理は止まった】アスリートの過激な減量に警鐘を鳴らす新谷仁美選手の言葉にハッとさせられる
アスリートにとって栄養管理と体重管理は重要な課題。日々必要なカロリーや栄養素の摂取と消費バランスを把握するため、毎日同じ時間帯に体重を計測し体重変動から食事量を調整するアスリートも多いことでしょう。
激しい運動やスポーツをする上で、適切な栄養摂取は非常に重要です。栄養素とエネルギー摂取量が不足すると筋肉の減少や骨密度の低下などにより、体力が落ちたりケガをしやすくなったりします。
しかし、こうした栄養摂取の不足が引き起こす問題が明らかになっているにもかかわらず、一部の競技の世界では栄養摂取量を控え減量をすることによって更なる好成績を出すように強いられる風潮があるのも事実です。
「運ぶ体重が軽ければ軽いほど、より速く長時間走ることができる」という原理
とくに、女子の長距離ランナーは、「運ぶ体重が軽ければ軽いほど、より速く長時間走ることができる」という原理にのっとり、厳しい食事制限や体重管理を強いられることがよくあります。
よりよい成績を出すための過剰な減量がいかにアスリートの身体に影響をおよぼすのか、女子1万メートル、ハーフマラソンの日本記録を持つ陸上の新谷仁美選手は自身の経験をもとに警鐘を鳴らしています。
この時の結果があったから今の世界に戻って来れた。でも私にとっては消したい過去。間違った方法で臨み、記憶として強く残してしまった。アスリートとして本来あるべき姿ではなかった。こんな姿で臨む必要もなかった。お願いだから真似しないで!危険です。身長165cm/体重40kg/体脂肪3%/無月経 pic.twitter.com/xDzhhrVa5j
— 新谷 仁美 (@iam_hitominiiya) December 28, 2020
Twitterの画像は2013年開催の世界陸上モスクワ大会に出場した当時の新谷仁美選手。5位に入賞するという華々しい記録を残しますが、当時の体重の体重は身長165センチに対して、わずか40キロ。体脂肪3%という危険な数値でした。極度の体重低下と栄養不足により無月経、体を削りながら走り続けているも同然でした。
当時の自分を振り返り、「アスリートとして本来あるべき姿ではなかった。こんな姿で臨む必要もなかった。お願いだから真似しないで!危険です。」と新谷仁美選手はTwitterで訴えています、
走れる理由が”ベスト体重だから“や”軽い、細いから“と言う方がいますが間違ってる。
”重いから走れない“と耳にするけどなぜ別の理由が出ないのかが不思議だ。貧血や疲労、気づいてない怪我をしてたり、生活面(不眠症、食欲不足等)、女性なら生理からくる症状だってある。— 新谷 仁美 (@iam_hitominiiya) October 13, 2020
「体重が増えると走れない」プレッシャーをかけれらる選手たち
好成績を出すために、厳しい食事制限による減量を求められる女子アスリートたち。順天堂大女子陸上競技部監督の鯉川なつえスポーツ健康科学部准教授によると、女子の高校駅伝の強豪校ではグラウンドの片隅などで女子選手が順番に体重計に乗り、その数値を男性コーチがチェックする光景がよく見られるそうです。
「体重が増えると走れない」「減量すれば速く走れる」という目先の結果優先の短絡的な指導により、100g単位の体重の増減にも神経をすり減らし、追い詰められる選手たちも消して少なくはありません。
鯉川准教授によると、エネルギー不足からの摂食障害や3ヶ月以上月経が来ない無月経や、疲労骨折を招くリスクがあることを承知で減量を指示しているコーチ・指導者も多く、目先の結果優先の食事制限指導法は一部の競技界において根深い問題と言えるでしょう。
体重数字でしか判断されない場所にいる選手はその場所を去る(辞める)ことを推奨します。競技中に“食べるな、痩せろ“と言うのは競技をやめろと言ってるのと同じこと。スポーツじゃなくただの拷問です。
— 新谷 仁美 (@iam_hitominiiya) December 28, 2020
追い込むことは時には必要かもしれないけど、美化しないでほしい。
— 新谷 仁美 (@iam_hitominiiya) December 28, 2020
目標体重まで減量しないと大会に出場させない、など選手に圧力をかける指導法に対し、新谷仁美選手は「競技中に“食べるな、痩せろ“と言うのは競技をやめろと言ってるのと同じこと。スポーツじゃなくただの拷問」と切り捨てており、「追い込むことを美化しないで」と訴えています。
未成年の選手に対しても行われる厳しい食事制限、その結果、将来的に甚大な影響を及ぼすことも…
高校や大学の部活でもこうした厳しい減量のプレッシャー指導は堂々と行われており、ストレスから摂食障害に陥る例も珍しくはありません。
質問に答えて頂いてありがとうございます…!
