トリビア
【実はもっと怖い「赤ずきん」】原型となったフランス民話に背筋が凍った
注意: この記事にはショッキングな記述が含まれます
むかしむかし、あるところに可愛らしい女の子がいました。
女の子はおばあさんが作ってくれた赤いずきんをいつも被っていたので、誰しもその女の子のことを「赤ずきん」と呼んでいました…
誰もが子供の頃に読んだことがあるであろう、お馴染みのグリム童話「赤ずきん」。
お馴染みの「赤ずきん」ペロー版とグリム版の違いは?
お母さんの言いつけを守らず、悪いオオカミにそそのかされて道草をした結果、食べられてしまったおばあさんと赤ずきんちゃんが異変に気づいた猟師に無事助けられ、めでたしめでたし、で終わる物語です。
一方、グリム童話の元となったシャルル・ペロー版では、猟師は登場しません。おばあさんと赤ずきんはオオカミに食べられたまま助からず、「親の言いつけを守らなかった子供の末路」という教訓的な意味合いの強いエンディングとなっています。
「赤ずきん」には原型となった元ネタがある?
しかし実際のところ、この「赤ずきん」には元ネタとされる民間伝承があるのです。それも、現代お馴染みの赤ずきんのストーリーとはかなりかけ離れた残酷で恐ろしく、子供向けの物語とは思えないような内容です。
1697年、シャルル・ペローは当時のフランスで民間に伝わる伝承物語を元に、「赤ずきん」を含む童話集を出版しました。
ブルジョワ階級の詩人として、宮廷など上流階級のサロンに出入りしていたペローの作風は貴婦人受け重視。そのため原型となった民間伝承の残酷で下品かつ性的な意味合いを連想させるシーンは大幅にカットされ、変更が加えられました。
「赤ずきん」の元ネタとなった伝承民話
では、「赤ずきん」の原型となったオリジナルの伝承民話は一体どのような話だったのでしょうか?
※注意: 以下の伝承民話には残酷な表現が含まれます。ご注意ください。
元ネタとなった民話では赤ずきんは赤いずきん(帽子)を被ってはおらず、名も無いごく普通の女の子。現在で言うならば「少女A」といったところでしょうか。
オリジナルの民話でもグリム童話やペロー版と同様に、森の中に暮らすおばあさんにパンとミルクを届けに行きます。
途中、オオカミに出会い、どこに行くのか、「縫い針の道」と「留め針の道」、どちらを進んでいくのか尋ねられた女の子は不審に思うこともなく正直に答えます。
オオカミは先回りしておばあさんを殺すと、おばあさんの肉を戸棚に、血はボトルに詰めて棚の上にしまい、おばあさんの服を着てベッドに横になって女の子が到着するのを待ちます。
何も知らない女の子は、おばあさんに化けたオオカミが勧めるままに戸棚の干し肉(おばあさんの肉)と棚の上のワイン(おばあさんの血)を口にします。
それを見たおばあさんの飼い猫が「女の子が食べているのは彼女のおばあさんの肉と血だよ」と歌いますが、女の子は気がつきません。
おばあさんに化けたオオカミは女の子に、服を脱いで暖炉に入れて燃やし、裸になって自分のベッドに入るよう勧めます。
言われるがままに裸でベッドに入った女の子は、おばあさんの様子がいつもと違うことに気がつきます…モジャモジャの毛深い体に血走った目、大きな口、鋭い歯。
ここでようやく自分と一緒にベッドにいるのがおばあさんではなく、絶体絶命の危機的状況にあることを悟った女の子は、「外にトイレに行きたい、おしっこが漏れそう」と嘘をつき、なんとかピンチから逃げようとします。
オオカミは女の子の足首に毛糸を結び、外に用を足しに行く女の子が逃げないようにします。女の子は毛糸をほどき木に結んで、裸のまま家に逃げ帰ります。
待てどもなかなかトイレから戻ってこない女の子にオオカミのイライラは募ります。
「まだ終わらないのかい?!」と呼び掛けますが、当然返事はありません。
外へ飛び出し、女の子が逃げたことに気がついたオオカミ。怒り狂って、女の子の後を追いますが、幸いにも女の子はオオカミに捕まる前に自宅へ無事逃げ帰ることができました。
〜おしまい〜
現代お馴染みの「赤ずきん」とはかなりかけ離れたショッキングな内容にドン引きしてしまう元ネタ民話。到底、子供に読み聞かせできるようなストーリーではありません。
何も知らない女の子に、おばあさんの肉や血を食べさせるシーンや、裸になってベッドに入るよう誘い込むシーンなど、猟奇犯罪や小児性愛者による性犯罪を連想させて大人でもゾッとするような物語です。
ペローがこの内容をパトロン候補の貴婦人たちの前で披露するわけにはいかず、大きく変更したのも納得です。
伝承民話が語り継がれていた当時の時代背景
当時は長期に渡り泥沼化した三十年戦争(1618〜1648)や飢饉・疫病などの影響でヨーロッパ全体が疲弊しており、社会秩序が混沌としていた時代。村や町などのコミュニティから離れた森には、放浪者が暮らしていたり、不審者や盗賊が出ることも多々ありました。
そんな時代背景もあり、無用心で親の言いつけを守らない子供にはどんな危険が待ち受けているのかを伝える教訓的な意味合いのある民話だったのかもしれません。
ペロー版はグリム兄弟によってさらに改変され、現代の子供向けの「赤ずきん」のストーリーがすっかり定着していますが、元ネタを知ると、このお馴染みの童話に対して見る目が少し変わってきますね。
出典: listverse.com
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