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超音波検査を行った医師に、胎児が助かる可能性は低いと告げられた。母親の心は大きく揺れる。
英国ウェールズのマエステッグに暮らすエイミー・プールは、第二子を妊娠したことを知って喜びました。しかし妊娠20週目の検診で、エコー写真に映し出したものに大きなショックを受けます。
胎児の鼻に大きなコブのようなものが発見されたのです。この時、エイミーには中絶を選ぶ道もありましたが、彼女はお腹に宿った命と向き合っていくと決意します。
そして2014年2月、エイミーはウェールズ国際病院で息子を出産しました。心の準備は出来ていたはずのエイミーでしたが、そのときショックを隠しきれなかったといいます。「看護師にオリーを渡されたとき、私は何も言えませんでした」
「とても小いのに、鼻の上にはゴルフボール大の膨らみがありました。親として何をするべきかわかりませんでした。だけど気づいたんです。私はただ息子を愛せばいいのだと」
その後、脳の膨らみは脳瘤(のうりゅう、脳ヘルニア)であることが判明します。オリーは頭蓋骨の一部に欠損があり、そこから脳の一部が飛び出していたのです。発症率はイギリスでは1万に1.7人と珍しい疾患で、症状は通常、後頭部に見られるそうです。オリーのようなケースは、非常に希なものだといいます。
オリーは、鼻に膨らみがある以外は、いたって健康で明るい元気な赤ちゃんでした。しかし体が育つにつれて鼻も膨らみも大きくなっていきました。息子の鼻を街中で人に笑われることも、ときには「生むべきではなかった」と言われることもありましたが、エイミーは心を痛めながらも息子や娘のために気丈に振る舞うように努めました。
オリーの無邪気に笑顔には、心配も悩みも吹き飛ばしてくれる力がありました。
無邪気に笑いかけてくる息子のオリーを守り、生涯愛すると誓ったエイミーでしたが、医師からある決断を迫られます。
大きくなりつづける鼻の膨らみは、オリーの健康上のリスクも大きくなっていることを意味していました。万が一オリーが転倒して鼻を強く打ち付けたりした場合、わずかな怪我でも、重症に至る危険せがあったため、大掛かりな手術を行う必要がありました。
そして2014年11月、バーミンガム小児病院で手術が行われました。頭蓋骨を切り開き、脳ヘルニアの原因となった穴を整形し、さらに鼻の脳組織を取り除き鼻道を再構築するという大手術でしたが、無事に成功します。オリーの頭部には痛々しいジグザグジグザグ状の大きな傷跡が残りました。
オリーに大きな傷みを伴うであろう治療を受けさせることを決断したエイミーでしたが、術中も術後もそれが正しい判断であったかどうか悩み続けていました。しかし、オリーは目覚めたとき、優しく母親に微笑みかけたそうです。「大丈夫だよ」とでも言うような穏やかな笑顔だったといいます。
その後、オリーは順調に回復します。手術の傷も癒え、現在も鼻は不自然な形状になっていすが、大きな心配はなくなりました。
「これから、いくつもの困難が待ち受けているかもしれません。でもオリーは頭が良く、面白くて、優しい子です。彼ならきっと大丈夫だと信じています。彼は私の可愛いピノキオです」
エイミーは、できるだけ多くの人々に、オリーの見た目が少し違う理由をしっかりと説明し、理解してもらえるようにしていきたいと語っています。将来、オリーが健康な子どもたちと同じよう、普通に暮らしていける社会を願っています。