私自身、高校の時には食べて吐こうしたり、2年前はその反動でプレッシャーやストレスで過食に近い症状に。今は何とか落ち着いていますが、また過食に戻るのが怖いです。体重を気にせず食事を楽しんで走れるように心も体も環境も整えていこうと思います。— 🙃 (@kihvctfd1500755) December 28, 2020
身体的にまだ成長段階である未成年の場合、過度の食事制限は摂食障害を引き起こすなど、今後の食への向き合い方にも甚大な影響を及ぼしかねません。
高校生の息子が 駅伝部で寮生活をしています。あまり結果がでず、
走れないのは絞れてないから
絞れ、白米を食べるなといわれてます。
でも、新谷さんのTwitterを見て
食べてもいいんだなぁと思いました。
ありがとうございます。
いつも応援しています。— ゆ (@eGheSFGWlsCb2mN) December 28, 2020
また、人間の骨量(骨密度)は20歳でピークを迎え上限が決まるため、未成年の時期に適切な食事や運動量で十分な骨量を蓄積できなければ更年期からの骨粗しょう症のリスクが高まると専門家は指摘しています。
鯉川准教授が2015年に全日本大学女子駅伝に出場した選手314人を対象に調査によると、体重制限をしたことがある選手は71%。月経が止まった経験のある選手は73%、栄養不足や無月経が原因の疲労骨折も45%が経験していました。無月経の症状は、将来の妊娠・出産などのライフイベントを考慮すると望ましいこととは言えません。
自分のカラダと心を大事にしてください。 pic.twitter.com/RfsYFyaJcP
— 新谷 仁美 (@iam_hitominiiya) December 15, 2020

「”競技をやめれば生理は来る” そんな機械的な都合のいい話ないわ!」と訴える新谷仁美選手。いかに指導者側が選手たちの無月経を軽んじる風潮が蔓延しているのかが伝わるツイートです。厳しい食事制限指導により、体に悪いと理解しつつも結果を出すことを優先してしまう選手がいることを自身の体験と重ねて注意喚起しています。
後悔はしてないけど間違った方法を選び、またそれを披露してしまったことは結果以上に悔やむ点でもある。経験でしか語れないけど、この方法は間違ってる。“軽ければ走れる”は間違いだ!
— 新谷 仁美 (@iam_hitominiiya) October 13, 2020
「軽ければ走れる」という方法を経験から間違いだったことを認め、栄養のある十分な食事を摂ること、炭水化物や肉を避けるなどの制限をしないよう呼びかけています。
良好中でも故障中でも関係なく栄養ある食事を摂ること。質も量もしっかり。
炭水化物やお肉を抜く必要は全くない。治るものも治らないし、治っても短い期間でまた怪我を繰り返すだけ。
他者に言われて自分を押し殺してまでやる必要はない。
食べるなと言われるのであればそれはもうスポーツではない。 pic.twitter.com/6TbiFQSvJd— 新谷 仁美 (@iam_hitominiiya) December 25, 2020
2014年に現役陸上選手を引退したものの、2018年に復帰。その後も日本記録を打ち立て、1万メートルで東京五輪代表に内定している新谷仁美選手。現在は食事制限による体重管理はせず、必要に応じて栄養士に相談して食事内容を調整しているそうです。
体重管理は普段全くしていません。走った感覚や動きに問題がなければそれがベストだと思っています。また試合前の練習量に合わせて食事量は変えません。変えるとしたら内容(質)です。栄養士の方に聞いて変えています。
— 新谷 仁美 (@iam_hitominiiya) December 28, 2020
「他者に言われて自分を押し殺してまでやる必要はない。食べるなと言われるのであればそれはもうスポーツではない」
「軽ければより速く走れる」という一部のアスリートへの指導に対して一石を投じた新谷仁美選手のツイート。
結果を出すための目的で、過酷な減量を強いられごく短期間に消費される選手としてではなく、1人の人間としての将来を見据えたアスリートの指導方法が今後より重要となるでしょう。
プレビュー画像: ©️twitter/新谷 仁美

