えらい
盗まれたバッグを探していた女性がバッグを持った男性を発見。この出会いが彼の人生を変えた。
エリック・マッコイの人生は、わずか36年にして行き止まりに行き着いたようでした。アメリカ・バルチモアに暮らすエリックは、若い頃から日常的にドラッグを使用し、薬物中毒となってすべてを失い、様々なドラッグディーラーの元で働きながら路上で生活を続けていました。
しかし、この日エリックが下した正しい判断が、彼の人生を大きく変えることになります。
路上生活を続けるエリックが、この日も注射針を腕につきたてようとしていたそのとき、暗い路上にある見慣れないものを見つけました。高価で上等なハンドバッグでした。
「自分の人生なんてどうでも良かった」エリックは言います。「精神的に完全にどん底だった。自分の命なんて無価値だと思っていた。でもそのときこのバッグを見つけた。神様が俺に授けてくれたのかと思ったほどだ。売ることもできた。でもこの時こう思った。『エリック、正しいことをしろ。このバッグの持ち主を探して返すんだ』って」
バッグの中に現金はありませんでしたが、ケイトリン・スミスという女性の住所と身分証明書を見つけました。ケイトリンは街の反対側に住んでいることがわかりましたが、エリックは会いに行くことにしました。
しかし、まず街の向こう側まで行く電車やバスに乗る現金が必要でした。現金を集めバスを乗り継いでケイトリンの元に向かう途中、ハンドバッグを売らないかという申し出を何度か受けたそうですが、エリックは固く断りました。この時は、エリックはどうしてもこのハンドバッグを持ち主の元に返したかったのです。
ケイトリンの家まであと少しというところで、エリックはある女性がじっとこちらをみているのに気がつきます。
「ヨレヨレのTシャツに漁師のキャップをかぶって下を向いてフラフラ歩いている男性が、私のバッグをしっかり脇に抱えていたの。数日前に盗まれたあのバッグだった」ケイトリンは振り返ります。「すぐにその男性の元に駆け寄って、いくらか聞いたわ。でも彼は、ケイトリンというこの辺りに住んでいるバッグの持ち主の女性に手渡したいと言うの。それで私がケイトリンだと言った。彼の目から涙が溢れて道路に崩れ落ち、真っ暗な路上でこのバッグを見つけたんだと言ったわ」
ケイトリンはエリックに何かお礼をと、夕食に招待しました。そしてエリックがヘロイン中毒であること、人生をやり直したいと思っていることを知り、手を貸すことにしました。寄付サイトでエリックの薬物中毒のリハビリを進めるための資金を募ることにしたのです。そして今、ようやくエリックは専門家の元で薬物を断ち切るための治療を進めています。
エリックとケイトリンのエピソードはこちらの動画からもご覧いただけます。(英語音声のみ)
エリックにとって、ケイトリンは「神が授けてくださった救いの手」だそうです。エリックは、ハンドバッグを売ればしばらくは食べられるだけの現金が得られたはずです。それでもこの時、正しい行為を貫いたのは、人生をやり直したいと言う強い思いがあったからでしょう。試練に負けずに新しい人生を満喫してほしいです!
