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えらい

全身にやけどを負いながら子供を救出した母親、15年越しに求婚される

アメリカ・ワシントン州ニューマンレイクに暮らす33歳のエンジェル・フィオリーニは、2016年10月28日の夜、まさかこの夜が彼女の人生を大きく変えることになるとは微塵も思うことなく、いつもと変わらずベッドに入りました。

眠りに落ちてから数時間後、エンジェルは息苦しさで咳き込みながら突如眠りから覚めました。焦げた匂いが充満しています。何かおかしいということを直感しました。ベッドから飛び出し、寝室を開けると、熱風を感じたと言います。「炎は寝室からは見えなかったけど、もうかなり熱かった。すぐにここから出なくてはならないと思いました」

籍こそ入れていなかったものの長年一緒に暮らすボーイフレンドのアーロンは、そのころ夜勤で不在にしていたため無事でした。しかしエンジェルは一人で家にいたわけではありません。2部屋に分かれて3人の子供達が眠っていたのです。

Facebook / Aaron Wiskey Fiorini

母親は2歳のロザリーと4歳のビニーが眠る部屋に走り、2人を両脇に抱え全速力で家の外に出ました。2人を屋外の安全な場所まで運び、後ろを振り返ると、我が家が炎に包まれていました。

「黒い煙が立ち上り、炎はあまりにも早く広がっていたので、長女を助けるために一体どうやって戻ればいいのか見当がつきませんでした。でも燃え上がる家で娘が焼けていくのを突っ立って見ているわけにはいきません。周囲には誰もおらず、その時何かできるのは私しかいませんでした。救助を待つという選択肢はありませんでした」

Facebook / Joanna Small

8歳の長女ジャンナの命を助けるため、エンジェルは自らの命を顧みず、煙と炎に包まれた家に駆け戻ったのです。「熱と煙で目を開けて入られませんでした。兵隊みたいに床を這って向かいました」煙と熱に視界を阻まれたエンジェルは、両手でドアや壁、家具などを触りながら、感覚を頼りに娘の部屋へ向かっていました。

ようやく娘の部屋にたどり着いたエンジェルは、娘をベッドから引きずり出し、自分の体で娘を覆いながら部屋を出て炎の中に飛び込んでいきました。後少しで燃え盛る家から脱出というとき、エンジェルは手足が炎に包まれ、皮膚が溶けていくのを感じたそうです。しかし痛みを感じる暇さえなく、エンジェルは全力で玄関のドアと思われる穴から自分と娘の体を引きずり出しました。数歩歩いたところで意識を失い倒れこみます。

Facebook / Fiorini Family Donation page

ちょうどその時、最初の消防隊が到着。エンジェルとジャンナを安全な場所まで移動させました。すぐにエンジェルは意識を取り戻し、自分の身に何が起こっているのか理解し始めました。「ジャンナと私の頭と腕からは、真っ黒になって溶けた皮膚が垂れ下がっていたのです」

緊急搬送された母子は、重い火傷を追っていましたが、母が体を張って守ったおかげで、娘のジャンナの火傷は母に比べれば軽いものですみました。体のほぼ半分に第3度熱傷を負ったエンジェルは想像を絶する痛みに襲われました。

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「目が覚め、動くことも喋ることもできなくてイライラしました。腕を動かして欲しいとか、喉が渇いたということを伝えられなくて腹が立ちました。伝えようとしても『アァァ』という声しか出てこないのです」

それだけではありませんでした。エンジェルは死の恐れのある細菌感染による肺血栓塞栓症も患っていたのです。しかしこの女性はこの難病も克服。数え切れないほどの皮膚の形成手術も耐え抜きました。

Facebook / Aaron Wiskey Fiorini

5週間が経過し、エンジェルはようやく退院し家族の元に戻りました。母親よりも火傷の程度が軽く、治りも早かった8歳の長女ジャンナは、2週間早く退院していました。家に戻ったものの、その数ヶ月間、まだ満足に動くことができないエンジェルを恋人のアーロンは献身的に介護しました。

あの恐ろしい10月の夜は、アーロンに一つの気づきをくれたと言います。あの夜、3人の子供達と恋人を一度に失うところだったアーロンは、人生がいかに喜びに溢れ時間がいかに有限であるかに気づいたのです。そしてあの夜以来、エンジェルはアーロンにとって単なる恋人ではなく、最愛の3人の子供の命を身を呈して救った偉大な英雄となったのです。一緒に暮らし始めてから15年の月日を経て、アーロンはエンジェルに永遠の誓いを立て、結婚を申し込みました。

Facebook / Angel Fiorini

今年7月、2人は結婚式を挙げ、永遠の絆で結ばれた夫婦となりました。「びっくりしたけどとても嬉しかったです。不幸と苦難を共に乗り越えたことで、アーロンは結婚したほうがいいって思ったみたいです。すごく感動的な日でした。結婚式は、結婚のお祝い、それから私自身と子供達の命が助かったことを祝福する日になりました」

Facebook / Angel Fiorini

あの宿命的な10月の夜、フィオリーニ家は家財道具一式を失いました。しかしそんな一家を支えたのは、夫婦の家族、友人、そして町の人々でした。トレーラーハウスが無料で貸し出され、地元の企業がお金を出し合い一家に車を寄付しました。さらに、インターネット上でも募金ページが作られ、フィオリーニ家は少しずつ生活を取り戻し始めています。

Facebook / Aaron Wiskey Fiorini

フィオリーニ一家にとって、2016年10月28日は一生忘れることのできない日となったでしょう。あの日を思い出し、怖い思いをすることもあるかもしれません。でも一家は今、家族みんなの命が助かり、一緒に人生を歩みだしていることの奇跡を感じながら生活しているそうです。