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えらい

男は13歳の女の子を地下室に閉じ込め乱暴した。17年後インターネットで被害者の姿を見たとき涙が止まらなかった

毎年3月8日は、国際女性デー。ドイツの社会主義者クララ・ツェトキンが、1910年にデンマークのコペンハーゲンで行なわれた国際社会主義者会議で提唱したことに端を発する、「女性の政治的自由と平等」のための記念日です。

今回紹介する女性、アリシア・コザキエヴィッチは、過酷な運命と闘った女性として、記憶に刻まれるでしょう。

アリシアはアメリカに住む、整った顔立ちの持ち主であることを除いては、ごく普通の少女でした。しかし2002年、13歳のアリシアの人生を一変させてしまう出来事が起こるのです。

アリシアは、兄から教わったネットサーフィンやゲームに熱中していました。その過程で、インターネット上で同い年くらいだと言う少年と知り合い、頻繁にやりとりを交わすようになります。
「いい友達ができたみたい…」
そう思って嬉しくなったアリシア。数ヶ月のやりとりののち、実際に会ってみることにしたのです。2002年の元旦のことでした。

元旦の家族の集まりをこっそりと抜け出し、インターネット上で出会った少年に会いに向かったアリシア。家を出てすぐに後悔し始めます。「やっぱり危ないから家に帰ろう」そう考え直し、家に向かって歩き始めたとき、誰かに名前を呼ばれました。

気がついたときには、知らない男の車の中に乗せられていました。運転席の男は、彼女の思い描いていた少年とはかけ離れた容姿の中年の男でした。アリシアはなす術もなく、そのまま自宅のあったぺンシルバニア州からバージニア州まで連れて行かれてしまいます。

Wikipedia

そこでアリシアが受けた仕打ちは、ここで書くのもためらわれるほどのものでした。地下牢に連れて行かれ、首輪で床に繋がれます。そして服を脱がされ、性的な暴行を加えられたのです。その監禁は丸4日間も続き、男はその様子を撮影してライブ配信までしていたのです。

しかし幸いなことに、このライブ配信が彼女の命を救うことになります。ある1人のライブ配信の視聴者が、匿名でFBIへ通報したことで、アリシアは救助され、その男、スコット・タイリー(38)は直ちに逮捕されたのです。

BBC

しかし救助されたからと言って、心の傷が消えるわけではありません。アリシアはその後長い間、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や記憶喪失に苦しめられるようになります。さらに当時は、まだインターネット犯罪に対する理解が進んでおらず、「そんな事件どうして起こったの?自業自得なんじゃないの?」などと言った周囲の無理解にも苦しめられたと言います。

しかし事件の翌年の2003年、アリシアは決意を固めます。「アリシア・プロジェクト」を発足させて、ネットで子供を狙う犯罪に立ち向かうことにしたのです。

アリシアは学業を続けると同時に、インターネットの危険性について多くの学校をレクチャーして回りました。自分と同じような経験をする子供を少しでも減らしたいと思ったからです。自らの過去をさらけ出して活動するのは勇気の要る行為でしたが、アリシアは決して逃げませんでした。

さらに2007年には、アリシアの尽力により、米議会で「アリシア法」が可決されます。これにより、性的な被害を受けた子供達の救済に補助金が支給されるようになったのです。

しかし事件が経ってから17年後の2019年…アリシアはニュースを通して、ある驚くべき事実を知ります。犯人のスコット・タイリーに保護観察が許可され、なんとアリシアの実家から6kmの場所に仮釈放されたと言うのです。アリシア自身は、犯人が釈放されたなんてことはまったく聞かされていませんでした。

アリシアは現在、性的な事件を起こした加害者は、被害者の住む場所から遠くへ移すべきであると裁判官へ訴え続けています。性的な被害を受けた人が少しでも救われるように…。

事件から18年が経ち、2020年、31歳になったアリシアは、今ようやく人を信頼する心を取り戻し、愛する人が隣にいます。しかしそれでもなお、アリシアの戦いは続いているのです。

いかがでしたか?アメリカでは女子の4人に1人、男子の6人に1人が18歳までに何らかの性犯罪の被害を受けると言われています。このような過酷な経験は、忘れ去ってなかったことにするのが本人にとって一番楽な方法のはず。しかし自分の過去と向き合い、ふたたびこのような悲劇が起こらないように戦い続けるアリシアの勇気には心動かされずにはいられません。